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27.暗殺者の妹とロリババアの師匠と聖女に愛されて楽しく暮らしてるからもう遅い!

「手紙に書かれた場所はこの辺りか……? どこだチェルシー! 兄ちゃんが助けにきたぞおおおお!」


 手紙に記された場所は森の奥にある少し開けた所だった。周囲を見渡すが誰も見当たらない……!

 どこだ? どこにいるチェルシー!


「一人で行かないでくださいよリアムさん」

「どうだリアム、妹様はいたか?」

「ルシア、スカーレット。いや、まだ見つからない。どこにいるんだチェルシー……!」


 俺を追ってきた二人が合流して一緒に捜索を始める。

 スカーレットは「妹様の戯れに付き合うのは大変じゃのう……」などと愚痴を零しているが、これは誘拐事件だ。そんな軽い話じゃない。


「きたかリアム、待っていたぞ」


 広場を捜索していると、森の中からチェルシーを連れたブレイドが姿を現した。チェルシーの首筋にはブレイドの剣が添えられている。その後ろにはピーチとエリザベスが付き従っていた。

 くそっ! こいつらそこまで外道だったのか……!


「助けてお兄ちゃん! こいつら私が可愛いからって酷い事する気なのよ!」

「ちょっとチェルシーさん。まだそのセリフの順番じゃないですから……! 台本を間違えないでください……!」

「あらそう。お兄ちゃんがきてくれたのが嬉しくて間違えちゃったわ。それくらいあんた達で合わせなさいよ」

「ええっ、そんなぁ……!」


 ブレイドとチェルシーが何やら小声で話している。あのクソ野郎チェルシーを脅しているのか?


「チェルシーから手を放せブレイド! 俺に恨みがあるなら直接俺を狙えこの卑怯者!」

「こっちの事情も知らずに勝手な事言いやがってクソがっ!」


 こっちの事情だぁ? 知るかそんなもん!


「でもあんた私を攫いにきたのは本当じゃないの。よくそんなセリフ言えるわね」

「うっ、それはそうだが……まあ、ちょっと理想とは違うが、結果同じならいいではないか」


 チェルシーとブレイドが何やら小声で話をしている。


「あの様子じゃとやはり妹様の奸計で間違いないのう」

「そのようですねぇ」


 スカーレットとルシアが呆れた様子で見詰めている。


「何言ってるんだ二人とも! チェルシーは被害者だろう! チェルシーを放せブレイド!」

「おっと動くんじゃねえぞリアム! 大事な妹の顔に傷ができるぜぇ」


 俺はチェルシーを救うべく動こうとするが、それを察知したブレイドはこれ見よがしにチェルシーの首筋に剣を突きつける。

 それを見た俺は足を止めるしかなかった。


「そうだそれでいい。俺も女を痛めつける趣味はない。お前が言う事さえ聞けば聞けば大事な妹は返してやる」

「くっ……要求は何だ!」

「俺たちのパーティーに戻ってこい。俺の下で働かせてやるぜぇ」


 このバカ勇者……そんな事のためにチェルシーを攫ったってえのか?

 その要求に対する俺の答えは決まっている。


「今更戻ってきてくれと言われても、暗殺者の妹とロリババアの師匠と聖女に愛されて楽しく暮らしてるからもう遅い!」


 俺の答えにブレイドは目を見開き驚きの表情を見せる。

 そして、俺の答えを聞いて驚いたのはブレイドだけではなかった。後ろに控えるスカーレットとルシア、捕まっているチェルシー、敵であるピーチとエリザベスまでもが驚愕したかのように口をあんぐりと開け、呆けたように俺を見詰めていた。

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