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18.新たな問題

 謁見を終え、俺は自作ポーションの大口のお得意様を得た。今後は定期的に俺のポーションを買い取ってくれるそうだ。これでチェルシーに今までよりも高額な良い薬を買ってやれる。

 一時は陛下に対するスカーレットのいつもと変わらぬ態度にどうなる事かと肝を冷やしたが、丸く収まって良かったぜ。

 おかげで生活に余裕もできたし、俺の名声が上がった結果、勇者パーティーの奴らも俺に簡単に手出しする事はできなくなった。

 奴らとは酷い目に遭わされたからなるべく会いたくはない。

 今の俺があるのはスカーレットのおかげだ。彼女には本当に感謝しているよ。


 あれからしばらくは修行とポーション作成に専念する日々が続いた。

 だが、最近王都で全身が干からびた死体が発見されると言う事件が起こるようになったのだ。

 その噂を聞いたスカーレットは、


「これは錬金術師の評価を上げるチャンスじゃ! 早速調査にむかうぞ!」


 と、張り切って誘ってくるが、


「全身が干からびてるって……それって危険なんじゃない? 大丈夫なの?」


 チェルシーが心配そうに俺たちに意見してきた。

 今まで俺が危険な仕事をしようが何も言わなかったチェルシーが口を出すなんて珍しい事だ。そんなにこの事件が危険と判断したのか?


「お前が俺たちの心配をするなんて珍しいな。スカーレットもいるし、俺も強くなったんだぜ。何か事件に心当たりでもあるのか?」

「……ううん。そんな事ないよ。スカーレットが強いのもお兄ちゃんが強くなったのもなんとなくわかるよ。ただ、ちょっと嫌な予感がして不安になっちゃっただけ。私はいつも通りここで待ってるから、気を付けてね」

「ああ、行ってくる。留守を頼むよ」


 心配してくれるチェルシーを家に残し王都に調査に向かったが、結局何も手がかりを掴む事はできなかった。


「俺はともかく、スカーレットにもわからないとはな」

「神でもあるまいし、我にもわからん事はあるさ」


 いくらスカーレットでも完全無欠というわけではないか、実際に事件のあった現場に行けば何かわかると思ったんだが、考えが甘かったようだ。二人で夕方まで粘ったんだが有力な情報を得る事はできなかった。


「ん? なんじゃあれは?」


 本日の調査を切り上げた帰路の途中、スカーレットが翼の生えた人型の魔物に襲われている馬車の一団を発見した。

 不健康そうな青白い肌をした男性型の魔物にやられたのか、馬車の周りには数人が倒れ血溜まりができていた。魔物は最後に残った女性を攻撃しようと、長く鋭い爪を持つ腕を振り上げ襲いかかろうとしている。


「やめろ!」


 危ない!

 考えるより先に身体が動いた俺は、馬車の一団を助けるため走り出した。


「うおおおおお!」


 俺は走りつつ地面の草を千切り前方に投げる。すると、錬金術で魔力を通した草は鋭さを宿し、人型の魔物に向かって飛んで行く。

 魔物は刃物と化した草を上空に飛んで躱した。


「ちっ! 邪魔が入ったか!」


 翼の生えた人型の魔物は俺たちの介入で形勢不利と見たのか、コウモリのような翼を広げ、凄いスピードで飛んで去って行った。


「あのコウモリのような羽に発達した犬歯、それに不健康そうな青白い肌……今のは吸血鬼か? 珍しいな」

「吸血鬼? 今のが……」


 スカーレットが魔物の飛んで行った先を見詰めながら呟いた。

 吸血鬼、それは人間よりも強力な力を持ち人間を襲い人の血液を主食とする、人類にとって天敵とも言える存在だ。

 人型をしているため魔物か獣人などの種族の一種かで議論が分かれ、今もなお定まっていない。

 恐ろしい存在だが数は少なく、滅多に表舞台に現れる事はない。例え現れたとしても、すぐに多額の懸賞金が懸けられ討伐されると聞くが、王国にもその吸血鬼が現れたってのか?


「連れの人たちは残念だったが、あの子だけでも無事でよかった。だが、この死体は……」


 馬車の周りに散らばる死体は皆干からびて絶命していた。


「干からびているところを見るに、さっきの吸血鬼に血を吸われたんじゃろうな」

「今まで王国に吸血鬼が現れたって話は聞いた事がないが、ついに現れたって事か……」

「そう言うと事じゃな。さっきは我らの強さに気付いて逃げたようじゃが、このまま人を襲い血を吸い続ければ我らに匹敵するほど成長するかもしれん」

「そうだな……」


 そう。吸血鬼の厄介なところは血を吸う事で急速に力をつける事だ。その上、血を吸った相手を眷族化のスキルで命令を何でも聞く手下にする事もできる厄介な相手なんだ。


「これは丁度いい相手が現れたかもしれんな……」

「えっ、何か言ったかスカーレット?」

「いんや、何でもない。気にするな」


 スカーレットが小声で何か呟いたような気がしたが気のせいだったか。

 俺がスカーレットの様子を訝しんでいると、先ほど吸血鬼に襲われていた少女が近づいてきた。


「危ないところを助けていただきありがとうございます。私は聖国の聖女ルシア・ルーテルノと申します」


 聖国の聖女だって……!

 何だってそんな大物がこんな所にいるんだよ……!

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