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平和な一夜

 今日も貴之の奴一人でカップラーメンでも食べているのだろうか?だから施設のみんなと食事をしないかと言って見たら即座に拒否されて、すぐに電話を切られてしまった。


 あいつまたカップラーメンを食べて過ごすつもりだな。まあ、仕方が無い、本人が嫌だと言っているのだから。


 今日の施設のメニューはメグさんお手製の麻婆豆腐だった。みゆきは中華の中で麻婆豆腐は好きだった。最近、メグさんは忙しく無いのか?以前だったらご飯など作っているほどの余裕はないはずだったのに。

 まあ、それは良いことなのかもしれない。それはメグさんに取って平和の証だ。


 さて麻婆豆腐をご飯にかけて食べるのがみゆきは好きだった。これで麻婆丼の完成。みんなもみゆきの真似をして麻婆丼にして食べている。それにいつもの極めつけのブロッコリーとトマトのサラダ。この施設はいつも野菜にブロッコリーが出てくる。まあブロッコリーは栄養満点だから良いけれど。


 ご飯もご馳走になり、今日はメグさんの緊急指令的な事は無く、みゆきは帰る。


 みゆきが帰ると貴之は相変わらずカップラーメンを食べていた。


「貴之、カップラーメンばかり食べていないで、みゆきが遊びに行っている施設に飯食いに来いよ」


「うるせえな、賑やかなところは苦手なんだよ」


「それよりもあんた目に隈が出来ているわよ。またネットゲームで人助けをしていたんでしょ」


「うるせえな、関係ないだろ。姉ちゃんだって俺がやっていることに関心していただろ」


「まあ、関心はしたけれど、もっと自分を大事にしなさいよ」


「分かっているって」


 ったく、素直じゃないなあいつも。みんなと食べるとご飯はさらにおいしくなるのに。あいつのことをホーリープロフェットで探ろうとするとあいつイービルプロフェットの力でブロックしてくるんだもんな。

 まあ、それよりも今日みゆきの初恋は玉砕したがみゆきは振られたと思っていない。純君に本よりも魅力的なみゆきを見せて純君の心を射止めてやるんだから。


 時計は九時を回っている。そろそろ眠りたいところだがまだお風呂がまだだった。お風呂に入ろうとすると、先に貴之の奴が入っていた。何だよこんな時間にあいつお風呂入っているのかよ。


「貴之、入っているのか?」


「入っているよ、何覗いてんだよ」


「別に覗いて何ていないよ。ただ聞いてみただけだ」


「だったら俗室から出て行けよ」


 何であいつはいつも不機嫌なんだろう。まあいつものことだから仕方が無い。とにかく貴之が出るまで待つしか無いな。それまでに何をしていようか考えたところテレビでも見ていようと思ってリビングに置いてあるテレビの部屋へと向かった。

 テレビでやっていることは、痴漢で捕まった奴の事が報道されていた。しかもその人は芸能人で大騒ぎとなっている。何が痴漢でこんなくだらないことを報道するのだろうとみゆきは呆れた。みゆき達は引きこもりの生徒や貴之なんかネットゲームを介して人助けをしているのに、そう言った事を報道させたい物だと思う。

 そんな芸能人が痴漢で捕まったからと言って、世間はあんな芸能人が痴漢で捕まるなんてバカみたいと人の不幸を楽しんでいるバカ共の餌食になっているに違いない。

 本当にこの世の中は平和に見えるのだが、以前まではみゆきと貴之で世界を救った事など誰も知らない。仕方が無いことだもんな、世間はみゆきと貴之のそれぞれの力のことをあまり言ってはいけないことなのだ。でも言ったからと言って世間は誰も信じてはくれないだろう。


