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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
10 ルークリース家の姉妹編!
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152 書庫を捜索

<ここならば......そう人目にもつかないでしょうね>


私とオマケ様は気絶したカラシアをかつぎ、無駄に長い廊下を進んでいた。

そして曲がり角にぽつんと配置された小さな扉......取り付けられたプレートによると、書庫らしいが......とにかく、この部屋を見つけたのだ。


カラシアを気絶させてしまったのは計算外だったけど、これはこれで好都合だ。

私たちの目的は、カラシアを死なせないことだからね。

この書庫の中でしばらく眠っていてもらうことにしよう。


それにしても、ちょっと殺気がもれちゃったくらいで気絶されるとはなぁ......。


<コミュニケーションって、難しいですね>




きぃ......。




大きな音がならないようにゆっくりと慎重に扉を開ける。

部屋の中は確かに、何の変哲もないただの書庫だった。

いくつかある棚にはぎっしりと何かの帳簿が並べられており、床には木箱が置かれている。


とりあえずカラシアをその辺の床に横たえ、帳簿をパラパラとめくってみる。

その中身は専門的な言葉や細かな数字が並んでいるが......どうやら“マカリンキス鉱石”の産出量を記録したものであるらしい。

ちなみに、今更の話ではあるけど、私は文字の読み書きは可能だ。

小さいころから、オマケ様に教わっていたからね。


<あぁ、マカリンキス鉱石!>


ん?

知っているの?オマケ様?


<外の倉庫で、ほんのり赤い鉱石の欠片を見つけたでしょう?あれはきっと、マカリンキス鉱石なんですよ!帳簿の中身から察するに、この家はどうやらマカリンキス鉱石が算出する鉱山を、管理していたようですね>


なるほどねぇ。

とりあえず手に取った帳簿を本棚に戻す。

そして改めてその背表紙を見て、気づく。

この帳簿、一年ごとにまとめられているらしく、その背表紙には年代らしき情報が書かれているのだ!

一番新しく見える帳簿を観察すると、そこには『チルトニア歴4720年』という記述があった。


えーっと、チルトニア歴......?


<広く世界的に使われている暦のことです。ちなみに、確か現在はチルトニア歴で言うなら、5020年とか、それくらいだったはずですね>


は?


<つまり、このお屋敷のループですが......300年前から繰り返されている可能性があるということです。このお屋敷の建築様式であるサンコリック様式もちょうどそのころ流行したものですし、おそらく間違いないのでは>


あの、クソみたいな惨劇を、300年間も繰り返している......?

思わず鳥肌が立つ。


<きっと、300年前には、この辺りにも人の町があったのでしょう。国があったのかもしれません。ループに取り込まれたが故に、周囲に人の営みが消え去った今もなお、このお屋敷だけが残った......いや、もしかすると、このループこそが......>


......オマケ様が、何やら考察モードに入った、その時だった。




「ん......んん......?」


「!!!」




後ろの方から、もぞもぞという音とともに、微かな声が聞こえてきた。

カラシアが、目を覚ましたのだ。


「......え......?きゃ......!!」


振り返ると、ゆっくりと上体を起こしたカラシアと目が合った。

彼女は私の姿を見るなり顔を青くして、小さく悲鳴をあげ、そして......。


「バケモノ!バケモノ、バケモノ!来ないで!来ないでぇーーーッ!!!」


そんなことを叫びながら、騒ぎ始めた!


「違う、バケモノ、違う」


「来るな!来るな!この、薄汚い、バケモノめ!誰か、誰か助けてぇーーーッ!!!」


なだめようとして近づくも、逆効果だ。

カラシアは手近にある帳簿などを手当たり次第に掴んでは、次々に私に投げつける。


ゴッ。


そのうちの一冊が私の額にあたり、そんな鈍い音が響く。

この帳簿、たかが紙の束と侮れないほどには重い。

その表紙は革製で、かなり固い。

つまり、当たると痛い。

常人であれば、当たった部分が青くなったり、少し血が出たりしただろう。


......ちょっとだけ、イラっとした。

思わずまた、ちょろっと、殺気をもらしてしまった。


「ひゃっ」


するとカラシアは変な声を出して白目をむき、また泡を吹いて倒れた。




........................。




もぉーーーっ!

なんなのこの人!?

ちょっとイラっとしたぐらいで気絶するとか、体弱すぎじゃない!?

会話すらできないんだけど!?


