サプライズ
メグさんの施設に泊まることとなり、みゆきは貴之とは別々の部屋に寝ることとなった。ちなみに貴之は貴之と孝君の部屋で眠る事となり、みゆきはキラリちゃんと武士君の部屋で眠ることになった。
みゆきがキラリちゃんと武士君の部屋に行くとキラリちゃんと武士君は同じ布団でラブラブな感じで眠っていた。そんな二人を見ていると何か切ない。失恋したからかいつか武士君とキラリちゃんは結婚するんだろうなと思っている。でも実際の事はまだ分からないが、でも仮にそうなったらみゆきは武士君とキラリちゃんの事を素直に祝福する事は出来ないと思っている。
キラリちゃんと武士君が羨ましくなってしまった。それに凄い心の中が嫉妬でいっぱいになった。失恋してしまうと心まで黒く染まってしまうのか?キラリちゃんは言っていたがみゆきにはきっといい人が現れると言っていた。それはもしかしたら気休めなのかもしれないとみゆきは思っている。
みゆきはベットの上に寝転がり、スマホで小説でも書こうと思ったが、そういう気分にはなれなかった。まるでみゆきは何にも出来ない。みゆきがこんな思いをするなら海の底で眠る貝になりたいとさえ思ってしまう。
これが孤独の夜なの、涙で明日が見えないよ。こんな切ない気持ちになるぐらいだったら死んだ方が良いとさえ思ってしまう。でももしみゆきが死んでしまったら悲しむ人はいる。その人達の事を考えるとみゆきは生きていなくてはいけないとさえ思ってしまう。生きなきゃ。どんなに明日が見えなくてもそれでも太陽は昇る。
なぜだろう。みゆきは眠れない。一人でこうしているとみゆきは眠れなくなってしまう。それに涙も止まらない。みゆきは何人かのメグさんの生徒が失恋して本気で死のうとした時の事を思い出していた。みゆきは言ったよね、瞳ちゃんやら千香ちゃんやら何人も失恋して本気で自殺を考える人にきっと良いことがあると言って、死ぬ事を阻止させた事があった。もしここでみゆきが死んでしまったらみゆきが救ってきた失恋で自殺を考える人達に示しがつかなくなってしまう。それはいくら何でもダメだろう。失恋して自殺なんてしてはいけない。そんな事は分かっているけれど、この切ない気持ちはどうすれば良いのだろうか?
本が恋人だって!バカじゃないの!とみゆきは人知れず純君の事を呟いていた。みゆきは人間であり、みゆきなら純君を幸せに出来るのに、それにみゆきはあらゆる人の役に立っていることさえ知らない。メグさんに無償で本気で自殺してしまう人に対して自殺を何度も食い止めた事はあるが、良い事なんてないじゃない。それでみゆきはこんな切ない夜を繰り返すと言うの?バカじゃないの!
だったらみゆきは本気で悪魔になって純君の本を人質に純君をみゆきの色に染めてあげれば良かったんだよ。そうだよ。みゆきはそうすれば純君の心はみゆき色に染まってお互いにハッピーな気持ちになれたのに。しかし長い夜だ。みゆき曰く絶望の夜と言った感じか?
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いつの間に眠ってしまったのか?目が覚め、太陽の光を浴びるとほんの少しだけみゆきの心が失恋からの痛みを和らげてくれた。そうだ。どんな人にも朝は登る。永遠の闇なんてこの世にはないのだ。みゆきは太陽の光が浴びたくて外に出てみた。すると凄く気持ちが良くみゆきの悲しみを春の風が払拭してくれる感じがしてならない。
「みゆきちゃーん」
とメグさんの声が聞こえてきた。
「朝ご飯出来たから来て」
そう言えば最近メグさん良くご飯を作るほどの余裕があるような感じがする。それほど、メグさんが請け負う引きこもりの生徒達は平和に暮らしている証なのかもしれない。最近自殺しようとしている子の所を特定させられて、そこに向かっていたっけ。それがないんだからメグさんも落ち着いて施設の人にこうしてご飯を作る余裕が出来るのだろう。
「はーい」
とみゆきは返事をして、貴之がいなかった。
「あれ、貴之は?」
「さあ、家に帰ったんじゃないかな?」
メグさんは心配していた。
「メグさん。心配には及びませんよ。あいつネットゲームをして心を病んでいる人にメールでエールを送ってやばくなったらそこに出向く事をしているみたいなんですよ」
「へえ、それは私達と同じような事をしているのね」
本当だよ。姉として鼻が高くなるほどの自慢の弟だよ、貴之は。
「キラリちゃん。おはよう」
「お、おはよう」
何かキラリちゃんみゆきに対して余所余所しくないか?まあ、気のせいだろうと思って、朝ご飯を食べることにする。
朝ご飯のメニューはトーストにスクランブルエッグにサラダにコーンスープだった。ご飯はおいしくいただけたけれど、今は何か一人になりたくなかった。それに今日は日曜日だ。学校がない日だ。だったら今日は一人になりたくないので、キラリちゃんと武士君とで遊ぼうかなと考えた。
「ねえ、キラリちゃん、武士君、今日どこか遊びに行かない?」
「えっ!?今日。ゴメン私と武士でちょっと用があるから」
断られてしまってちょっとショックだった。
そんな時、まどかさんとすれ違い。
「まどかさん。今日はモデルのバイトしますが」
「ゴメン、まどかも今日は忙しいんだ。それにメグちゃんには色々とモデルをして貰ったからもう大丈夫かな?あはは」
「そうですか」
まどかさんならみゆきからモデルになると言ったら飛びついてくると思ったのにな?
