悲惨な学校生活
そして授業が始まり、みゆきの事をジロジロと変な目で見る者がいた。それは凄く嫌な目でみゆきとキラリちゃんを見ている。そして丸めた紙をみゆき達に投げつけてくる。
「何をするのよ」
みゆきは授業中に丸めた紙を投げてきた奴に言う。
「ほら、坂下、授業中だろうが」
「蔵石先生、あの男の子がみゆきとキラリちゃんに丸めた紙を投げつけて来るんですよ」
すると蔵石先生は注意をするどころか、とにかく今は授業中だから、後にしろと言って、紙を投げてきた男の子は舌を出してみゆき達にいちゃもんをつけてきた。
「無駄よみゆきちゃん」
とキラリちゃんは悔しくないのか、平然としている。
キラリちゃんの話によると、みゆき達が施設通いだからと言って、先生も生徒もキラリちゃん達に冷たいらしい。こんなの間違っていると思った。でもみゆき達施設通いの生徒はいじめられるのが当然みたいになっているようだ。
あの紙を丸めて投げて、みゆきにいちゃもんつけてきた男子に後でキン○マを握り潰してやると思った。
そして授業が終わり十分休みになると、みゆきは紙を丸めて投げつけた男子のところに行って、拳を握りしめ、顔面にパンチを食らわせてやった。その男子は泣いてしまったが、みゆきは許さない。キン○マを握り潰すまでは。
すると周りの生徒達はみゆきを羽交い締めにして、みゆきに暴力を加えてきたが、みゆきは喧嘩には慣れているため、羽交い締めをした手を振り払い。みゆき対クラスの全生徒のバトルが始まってしまった。
何だろう、みゆきはなぜか、みんなの攻撃が手に取るように分かる。でも相手が多すぎて、みゆきは袋だたきに遭ってしまった。クラスの生徒達はみゆきに容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
「やめろー!!」
と蔵石先生の声が聞こえてきた。すると生徒一同みんなみゆきに暴力を加える者達はいなくなった。
「何の騒ぎだ!」
「坂下さんが、根本君に暴力を加えて来たので、僕達がそれを止めたのです」
「坂下、ちょっと来い」
みゆきは蔵石先生の後についていきながら、ちゃんと訳を話そうと思った。あの丸めた紙を授業中に投げてきたのは根本って言う奴なんだ。蔵石先生の後について行くと、蔵石先生に人気のない教室に連れて行かれた。そして蔵石先生はドアに鍵を閉めてしまった。
すると蔵石先生はみゆきの胸を鷲づかみした。
「キャー!」
「叫んでも無駄だ。ここの教室に入ってくる者はいない。それに誰もお前の事を信じてくれる者はいない」
蔵石の目はあの時の安井の目つきと同じだった。このままではみゆきは犯されてしまう。とにかくこの蔵石をなぜか身につけた、みゆきの予言の力で倒すしかない。
みゆきの胸元を掴み、みゆきはその腕を噛みついたところで、蔵石はみゆきにもう片方の手でみゆきを叩くつもりらしいが、そうはいかない。みゆきは水晶玉を使わなくても、相手の動きを読む事が出来るのだ。だからその片方の腕でみゆきを叩こうとしたところ、みゆきはとっさによけて、みゆきは蔵石の二つの目玉に指を入れた。
「うわあああああ!!!目が目が!!!」
これなら時間を稼げるかもしれない。蔵石が悶えている時、外からキラリちゃんの声がした。
「みゆきちゃん。今開けるからね」
キラリちゃんは頑丈なドアを開けようと、体当たりをしているがびくともしない。どうしてキラリちゃんはここが分かったのだろう?
