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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
7 弱肉強食!魔境サバイバル編!
115/716

115 終了!魔境サバイバル!

エミーの全身全霊を込めた拳は。

彼女の怒りは。

溢れ出る殺意は。



黒龍の角膜すら、傷つけることはできなかった。


生き物としての、圧倒的格差。

それが如実に表れた。

神話の時代より生きる伝説にうちつけるには、たかだか7年ちょっと生きただけの人間の拳は、あまりに小さすぎたのだ。





しかし。







<<<おおお......>>>


しかし、黒龍は震えていた。


<<<おおおおおおおおおおおお......!!>>>


そして、涙を流していた。









先程の一撃。

小さな小さな人間が放った、精いっぱいの一撃。

彼の瞳すら害することのできない、彼にとっては取るに足らないはずの、一撃。




しかしながら、その一撃は。

その拳は。

その、人間は!


一瞬とは言えど、確かに。

確かに、確かに!!


彼を驚愕させた。


そして、確かに!


彼を、恐怖させたのだ!!



それこそ、彼が狂おしいほど待ち続ける者の、片鱗!

そう確信できるだけの何かが、先ほどの拳には込められていた。



<<<おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!>>>


黒龍は感動していた。

故の涙である。



まっすぐに落ちていく人間の体を、右手でふわりと、優しく受け止める。

人間の様子を観察すると、指一本動かせない、そのような状態だった。

ひゅうひゅうと肩で息をしている。


しかしその瞳には、未だ怒りの炎が燃えている。

殺気が溢れている。

生きる意志に、満ち溢れている!



<<<素晴らしい>>>


黒龍は思わずそう一言、呟いた。


<<<素晴らしい、戦いだった。人間、貴様、名前は何という?>>>


「............」


黒龍の問いかけに、人間は無言。

ただ、黒龍のことを睨みつけ続ける。

黒龍は、思わず苦笑した。


<<<オレの名は、ガザンギスト・オル・デオルトル。オルとでも呼べ。......人間、貴様の名前を、教えてはくれないだろうか?>>>


「......エミー」


か細い声で、人間はそう答えた。


<<<そうか、エミーか。それがオレの、運命のヒトの名前か>>>


黒龍は感慨深げにそう呟くが、エミーにとってはわけがわからない。


何言ってんだこの黒トカゲは?

こいつ、やっぱり頭おかしいんだな?

とか、そんなことを考えていた。


<<<しかし、うぅむ。よく見ると、貴様、まだ子どもではないか?むむ、時期尚早、うん、時期尚早であったのだな。はしゃぎすぎたようだ。すまなかったな、エミー>>>


黒龍はそんな感じで、『ちょっとやんちゃしちゃった!ごめーん!』的な謝罪をエミーに対して行った。

エミーはむかついたが、それに対するアクションを起こせるほど体力、魔力共に残ってはいなかった。

故に、ただただ黙ってその謝罪を受け入れた。


<<<謝罪と、その小さな体でオレを楽しませてくれた、褒美だ。受け取ってくれ>>>


そういうと黒龍は、おもむろに己の左腕の指を一噛みした。

真っ黒な血が溢れ、滴り落ちる。


黒龍をその血を、エミーの口に注ぎ込んだ。


「......ッ!?」


その途端、エミーの全身に激痛が走る!!


「ガッ!?ア、アアア、ガアアアアアアアアアアッ!!?」


その痛みのあまり、エミーは黒龍の手のひらの上で叫び、のたうち回る!



黒龍の血。

そこに含まれるは、人智を越えた膨大な魔力。

例え一滴と言えど、常人が取り込めば、そのあまりの魔力量を受け止めきれず、肉体が、魂が破裂し死に至るであろう劇毒。


しかしながら黒龍は、このエミーという小さな人間が、その程度で死ぬ魂の持ち主ではないと、確信していた。

暴れくるう龍の血すらも従えて己の力とし、さらに強靭、強大になって再び立ち上がる。

そう確信していた。


「アアアアアアアアアアッ!!ア、ア、アアアアアアアッ!!」


<<<エミーよ、強くなれ>>>


己の手のひらの上でもがき苦しむ少女に向かい、黒龍は慈愛に満ち溢れた優しい笑顔で語りかける。


「アアアアアアアアアッ!!アアアアアッ!!ア、アアッ!!」


<<<世界を巡れ。そして世界を食らえ。そして最後には、オレを食らえ。見事、オレを殺しきってみせよ。貴様はもう、オレのものだ。次は貴様が、オレを、貴様のものとせよ>>>


「アアアッ!!アア......!ア......アアアアア......」


<<<オレは待った。永きに渡り待ち続けた。故に......まだ、後、数千年程度であれば、待ち続けよう。貴様がこのオレを、殺せるほどに強くなる、その時を>>>


「ア......!ア......ア、ア......」


<<<エミーよ、強くなれ>>>


「............」


エミーはもはや、身じろぎ一つしない。

白目をむいて、気絶している。


しかし、死んではいない。


その様子を見て黒龍は満足そうに一つ頷くと、近くを流れる川、ジャコーベ川へ向けて、エミーをぽいっと投げた。

数十メートルの高さから落とされたエミーの体は、轟音をたて流れる茶色い濁流にのみ込まれ、すぐに見えなくなる。


この川の先には、人の世界が広がっている。

ひとまずは、そこに戻り、体を休めると良い。


黒龍は、穏やかに微笑んだ。

そして川の流れゆくその先を、じっと、いつまでも眺め続けた。

第7章はこれでおしまいです。


「なんか、最近主人公が強くなったから、苦戦しないなぁ」→「よっしゃ、世界最強格の神話生物と戦わせちゃろ!」

......という、作者の戦闘力バランス調整の下手さというか、頭の悪さが露呈した章でした。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

ブックマーク、評価のお星さま、感想、レビュー......どれも大変嬉しく、ありがたく思っています。


第8章が全部書きあがったら次話を投稿しますので、それまでは少しお休みです。

次回更新は、1月16日(土)を予定しています。

今後とも、『オマケの転生者』をよろしくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
ああ、こういう話こそ私たちがやろうとしていることなんです!彼女はまた人間の忌まわしい社会化に遭遇すると思いますが、短くお願いします
[良い点] エミーをぽいっと捨てたww 最強生物だから下々の致死限界など分からんのだ…
[一言] 駄龍の熱烈な死のプロポーズ(´Д` )その上、雑にポイする別離…まあ神々すら殺す駄龍としては甘々な対応なのかな?問題は闘争を至上とする駄龍と平穏な生活を夢見るエミーさんは何千年経っても交差し…
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