あれ、今日、みゆきは一人になってしまった。今日は一人になりたくないのに、何か嫌だなあ。使用がない街でも出るかな。みゆきは思いきって、池袋までバスで向かった。池袋の街は賑やかでカップルが結構いる。そんなカップルだらけの街をみゆきが歩くと凄く切なくなりムカついて、ここでホーリープロフェットを発動してみんなを焼き尽くしたい気分だった。
とりあえずクレープでも食べようと思ってクレープ屋に行くとカップルだらけが並んでいた。何かムカつく。みゆきは失恋したばかりだと言うのに、こんな光景を見せられてみゆきは黙っていられなかったので、クレープは諦めて、ドンキホーテと言う所に入っていった。ここにもカップルは存在する。それに何か上の方でゲームセンターなどがあるみたいだ。そこにもカップルは存在していた。でももう気にする事はなくみゆきはクレーンゲームで欲しいものを見つけた。それはリラックマの人形だった。
何回かやってみたが全然とれなかった。
何よ、これ絶対に詐欺だよ。クレーンゲームの機械を蹴り飛ばした。すると店員さんがやってきて、「お客様機械に乱暴な事はしないでください」と注意を受けてしまった。みゆきは不本意だが「すいません」と謝っておいた。
クレーンゲームで千円も使ってしまった。クレーンゲームってまるで賭け事のような感じの物だ。とれなかったらまるでクレーンゲームはお店の貯金箱のような感じだ。
いらだっているみゆきはお腹が空いてきた。丁度お昼を回っていた。ご飯でも食べようかな?と思って丁度牛丼屋があった。たまには外で食べるのもありかもしれないと思ってお金を見てみると並盛り四百五十円でまだまどかさんから貰ったバイト代が残っていて助かった。
みゆきは凄く不機嫌だった。牛丼屋にも二組のカップルが存在している。でもみゆきはまだ十一歳で今年十二歳になるんだよな。まだ恋人とかは早いのかな?池袋のカップルを見ていると十代後半か二十代前後の人がいっぱいだった。
きっと今頃武士君とキラリちゃんはデートでもしているのかな?そう思うとみゆきはまだ降られた痛みが復活したかのように心が痛み出した。
牛丼は並盛りで運ばれてきてみゆきはそれを食した。なかなかおいしい牛丼だった。何だろうおいしい物を食べるとなぜか元気が出てくる。それに前向きな気持ちにもさせてくれる。
牛丼を食べ終えてみゆきは四百五十円を出して外に出た。何か気分は良かったけれど、並盛りでは無く大盛りいや特盛りを頼んだ方が良かったとちょっと後悔した。そう言えば失恋をしてやけ食いをする人もいるみたいだ。でもみゆきは太りたくないのでそれは断固拒否をした。
それよりも池袋の街を歩いていると、金髪で顔面ピアスだらけの男に声をかけられた。
「ねえ、お嬢ちゃん。暇だったら僕とお茶しない?」
見るからに怪しい人物だと思って、腕を掴んでみると、このままみゆきを誘い込んで襲うつもりらしい。何て輩だと思ってみゆきはその金髪で顔面ピアスだらけの男のすねを蹴った。
「痛え!何をするんだよ!」
「なぜそうなったか、自分の胸に聞いて見なよ」
「何だとこのガキ!」
男は襲ってきたのでみゆきは男が何をするか、みゆきのホーリープロフェットで白い炎を手に召喚して男の腕に掴んだ。すると男は「ぎゃああ、熱い熱い」と叫んで、そこに警察がやってきた。
「どうしたんだい。お嬢ちゃん」
お嬢ちゃんってみゆきってそんなに子供に見えるのかい?それよりも男の仲間達の事も警察に喋って男は警察に連行されてしまった。あの男は私みたいな小学生を襲うロリコン集団の一員だって喋ったら、警察は信用してくれて、みゆきを襲おうとした金髪に顔面ピアスだらけの男は「嘘だ。そいつの言っていることは嘘だ!」必死に訴えている。みゆきを連行して犯そうとするからそうなるんだ。
