5.妹を説得しよう
家に帰ってくると妹のチェルシーが夕食の準備をして待っていた。
この匂いはシチューか?
チェルシーの得意料理で、良く作ってくれるから見なくてもわかる。
「おかえりお兄ちゃん。遅かったね……って、その人は誰? お客さん? すっごい可愛い子だけど……」
やっぱり聞いてくるよな。
さて、嫉妬深いチェルシーにどう説明したものか……。
「我はリアムの師匠になったスカーレット・レイ・グランディアじゃ。今日から一緒に暮らすことになるのでよろしく頼むぞ」
「……はぁ? ちょっとお兄ちゃん! 何よこの女! 一緒に暮らすってどういうことなの!!」
俺がどう話すか考えていると、スカーレットは自分から自己紹介を始めた。
だが、優しく出迎えてくれたチェルシーは、スカーレットの今日から一緒に暮らすと言う言葉を聞いた途端、怒りの表情に変わる。
恐っ! 怒ったチェルシーはマジで恐い。何しろ戦ったら俺より強いのだから。
どうやらチェルシーは戦闘職についているようなんだが、俺には「気恥ずかしいから……」と、教えてくれないんだよな。
言いにくいなら無理に話さなくてもいいさ。俺が錬金術師なんて珍しい職業についてるんだ。チェルシーが珍しい職業についてても不思議じゃない。
どうなだめようか考えていると、スカーレットが割って入ってきた。
「まあそう怒るな。其方の兄、リアムには才能がある。知っていると思うが錬金術師と言う職業は非常に珍しいものでな、その分情報が少なく独学で強くなるのは難しいのじゃ。我は同じ錬金術師として、彼が強くなる手助けをしたいだけなのじゃ。いずれは我を超える錬金術師になる男の手助けができるなんて、幸せな事じゃろう?」
いきなりスカーレットが俺をヨイショしてきた。
どうやらブラコンの妹を見て俺を褒め殺す作戦に出たようだ。
確かに錬金術師と言う職業は珍しく、俺もスカーレットに会うまでは自分以外に見た事がなかった。
でも、いくらうちの妹がブラコンだからって、さすがにそんなので引っかからないだろ……。
「えっ……お兄ちゃんに才能がある……? 貴方も錬金術師で、先生をしてくれるってこと? そうよ、うちのお兄ちゃんは凄いんだから! なんだ、話のわかる子じゃない! そう言う事情なら仕方ないわね。うちに泊まることを許可するわ!」
チェルシーはスカーレットの説明を聞くと上機嫌に許可を出してくれた。
マジか妹よ! どうやら俺は妹のブラコン度合いを見誤っていたようだ。
「リアムよ……其方の妹、少しチョロすぎんか? 我、ちょっと心配になってきたぞ」
「まあ、そこが可愛いところでもあるからな。俺はいいと思うぞ」
あきれ気味に話すスカーレットに妹のフォローを入れておく。
これも俺のためを思っての行動だと思えば可愛いものだ。仲が悪いよりずっといいじゃないか。
「二人とも何をぶつぶつ言ってるのよ。せっかく作ったシチューが冷めちゃうわ。ご飯にしましょう」
「ああ、そうだな。チェルシーのシチューは絶品だぞスカーレット」
「ほう、それは楽しみじゃ」
こうしてチェルシーの許しを得たスカーレットは俺の家に住むことになり、俺たちの修業の日々が始まった。そして、スカーレットの指導のもと、俺は着々とその実力を開花させていったのだ。
勇者パーティーを追放された時は絶望したが、スカーレットに出会えて本当に良かった。
今までの人生、俺を認めてくれたのは妹のチェルシーだけだったからな。俺を認め、成長させてくれたスカーレットには本当に感謝している。
ちなみに、チェルシーのシチューはスカーレットにも大好評だった。
気に入ってくれて良かったぜ。
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