<コミュニケーションって、難しいですね>


とりあえず、慌てて聞き耳を立ててみるも、特に誰かがこの部屋に近づいてくる様子はない。

今の騒ぎは誰にも届かなかったようだ。


<このお屋敷、大きさの割に使用人が妙に少ないようにも感じますね。一体どういうことなんでしょうか?>


知らないよ、そんなこと......。

あーあ、こんなに散らかしちゃって......。


私の足元には、カラシアが投げつけてきた帳簿が何冊も転がっている。

とりあえずそれらの内の一冊を掴み、元の本棚に戻そうとして視線を動かした、その時だった。


<あれ?>


オマケ様が、何かに気づいた。


<エミー、カラシアが帳簿を投げ散らかした後の、本棚......後ろに何か、隠してますよ!?>


あ、本当だ。

もともとぎっちりと帳簿が詰められていたから気づかなかったけど、この本棚......壁との間に隙間が空いていて、そこに何かが挟まれている。

よくよく見ると、その何かは本棚からはみ出して端っこが見えていたりするし、隠しているというよりは、隙間があったから適当にそこに突っ込んだ、そういう印象の方が強い。


さて、その“何か”。


引っ張り出してみると、私の身長よりも大きな一枚の油絵だった。

そこに描かれているのは、美しい薄紫色の髪をした女性の胸像画である。

女性ではあるんだけど、まるで男性物のような角ばったジャケットを着て、不敵に微笑んでいる。

自信満々で偉そう。

そんな印象を受ける人物画だ。


なんだこれ?


<それほどほこりをかぶっているわけでもありませんし、色あせてもいません。古い物ではなさそうですね>


しかも結構大きくて、立派だよね。

額縁も装飾が派手派手だし。

なんで書庫の本棚の後ろに、こんな絵が突っ込んであるんだろう?

この書庫の中、本棚に並べられた帳簿とか、床に置かれた木箱とか、割と整理整頓されてるんだよね。

それなのに、この絵だけは、なんか適当に突っ込まれた感じで放置されてるの、違和感あるんだよなぁ。




............。




......うーん、わからん!

考えてもわかんない!


腕を組み、眉間に皺寄せ瞳を閉じて、うんうんとうなってみるけど、疑問に対する答えはちっとも浮かんでこない。


<私たちが手に入れている情報が少なすぎますからね。お屋敷の人間に聞き取りとかできたら、話は早いのですが......>


話そうとしても、気絶しちゃうんだもんなぁ。

まさかここにきて、自分のコミュニケーション能力の低さが足を引っ張ってくるとは思いもしなかったよ!


<ま、とりあえずこのお屋敷の謎については、ひとまず置いておきましょう。大切なのは、後ろでのびているカラシアを死なせないことです。私たちの目的は、このお屋敷から、ループから逃げ出すことなのですから>


それもそうだね!

難しい考え事は、とりあえず後回しだ!

今、私がやるべきことは、カラシアの護衛だ。

彼女が死ななければループを脱出できるのであれば、彼女に命の危険がないよう身辺警護をすれば良い。

わかりやすくて良いね!

今のところ彼女に対しては、精神的には私が一番ダメージを与えている気がしなくもないけどね!


脳内でオマケ様との打ち合わせを終わらせ、方針は定まった。

後はそのように、行動するだけである。


私はつぶっていた瞳を開いた。




......すると、そんな私の視界に飛び込んできたのは、何とも、『奇妙』としか言いようのない外観をしたお屋敷だった。

まず、屋根は真っ赤。真っ赤っか。あと、窓枠とか、要所要所も赤く塗られている。

そして壁は真っ黄色に塗りたくられ、ところどころに赤い水玉模様が描かれている。

周りには真っ白な雪が降り積もっているだけに、その外観は異様に目立つ。




「............あれ......」




思わず声がもれた。

あたりをきょろきょろと見回す。

ここは、書庫の中ではない。

お屋敷の外だ。

そこら辺に気絶して転がっていたはずのカラシアの体は、どこにも見当たらない。


............これは......。


<............また、ループしちゃいましたね......>




カラシアが死ななければ、ループは発生しない。

その仮説はどうやら、間違っていたらしい。

コミュニケーションは確かに難しいけど、<コミュニケーションって、難しいですね>の一言で、片づけてしまって良い問題でもないと思うんですけどね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 虚弱体質のやつが投げたものがどんだけ硬かろうがこの主人公に痛み与えられるわけ無いだろ
[一言] 時間制限ありか?
[良い点] やはり拘束して猿轡からの黙って聞かれた事だけ答えろが最高のコミュニケーションやな
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