そう言えば嫌な事を思い出してしまった。そう言えばみゆきはああ言う奴らに捕まって、みゆきの能力を利用して競馬で稼いでいた奴がいたっけ。名前は忘れたけれども。そいつはみゆきのホーリープロフェットで焼き尽くしてやったんだっけ。それでみゆきの唯一の友達だった瞳ちゃんに嫌われてみゆきは一人になり、メグさんと流霧さんに助けて貰ったんだっけ。
今は悲しい過去は思い出したくない。思い出すと、みゆきは心が黒くなるような感じがした。
このまま黒く染まったら、みゆき自身の命が犠牲になってしまう。そうだ。ホーリープロフェットの使者はあまり疚しい事、邪悪な事を思い出してはいけないと思っている。これもみんなみゆきを振った純君のせいだ。何でみゆきはこんな気持ちになり一人でいて、しかも嫌な事を思い出してしまうのだろうか?
キラリちゃんは言っていたがみゆきにはいつか素敵な人が現れるって言うけれど、純君のような素敵な男性はいないと思っている。ちょっと変わっているが本の声が聞こえて、しかも色々なボランティアをしているとメモリーブラッドで知ったことだった。
「はあ」
とみゆきは人知れずため息をついてしまった。メグさん言っていたっけ、ため息をつくと幸せが逃げてしまうって、だから幸せが逃げないようにその吐いた息を取り戻すように吸い込むことだと。でもみゆきは今日一人で池袋をうろうろしていて疲れて、そんな気分さえ起きなかった。
さて帰ろうかな?このままみゆきが帰らなかったら誰かみゆきの事を心配してくれるんじゃ無いかとバカな事を考えたりした。みんなに心配させちゃいけないよな。さて、みゆきはそろそろ塾に帰ろうかな?
時計を見ると午後四時半を示している。そろそろ日が落ちる時間だ。今日は頭の中が独りぼっちで、最悪な休日だったけれどもみんなに心配はかけたくないので施設に帰って今日も施設でご馳走になろうと思っている。今日もお母さんはみゆき達を養うために占いの仕事でてんてこ舞いだった。みゆきと貴之の活躍によってお母さんは取り戻せたけれど、お母さんはあまりお母さんらしくしてくれない。て言うか、日曜ぐらいはみゆきに構ってくれても良いのにとみゆきは思った。
みゆきはバスに乗り込み、施設に向かっていった。施設に戻ると、真っ暗で誰もいなかった。
「みゆきです。ただいま帰りました」
すると「せーの」とキラリちゃんの声が聞こえてきて、みゆきにクラッカーの音をみゆきに向けた。
何事かと思って「何々どうしたの?」と聞いてみるとキラリちゃんが「みゆきちゃん。今日はお誕生日でしょ」
そう言えば忘れていたが今日は五月二十九日でみゆきの誕生日だった。それに貴之の誕生日でもあるのだろうけれど、貴之はこのような催しには来ないだろうと思って携帯にはかけなかった。
「さあ、みんな。せーの」
「「「「「みゆきちゃんお誕生日おめでとう」」」」」
みゆきはなぜか嬉しくなって涙がこぼれ落ちそうになった。これって嬉しい涙なんだよな。悲しいときがあれば楽しいことがあるって言うけれど、みゆきは半信半疑だったけれどもそれは本当の事だった。
すっかり忘れていた今日はみゆきの誕生日だった。誕生日プレゼントはみゆきの大好きなリラックマの人形だった。
「みんな。ありがとう」
こんな風にお友達に誕生日をお祝いして貰ったのは初めての事だった。みゆきは本当に一人じゃ無い。みゆきは一人じゃないんだ。




