学校に行く
お買い物はタマネギ、ニンジン、ジャガイモを買ったのだった。
でもどれも安くていたんでいる物ばかりであった。
「みゆきちゃん。メグさんのカレーライスはおいしいんだよ」
キラリちゃんが今にも食べたそうに言う。
「そう」
それはそれで楽しみだが、みゆきはここがみゆきのユートピアになったとは思っていない。
商店街から帰ると、キラリちゃんは買い物袋とお財布を渡して、早速メグさんはカレー作りに専念した。
「メグさんあたしも手伝うよ」
とキラリちゃんが申し出て、私も手伝うこととなった。
私は包丁と言う物を使ったことがない。
でもなぜかキラリちゃんには女子力では負けたくないと言う気持ちが芽生えてきて、私は料理を作ったことがあると嘘をついてしまった。
「じゃあ、みゆきちゃんはニンジンの皮を切って一口サイズに切っていって」
「分かった」
私はニンジンをまな板の上にのせて、包丁を両手で持ち、思い切りニンジンに振りかざした。
するとニンジンは真っ二つに切れて、二つに割れたニンジンは吹っ飛んでいった。
「ちょっとみゆきちゃん。本当は包丁を使ったことがないんじゃないの?」
「ごめんなさい」
「私達に見栄を張ったのね」
そう言われて私は恥ずかしい気持ちになった。
するとメグさんから丁寧に包丁の使い方を教わった。
でもうまく包丁は使えず、みゆきはピーラーでニンジンの皮をむく係に任命された。
ニンジンの皮をピーラーでむくのは簡単だった。
みゆきもいつか包丁を使えるようになれたら良いのにな。
キラリちゃんは包丁を使いこなしている姿にみゆきは嫉妬した。
キラリちゃんはジャガイモの皮をピーラーも使わずにサクサクと包丁でむいている。
みゆきは包丁は使えなかった物の、とりあえず、カレーの具材の下ごしらえは終わった。 後は、炒めて、煮込むのはメグさんの役目で、私達は調理室を出て、メグさんがカレーを作っている間に、みゆきとキラリちゃんは、みんなを食堂に呼んだ。
「十人そろったね」
とキラリちゃんは言うけれど、十人と思って、ここの施設の人数を数えてみると十一人いる。それにその十一人目は髪が白く長く、外人か何かなのか?私の顔を見て驚いているような様子だった。その子は一人の男の子に見守られて、その男の子もみゆきの顔を凝視してきた。
まあ、十人も十一人も同じだろうと思って、みゆきは二階の調理室から、同じく二階の食堂までカレーライスを運んだ。
「メグさん、十人分なのに何で十一人分の量を盛るの?」
キラリちゃんは不思議そうにそういう。
「まあ、良いから、みゆきちゃんキラリちゃん。孝は大食いだから、二つ、あげてきて」
そうか、あのお人形のようにかわいい子の側にいるのは孝君って言うんだ。
だったら十人も十一人も一緒ではない。いったいあのお人形のようにかわいい女の子は何者なんだ?
それに孝君は二つカレーライスを盛られた皿を受け取り、お人形のようにかわいい女の子に与えている。
いったい何なんだろう。
まあ、良い、とにかくみゆきはお腹がすいているし、カレーの匂いがみゆきの食欲をそそる。
でもこのカレー言っちゃ悪いが肉が入っていない。
きっと肉も買えないほど、貧しい施設なんだとみゆきは思った。
とにかくみゆきはメグさんと言う人は悪い人ではないと分かった。
だからみゆきはメグさんの力になりたい。
カレーは肉は入っていなかったが、こんなにおいしいカレーを食べたのはみゆきは初めてだった。いや以前食べたことがある。それはみゆきのお母さんのカレーだ。
そう言えば、お母さんのカレーにはお肉が入っていたっけ。
どうしてみゆきのお母さんはみゆきにこの水晶玉を渡して姿を消したのか?
