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23.チェルシーの危機

「勇者パーティー敗北! 勇者パーティーが吸血鬼に敗北したぞー!」

「マジかよ。普段あれだけイキッてるくせに負けたのかよ。ダッセーなおい!」


 王都で吸血鬼の情報を集めている俺たちに勇者パーティー敗北の情報が入ってきた。


「勇者パーティー吸血鬼に敗北って、ブレイドたち負けたのか?」

「そのようじゃの。あ奴らの実力ならば一般的な吸血鬼になら勝てると思っておったが」

「はい、私たち聖国も一般的な吸血鬼を想定して挑みましたが結果はあの通りでした。敵は普通の吸血鬼ではないようです」


 勇者の職業を持つブレイドが負けた。その事実はスカーレットにも予想外だったようだ。

 ルシアたち聖国も吸血鬼の実力を見誤っていたのか。


「まだ近くにいるかもしれない。どこで戦いがあったのか聞いてくるよ」


 俺は情報を集めるため、先ほど勇者パーティー敗北で盛り上がっていた人たちに話を聞く事にした。

 彼らに話を聞くと勇者パーティーが吸血鬼と交戦したのは俺の家の近くだった事がわかった。

 俺の家の近くだと……!


「チェルシーが危ない! 急いで家に戻るぞ!」


 チェルシーはたった一人の大事な妹だ……危険な目にあわせてたまるか!

 吸血鬼が家の近くに出没した事でチェルシーが心配になった俺たちは急いで家に帰る事にした。


 俺たちが家の前まで帰ってくると、家から大きな魔力反応を感じる。

 これが吸血鬼の魔力なのか? だが、大きな反応が二つ、どういう事だ? 警戒しながら玄関扉を開けると、以前見た吸血鬼とチェルシーが睨み合っているところだった。

 嫌な予感が当たっちまったが、ギリギリで間に合った!


「お兄ちゃん……! 怖かったよお兄ちゃああああん! うわああああああん!」


 厳しい表情を浮かべていたチェルシーだったが、俺に気付いた途端目に涙を浮かべて抱きつき、ぐりぐりと俺の胸に頭を押しつけてきた。


「どこ行ってたのお兄ちゃん! 怖かった怖かった怖かったよおおおおお!」

「遅くなってごめんなチェルシー……もう大丈夫だぞ。兄ちゃんに任せとけ」


 チェルシーは強いがまだ子供だ。兄である俺が護ってやらなきゃ!


「フハハハハハッ! なんだ小娘、威勢のいい事を言っていた割に本当は怖かったんだな」

「あ゛あ゛あ゛ん? この私が手前てめえごときにビビると思ってんのか?」


 吸血鬼の言葉にチェルシーは鋭い眼光を飛ばしている。

 あれ? チェルシーさん……?


「……っ! ちっ、違うのお兄ちゃん! あああん怖いよおおおおお!」

「まったく、白々しい妹様じゃのう……。ほれ、大事な妹様が危険な目にあわされて泣いておるぞ。其方の手であ奴を倒すじゃ」


 俺が疑いの眼差しを向けていると、それに気付いたチェルシーは大粒の涙を零しながら強く抱きしめてくる。

 それを見たスカーレットは再び俺の胸で泣きじゃくるチェルシーに呆れたようなジト目を向けながら言う。


「ああ、わかっているさ。言われるまでもない。チェルシーに怖い思いをさせたこいつを俺は許さない!」

「……たぶん其方は妹の気持ちをわかっておらぬぞ」

「リアムさんはシスコンさんなんですねえ」


 スカーレットとルシアはさっきまでチェルシーに向けていたジト目を今度は俺に向けて何か言っているが、声が小さくて聞き取れなかった。

 きっと励ましてくれているんだろう。


「ふんっ! 妹の次は兄が相手か、おもしろい。かかってこい小僧!」


 吸血鬼は俺を次の相手と定めたようだ。

 それでいい。お前は俺の逆鱗に触れた。俺の妹に手を出した事を後悔させてやる!

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