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4.ゴブリンとの戦い

 策があると言うスカーレットについてしばらく歩いていると、一匹のゴブリンに遭遇した。


「おったおったゴブリンじゃ」

「ゴブリンを探していたのか? しかし、群れで行動するゴブリンが単独行動なんて珍しいな」

「我が錬金術で探知したのだから当然じゃな。さあリアムよ、奴を倒して魔力を吸収するのじゃ」


 錬金術はそんなこともできるのか? 使いこなせれば一人で何でもこなせそうだな。

 だが、俺はゴブリンに勝てたことがない。

 さっきだって不意打ちの蹴りをくらわせたのに、ダメージを与えられた気がしないんだぜ。


「そう不安そうな顔をするでない。良い男が台無しだぞ。さっきの戦いは三体一、今はタイマンじゃ。それに、我に策があると言ったであろう」


 スカーレットはそう言うと、地面に落ちていた石を拾い上げ俺に渡してきた。


「この石をポーション錬成の要領で武器に変えるのだ。初期から錬成が使えるということは、我の放出系と違って、其方には物質錬成系の素養がある証だからな」


 なるほど物質錬成か……魔力の放出と違って見た目の派手さはないが、使い方次第では色々と応用が利きそうな能力だな。


 スカーレットから石を受け取り錬成を開始する。

 イメージするのは短めの片手剣、俺の腕力じゃ長く重い剣は扱えないからな。

 すると石は徐々に変形を始め、少し不格好であまり出来の良くなさそうな短めの片手剣が出来上がった。

 ポーション以外の錬成は初めてだし、剣が出来ただけ良しとしよう。


「ふむ、剣を作るのに十秒といったところか、初めてにしては早いな。慣れればもっと早く錬成できるようになるはずじゃ。さあ、その剣があればゴブリン一匹くらい倒せるじゃろう?」

「ああ、やってやるぜ!」


 ゴブリンが単体でいることはほとんどない。

 今までは複数相手だったから勝てなかったが、タイマンだったら俺だって勝てる可能性はゼロじゃないはずだ!


 俺たちが戦いの準備をしていると、それに気づいたゴブリンが「ギイイィィイイッ」と、奇声を上げて襲いかかってきた。

 くそっ! 俺じゃなくスカーレットの方に向かっていきやがった!


「させるかよ!」

「ギギッ!」


 ゴブリンの前に立ち塞がり、スカーレットを守る位置取りを取る。

 俺なんかが守らなくてもスカーレットなら大丈夫だろうが、とっさに体が動いていた。


「……リアム……我の力を知り尚も守ろうとする男は初めてじゃ……」


 ん? 何か言ったかスカーレット?

 って、今はそれどころじゃない!?


「ギイイィィイイ!」


 ゴブリンは奇声を上げながら手に持つ短剣を振りかぶって斬りつけてきた。

 俺は錬成した短剣でなんとか受け止めるが刃が欠ける。

 くそっ! なまくら剣がっ!


 ゴブリンの追撃を避けるために腹に前蹴りを入れるが逆に吹き飛ばされた。

 前にも言ったがゴブリンは決して弱くないのだ。

 身長こそ低いが戦うために研ぎ澄まされた引き締まった肉体を有しており、一般人では決して一対一で勝つことはできない戦闘力を持っている。


「ギッギッギッ!」


 自分で蹴りを入れたにもかかわらず吹き飛ばされる俺を見たゴブリンは、見下したように笑い声を上げながら襲いかかってきた。

 吹き飛ばされて尻もちをついた今の体勢じゃ避けられない!?

 やばいやられる!

 死を目の前にした極限の緊張の中、打開策を探していると近くに落ちている石が目に入った。

 これだっ! 上手くいくかはわからねえがやるしかねえ!

 俺は落ちている石を素早く拾い、ゴブリンに投げつけると同時に錬成を開始する。


「グゲッ!」


 投げつけた石は剣に変化し、俺を斬りつけようと振りかぶっていたゴブリンの額に突き刺さった。

 額に剣を生やしたゴブリンは俺の横を通り過ぎると、地面に倒れ伏して動かなくなった。


 やった……のか……?

 そう思った時、俺の体に力が流れ込んできた。

 スカーレットが言っていた倒した魔物の魔力を吸収するってのはこのことか?


「見事! 錬金術師としての初勝利じゃな、おめでとう」

「ありがとうスカーレット……君のおかげだ」


 片手を高く上げて迎えてくれたスカーレットとハイタッチを交わすと、パーンッと良い音が鳴り響いた。


「さて、日も暮れてきたし、今日の修業はここまでとしよう。家に案内してくれるか?」

「家って俺のか? 町で宿を取ってないのか?」

「何を言っておるのだ? 泊まり込みで毎日面倒を見てやるに決まっておろう。さあ、案内するのだ」


 確かに泊まり込みで毎日見てもらえるのは嬉しいが、スカーレットを連れて帰ったらチェルシーに何を言われるか……。

 チェルシーはお兄ちゃん子で嫉妬深い性格だからな。

 とにかく一度帰って相談するしかないか。

 そう考えた俺はスカーレットを連れて家路についた。

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