みゆきには考えても分からなかった。
それにメグさんと流霧さんの話によると、この世界に危機が迫っていると言っている。
みゆき達はその危機にどう立ち向かって行けば良いのか今のみゆきには分からない。
カレーライスはおいしかった。お替わりしたかったが、貧しい施設なのでお替わりする程の材料は残っていない。みんなメグさんは均等に十一人分均等に作っているのが分かる。食事が済んで後片付けは、食べた人それぞれがやるのだ。
恥ずかしいことにみゆきはお皿の洗い方も知らない。お皿の洗い方はそんなに難しくはなくキラリちゃんに教わってすぐに出来た。本当にキラリちゃんにはお世話になりっぱなしだ。
前の施設ではみゆきだけお寿司何て贅沢な物を食べていたが、それはみゆきの能力を利用した奴がみゆきにだけ特別に食べさせられた物だった。確かにお寿司はおいしかったけれど、こうしてみんなで食堂で色々と語り合いながら食べるカレーはおいしかった。
そして順番にお風呂に入る時間になった。お風呂場は狭く最大三人しか入ることしか出来ない。みゆきは最後で良いと言ったら、キラリちゃんと武士君とみゆきで入ることとなった。男の子とお風呂ってちょっと抵抗あるなと思ったが、武士君はまだ九歳でみゆきとキラリちゃんの裸を見て嫌らしい目で見るような年ではないだろう。
お風呂に入る番になり、もう湯船は少し黒く沼のような感じだった。みゆき達が最後だからなそれは仕方が無い。みゆきとキラリちゃんと武士君で、背中の洗いっこをした。何だろうこうしていると、幸せを感じてしまう。
私達がお風呂から上がったら、もう寝る時間だった。寝室は三階にあり、一部屋に二つの二段ベットが用意されていて、ここの施設にはその部屋が三つある。みゆきはキラリちゃんと武士君、それにみゆきの苦手なまどかさんが眠ることになった。
まどかさんは言っていた。今度また私をモデルにしても良いかと聞かれて、みゆきはヌードモデルじゃなければ良いよと言って置いた。みゆきはそんなにモデルになれるほど魅力があるのかな?
とりあえず今日のことを振り返ってみると、本当に楽しい一日だった。キラリちゃんと武士君と友達になれた。それにここは貧しいがみんな心が温かい。中にはわんぱく坊主で武士君をいじめる人もいたが、それはキラリちゃんが武士君を守った。
でも一人で眠るのはちょっと怖かった。私はベットの二段目に眠っていて、そこに眠らされている。それも一人で、一人で眠っていると以前いた施設の事を思い出してしまう。みゆきは眠れず震えていると、冷たいが何かぬくもりを感じる事が出来た。それはメグさんがみゆきのベットに忍び混んできたのだ。
「一人で眠るのは怖いんでしょ」
みゆきは正直にその首を縦に振った。
するとメグさんはその冷たい体でみゆきを包み込むように抱きしめてくれた。まるでメグさんの体は死体の用に冷たい体をしている。いやそれ以上かもしれない。メグさんの体は冷たいが心が温かくなってきた。
みゆきは一人の夜が怖いんだ。一人の夜になるとあの時の施設にいたときの事を思い出してしまう。男の子は重労働させられ、女の子は汚れた人間の元へと運ばれて、エッチな事をさせられてきた。
みゆきは特別だからそんな事はなかったけれど、思い出すだけで涙が止まらなくなってしまう。
でもこうしてメグさんに寄り添っていると、不思議とそういう事を考えずにすむ。でもメグさんも忙しい人だ。みゆきにばかり構っていられなしだろう。だからみゆきは今だけメグさんのぬくもりを感じながら眠りに入りたい。
「そう。みゆきちゃん。そんな事があったんだ。それは大変辛い思いをしてきたのね」
「メグさん、みゆきの心の中を見たの?」
薄々感じていたが、メグさんには不思議な力があってもおかしくないと思った。
メグさんは言っていた。メグさんは吸血鬼であり、一度死んでいるが吸血鬼として蘇ったのだと。さらに人の手に触れると、その人の心の中を読むことが出来るみたいだ。あまり心を読まれることはあまり良い気分はしないが、今だけ、メグさんに今までの経緯をメグさんの能力を通じて心を読んで貰おうと思う。
心は嘘をつけない。メグさんは凄い心の持ち主で凄く最高に人徳のある人だと分かった。
みゆきのホーリープロフェットはある程度の事まで未来を予想することが出来る。