「くそ!!坂下!!どこだ!!」
思い切り目玉を潰すつもりで指を入れた物だから、相当に堪えているはずだ。それよりも鍵を探さないと。みゆきは蔵石のポケットに鍵とスマホが入っていたのでそれを取り上げて、誰も侵入が不可能な教室から出ることが出来た。
「みゆきちゃん。蔵石にひどい目に合わされなかった?」
「合わされたけれども、みゆき、蔵石の目玉に思い切り指を突っ込んでやったよ」
「凄いね、みゆきちゃん。さっきも喧嘩していたけれども、余程喧嘩慣れしているのね」
そう言えばみゆきにも分からないのだが、喧嘩しているとき、相手の攻撃が見えてきたのだ。こんな能力がみゆきに備わっていたなんて初めての事だった。この事を帰ったらメグさんに相談するのも良いかもしれない。
「みゆきちゃん。それ!」
そう言えばさっきどさくさに紛れて、蔵石のスマホを奪ったのだった。スマホの中身を見てみると下着姿の生徒達の写真が入っていた。しかもキラリちゃんの下着姿も入っていた。
「キラリちゃんも蔵石の奴にひどい目に合わされたの!?」
キラリちゃんは悔しく悲しそうな顔をして頷いた。
「じゃあ、キラリちゃん、これを警察に届けて蔵石の奴を潰そうよ」
「そうだね」
「それよりもキラリちゃん。どうして今までこの事をメグさんや施設のみんなに相談しなかったの!?」
「ダメなの」
「何がダメなの?」
そう言ってキラリちゃんの手を取るとキラリちゃんの心の中の声が聞こえてきた。
それはメグさんは忙しい人だから、自分の事は自分で解決しなきゃと思っているらしい。ただのそれだけの事だった。
みゆきがそのキラリちゃんの心を読むと悲しくなってきた。
「どうして、そんなに悲しそうな顔をするの!?」
どうやらみゆきの悪い癖で、悲しい気持ちが顔に出てしまったらしい。
「とにかくキラリちゃん。もう我慢しなくて良いんだよ」
するとキラリちゃんの瞳から涙腺が故障したかのようにドバドバと涙がこぼれ落ちて来た。そんなキラリちゃんを抱きしめると、キラリちゃんの悲しみが小さくなった感じがした。
そんな時だった。
「キラリちゃん危ない」
と言ってキラリちゃんを突き飛ばすと、子供に対して大の大人の蔵石が思いきり拳を頭に殴りつけてきた。幸い足だったから良かった物の蔵石と一瞬接して、スマホの事がばらされるのを恐れている。
「そうは行くか蔵石、あんたはこのスマホで数々の小学生の下着姿を写しまくっていたのね。言って置くけれど、これは列記とした犯罪よ。これを警察に届ければ、蔵石、あなたは終わりよ」
蔵石は目くじらを立てて、凄い形相で私達に襲いかかってくる。
「キラリちゃんは逃げて」
だがキラリちゃんは逃げようともせずに戦おうとしている。みゆきは心の中で思う。キラリちゃんがいても足手まといなんだよ。その事を分かってくれないかな?
「その俺のスマホを俺によこせ」
「よこすわけには行かないよ。あなたがしてきたカルマをみゆき達は許しはしない。それにキラリちゃんや他の生徒達の下着姿を写したそうじゃない」
大の大人がみゆき達に本気でかかってくる。だがみゆきは蔵石の攻撃が見える。だからまた隙を狙って、蔵石に両目に目玉を入れた。すると先ほどと同じように蔵石は悶え苦しみ、両目を押さえて悶えている。
「今よキラリちゃん、逃げるよ。そしてこのスマホを他の先生達に渡しに行くよ」
そう言ってキラリちゃんに職員室に行き、教頭先生に蔵石のスマホを渡した。
「教頭先生これを見てください。これは蔵石先生が取った女子児童の下着姿です」
「これは本当かね」
「はい」
そこで蔵石が教室に入ってきた。
「それは俺の物じゃありません」
蔵石は今後に及んでそんな下手な嘘をつきだす。
「蔵石先生、このスマホは蔵石先生の物ですよ。データーにあなたの名前が載っている」
これで蔵石も終わりだ。でもこの学校にはみゆきとキラリちゃんと武士君の敵はまだまだいるように思える。すると蔵石は暴れ出した。だがここは大人の先生達が集まる、職員室だ、その蔵石を体育会系の先生が取り押さえた。
「蔵石先生、もう観念してください。あなたが女子児童の着替えをのぞき見している生徒の通報が何件もあるのです。だからもう観念してください。あなたの父親が市議会委員だからと言って、あなたの思い通りにはもう行きません」
その体育会系の先生は蔵石の手を捻って、蔵石を牽制する。これでこの蔵石という人はもう終わりだ。それにしても学校初日から、とんでもないことになったよ。この蔵石って言う最低な先生はあの根本って言う、丸めた紙をみゆきとキラリちゃんに投げつけたのにそれを見ようとはしなかった。みゆきとキラリちゃんの担任がこんな野蛮な先生だったんだ。そうでなければ、クラスにいじめなど存在などしないはず。
