負のスパイラル vol.3
帰り着いたときには、姉が俺にお使いを強要して三十分以上経っていた。
一瞬、姉が俺を咎めようとするが、俺の顔色がよほど優れないせいか、何も言わずに俺の手からスーパーの袋を奪い取った。
無気力な俺はその後、茫然自失で自室に籠っていると、珍しく今日は姉が料理を振る舞った。
ものぐさな姉にしてはけっこう本格的にクリームシチューで、ブロッコリーやニンジン、コーンなど色とりどりの飾りつけ。
俺が買ってきたエリンギもしっかり入っている。白ワインや生クリームなども隠し味として含まれているらしい。
皿を並べる時に姉が淡々と解説してきて、五月蠅いとも思ったが、あっちが勝手に喋っているだけで、こっちは喋らずに済んでいたから、気が楽だった。
一口サイズにスライスされたフランスパンも用意されていて、俺がだんまりを決め込んでいると、姉に無理やり口にクリームシチュー付きのフランスパンを突っ込まれる。
こんな時に味なんて解らないと思っていたが、舌と胃袋は正直で、そのまま一気に二人分は平らげてしまった。
そんな俺を見て満足げな姉に苛立ちながら、皿を片付ける。しょうがない、食べ終えた皿ぐらいは洗ってやるか。
――不承不承ながら今日だけは、姉に感謝してやる。