みゆきは以前の施設に入るまでは、競馬で予想して大人に馬券を買ってきて貰って、お金を稼いでいた。でもある日警察に施設を紹介され、安井に出会い、安井に馬券を買ってきて貰うと、みゆきの能力のことを知り、それを自分の欲望の為だけに、みゆきのお母さんの事を知っていると嘘を言って、安井が運営するひどい施設に放り込まれてしまったのだ。
それよりも瞳ちゃん元気かな?みゆきの事を恐れて逃げてしまったけれど・・・。
冷たいメグさんのぬくもりの中、みゆきは気がつけば眠りに入っていた。
その証拠に、みゆきは朝起きて、凄く快眠することが出来た。
目覚めたのは一部屋ずつに設置されている目覚まし時計がけたたましく鳴る音だった。
みゆきはその体を起こして、トイレに行って、洗面台に行って手と顔を洗って、何か素敵な一日が始まる予感がした。
でもこれはみゆきのホーリープロフェットの力ではなく、みゆきはそう感じたんだ。
そして食堂に行き、メグさんが目玉焼きとトマトとトーストを一人ずつ渡して、食べた人は食器を洗って、みんな学校へと向かっていった。
学校かあ、みゆきも行きたいな。
そう思っていると、メグさんが、ボロボロの赤いランドセルをみゆきに渡してきた。
「みゆきちゃんも学校に行くのよ」
「みゆきも学校に行っても良いんですか?」
「もちろんよ。学校に行く手続きは済んでいるから、後はキラリちゃんと武士君に学校を案内して貰って」
「はい!」
みゆきはランドセルを受け取って、中身はノート一冊と筆箱と彫刻刀が入っていた。
早速みゆきはキラリちゃんと武士君に学校に連れて行ってもらう事になった。
みゆきは小学校三年まで学校に行ったことがある。それに友達もいた。さらにお母さんもいた。
でもお母さんの事を思い出すと悲しい気持ちになってくる。
「どうしたのみゆきちゃん。そんなに暗い顔をして」
「いや、別に、何でもないよ」
「なら、良いけれど」
ここの施設の人はちょっとでも不安な気持ちになるとすぐにばれてしまう。特にみゆきみたいにすぐに喜びや悲しみなどを顔に出てしまうことに対しては。
でも学校は楽しみだな、どんな友達が出来るのだろう?
けれども、キラリちゃんと武士君の方を見てみると、あまり楽しくなさそうな険しい顔をしている。
学校に到着すると、みゆきのランドセルをのぞいてみると、上履きがあった。それに履いて学校の中を入ろうとすると、キラリちゃんの上履きには中に大量の虫などが入っていた。みゆきはそれを見て愕然とした。
「どうしたのみゆきちゃん。その虫は?」
「うちら、親もいない施設に通っているからっていちゃもんをつけてくる人がいるのよ。みゆきちゃんも気をつけてね、施設に通っているからって、いじめてくる人もいるから」
みゆきはキラリちゃんと一緒に教室に向かった。中に入ると、みゆき達の事を目の敵にしている目でみゆき達を見つめてきた。
でもキラリちゃんは、そんなのお構いなしで、何事もなかったように、自分の席に座る。みゆきはこの小学校に入ったばかりなので、みゆきが座る席はなかったので先生が来るまで、キラリちゃんの側で待機していた。
そしてチャイムが鳴り、先生がやってきた。
「おーいホームルーム始まるぞ。みんな席に着け」
先生の指示通り、みんな席に着いた。
号令係がキリーツ、きよつけ、礼、と言ってみんなでおはようございます。と言った。そして着席。
みゆきは机がないので、キラリちゃんの側で待機して立っていた。
「そうだった、みんな今日から新しい仲間が増えるぞ」
先生はそう言って私の方を見た。
「確か、坂下みゆきと言ったな」
「はい、みゆきは坂下みゆきです」
「そんなところに立ってないでこっちに来たらどうだ坂下」
「はい」
そう言って教壇の前にいる蔵石先生の所に行く。
「初めまして、みゆきは坂下みゆきです。今日から五年二組の仲間です」
みゆきが自己紹介をすると、「河合と同じ施設の奴だろう」「知っている知っている」「またろくでもないのがやってきたよ」と色々とクラスのみんなはささやいていた。
「あの蔵石先生、みゆきの席は?」
すると蔵石先生は「河合、お前隣になってやれ」
「はい」
とキラリちゃんはやる気のないような不抜けた返事をしてみゆきをキラリちゃんの隣に座らされた。
キラリちゃんがみゆきに耳打ちをした。気をつけて、私達は施設に行っているからと言ってみんな私達の事をいじめてくるからね。
それを聞いてみゆきは心の奥底から嫌な予感がしてきて怖かった。