みゆきとキラリちゃんがクラスに戻ると、みんなみゆきとキラリちゃんの事に対しておびえている様子だった。まあ、おびえられるのはあまり良い気分はしないけれども、今日の事を知って根本をはじめみゆき達にいちゃもんをつけてくる生徒はいなくなったわけだ。担任の蔵石は処分の真っ最中で、お昼まで自習になった。
キラリちゃんは算数ドリルをしている。みゆきはキラリちゃんの勉強をチラ見していたが全く意味が分からなかった。それもそうだ。みゆきの能力は小学三年までの勉強しか知らないからだ。キラリちゃんに勉強を教えて貰うと大歓迎されて勉強を教わることとなった。算数ドリルは分母の違う計算をしている。分母が同じなら、みゆきにも出来るが分母の違う分数の足し算は分からない。
キラリちゃんは優しく丁寧にみゆきに分数の分母の違う足し算を教えてくれた。教えて貰って早速実践で自分でやってみたら、やっと一問正解した。答え合わせをしてみると、正解だった。みゆきは勉強は嫌いじゃない。以前連れて行かれた施設では勉強なんていっさい教えてくれなかった。
以前の施設の安井といい、それとこの学校にも安井のような蔵石が存在していた。みゆきは何か悪い予感がした。あの蔵石、自分が処分され、父親の市議会員の座を降ろされて、みゆき達に逆恨みをしてくるんじゃないかと思った。
気のせいだと思いたいが、みゆきの勘は良く当たるのだ。みゆきに備わっている未来が見える力が備わっているからか、多分それでみゆきは未来の事が分かってしまうのかもしれない。
みゆきは普通の女の子でありふれた両親のいる小学生でありたかった。どうしてみゆきにはこんなにも残酷な運命をたどってしまったのか?自分の運命を呪いたい。
でもみゆきは一人じゃない。キラリちゃんや武士君に施設のみんながいる。だからみゆきは今はとても幸せだ。みゆきは一人じゃない。学校ではみゆき達は施設の子供だからと言って変な目で見てくる物もいるし、施設の人間だからと言って、蔵石のようなみゆきやキラリちゃんに嫌らしい事をする人間もいる。
そう言えば、キラリちゃんは公衆便所で産み落とされたと聞いた。それに比べればみゆきは幸せなのかもしれない。かすかだが、みゆきにはこの水晶玉をくれた母親がいたのだから。今頃母親は何をしているのだろうか。これが夢であって欲しいと何度も願ったが、さめないぞさめないぞ、と同じ母親のいない現実からは逃れられない。
とにかくみゆきは一人じゃないんだ。帰ってメグさんにキラリちゃんが生徒にも先生にもひどいことをされたことをちゃんと言わなければいけないのだから。キラリちゃんはメグさんは忙しいのだから、言わないでって言っているのだが、ここは言うべきだろう。いくらみゆきが能力を使えるからと言って大人の力には勝てないのだから。
もしかしたらまたみゆきを悪用する人間が現れるかもしれない。以前のような施設であった事を思い出すと涙が出そうだ。みゆきのことを恐れて逃げていった瞳ちゃんは元気にしているかな?そんな事を考えながら、さっきキラリちゃんが教えてくれた分母の違う計算式をキラリちゃんが持っていた計算ドリルをやっている。
そしてお昼の時間になり、キラリちゃんは立ち上がり、どこへ行くのか気になりみゆきもついて行った。キラリちゃんが行った先は二年下の三年二組の教室で、そこで武士君は泣いていた。思った通りだ。施設通いのキラリちゃんがいじめられているんだから、武士君もいじめられるのだろう。
「やべえ、キラリの奴が来たぞ」
みんな泣いている武士君の元からいなくなった。
「武士またいじめられたの?」
武士君はワンワンと泣きながら、キラリちゃんに抱きしめられた。
「武士大丈夫だよ。いじめっ子はうちが追い払ってやったから」
武士君は泣きながら、キラリちゃんの胸元をその涙で拭っていた。
みゆきはそれを見てあまり良い気分にはならなかった。みゆきは武士君に何でやり返さないのか訪ねたところ、答えずにただただ泣いてばかりいるだけだった。
「武士にそんな事出来るわけないじゃない」
みゆきを威圧的な目で見つめるキラリちゃん。キラリちゃんが気を悪くしたのならみゆきは謝った。キラリちゃんは言っていた。武士はキラリちゃんがいないと何も出来ないのだからと。
みゆきは言葉には出さないが、そんなんで良いのかと思った。




