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7. その頃勇者パーティーは②(ブレイドside)

 現在俺たちは高難易度ダンジョンで魔物に囲まれ少々ピンチに陥っていた。

 リアムと言う足手まといを追い出して初めてのダンジョン探索である。これまで以上にスムーズに進めるはずだったのに、上手くいかない現状に俺は苛立っていた。


「回復はまだかエリザベス! これ以上は危険だぞ!」

「少し待ってブレイド。魔力が底をついて回復魔法が使えないの……」


 高難易度ダンジョンの魔物ともなれば、勇者である俺でも傷を負う。回復が遅く苛立つ俺は怒鳴るが、エリザベスは杖で体を支え肩で息をしながら述べる。

 見るからに辛そうだ。こんな序盤で回復魔法など使わずポーションを使えばいいじゃないか、なぜ使わないのだ。


「なぜポーションを使わんエリザベス! まさか補充を忘れたのか!」

「いえ、私の使用人がいつもの倍は用意しているわ。ですが、もう使い切ってしまったのよ」

「何だと! こんな序盤の浅い階層でか……!」


 いつもであればこんな所でポーションを使い切るなどないはず……なぜだ! これでは回復できないではないか! それならば……!


「ピーチ! 広範囲攻撃魔法で一気に倒すのだ!」

「ごめぇんブレイド! 私も魔力がなくなっちゃったあ!」


 ピーチが形の良い眉を下げた困り顔で謝罪する。

 現在知られる全ての攻撃魔法が使える大魔道ピーチも、魔力が切れればただの可愛いバカ女だ。


「な、なんだと……! くそっ! だったら!」


 俺は精神統一のスキルを発動させ集中し、さらにもう一つ戦闘用スキル能力向上を重ね掛けする。

 スキル重ね掛けは体力の消耗が激しいから使いたくなかったが、ここで全滅するよりはマシだ。


「二人とも床に伏せろ! 広円斬!」

「早く伏せなさいピーチ! 死ぬわよ!」

「キャアアッ! 危ないわよぉ!」


 スキルで基礎能力を向上させた俺は、自分を中心とした広範囲に斬撃を飛ばす広円斬を発動する。全方向に攻撃できるが直線の範囲だから地面に伏せれば二人には当たらないはずだ。

 エリザベスがピーチの頭を押さえつけて地面に伏せさせる。そのすぐ上を俺の斬撃が飛び辺りの魔物を全て斬り伏せた。


「ふうっ、少し危なかったが何とか切り抜けられたな。んっ? 二人ともどうした?」


 せっかくピンチを切り抜けたのに女たちは浮かない表情をしている。

 たくっ、ノリが悪い奴らだぜ。俺の活躍を褒め称えろよな。


「いえ、何でもないわ……それよりこれ以上の探索は無理だわ。撤退しましょう」

「むぅ……そうだな。ポーションも魔力も切れた状態で探索は無理だな」


 俺はエリザベスの提案に渋々了承する。


「でもぉ、何でこんなに早くアイテムがなくなったの? そのせいで魔力も使い切っちゃったし最悪ぅ」


 ピーチが甘ったるい声で不満を口にする。

 だが、言っている事はもっともだ。今までこんな事はなかったのになぜだ?


「今まではリアムの錬成したポーションを使っていた……まさかそれが原因? ブレイド、もしかしたらリアムのポーションが特別だった可能性があるわ」

「何っ! あの役立たずのポーションが!」


 エリザベスの発言に俺は大声を上げて驚いてしまう。


「ええ、この高難易度ダンジョンはリアムが加入してから攻略を開始したダンジョンよ。それに、今日用意していたのは普通のポーションではなくハイポーションだったの。それでも追いつかない異常な回復量。それだけでなく、私の魔力の減り具合を見るに、リアムのポーションには魔力まで回復する作用があったのかもしれないわ」

「あたしも今日は魔力の減りが早い気がする」

「魔力を回復だと! それではエクストラポーションではないか!」


 魔力まで一緒に回復するなど、最高級の回復薬エクストラポーションの性能である。にわかには信じがたいが、エリザベスだけでなくピーチまでも違和感を覚えていたようだ。


「信じられない事だけど、それが錬金術師と言う職業の特性なのかもしれないわ」


 エリザベスは王女として教育を受けているため頭がいい。そのエリザベスが言うのだからその可能性はあるのだろう。

 そう言えばリアムの奴、最近は変な喋りをする見た目の良い女とつるんでるとか聞いたな。その女に秘密があるかもしれん。

 なんなら連れの女を俺の物にしてもいいしな。へへっ、奴の悔しがる顔を想像すると胸が熱くなるぜ。

 リアムのポーションが優れているなど信じられないが、調べて見る必要がありそうだ。

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