 そろそろお風呂が空く頃だろうと思って俗室の前で「貴之出たか?」


「・・・」


 返事がない。気になって俗室を開けてみると、貴之はのぼせていて裸のまま倒れていた。


「おい、貴之、どうしたんだ?」


「・・・」


 貴之に返事はなかった。だから今貴之の事を調べるためにホーリープロフェットの力を活用させて調べさせて貰う。この状態ならイービルプロフェットでガードする事は不可能な事だ。

 貴之の事を調べて見ると、四十八度のお湯に浸かって軽い脳震盪を起こしたみたいだ。それに熱いお湯に入ると覚醒温度の四十五度のお湯に浸かるとネットで人助けするのにメリハリがつくと言っている。

 何を考えているんだこのバカは、しかもちん○ん丸出しじゃないか。とにかく貴之の体を拭いてやってパンツをはかせて貴之の奴はかなり重い。そのままリビングに連れて行って、リビングのソファーに横たわらせて薄い掛け布団を掛けてやった。こうすればすぐに目覚めるだろう。


 貴之が目覚めると「あれ、俺はどうしたんだ?」


「覚醒温度を超える四十八度のお湯に浸かって脳震盪を起こしたのよこのバカ」


「姉ちゃん。俺の事をホーリープロフェットで探ったな」


「探らなかったらあんたはあのまま死んでいたのよ。全く何を考えているのよ」


 時計は十一時を示している。


「やべえ、早く行かなきゃ」


「行かなきゃってどこに行くのよ?」


「決まっているじゃないか。ネットの世界だよ」


「貴之、今日はあんた安静にしていなさい」


「安静にしている場合じゃないんだよ。俺を必要としている人は山ほどいるんだよ。だからこの時間が勝負なんだよ」


「じゃあ、今日のネットゲームはみゆきも賛同してあげるから、あんたの必要とされている人を紹介しなさい」


「何言っているんだよ。そんな事出来る訳ねえだろ」


「紹介しなさい!!!」


 みゆきは強く言う。ひるむ貴之。


「分かったよ。紹介するけれど、凄く繊細な奴らばかりだから変な事を言うなよ」


「分かっているわよ」


 みゆきは実際にメグさんのチャットでホーリープロフェットの力で何度か助けた事があった。何か楽しみだな、貴之がやっているネットゲームで人助けをするなんて。


 みゆきは貴之について行き貴之の部屋に入る。


「汚い部屋だね」


「仕方が無いだろ。ネットゲームで俺を必要としている人達はたくさんいるんだから」


「ったく仕方が無いわね」


 みゆきは貴之の部屋を片付けることに専念した。こんなところで眠るなんて疲れがたまっていつか厄災が起こるかもしれない。まあでも貴之は別に悪いことをしているわけじゃないし、でも貴之の事をほおってはおけないな。


 貴之はネットゲームの住人に夢中になってコントローラを持ち時にはキーボードを打っている。みゆきはその間に貴之の部屋を片付けている。これで貴之の奴がネットゲームだけに熱中していたらみゆきは貴之の事を叱るだろうな。でも貴之はそんな事はしない。画面で会話を見てみると、『元気かあ』とか『俺も元気だよ』とか『今日も学校休んでネットゲームに夢中になっちゃったよ』とか『学校で何か嫌な事でもあったの?』等など、貴之はネットゲームを介して語りかけている。

 その間、みゆきは貴之の部屋を掃除してあげた。


 貴之はネットゲームをしている。その周りには妙なノートが積み重ねられて置いてある。


「何、このノート」


「これに、さわるな!」


 激怒する貴之。


 みゆきはそんな貴之にきょとんとすると、貴之は、「これはこのネットの住人の人達の記録ノートだよ」と素直に教えてくれた。


 みゆきは一つ息をつき貴之の奴ならもう大丈夫だと思って、「とにかく、ネットで人助けも良いけれど自分の体を壊さないようにな」と言ってみゆきはお風呂場に向かった。


 みゆきは貴之が入っていたお風呂に入ろうすると、凄い高熱で体がやけどするぐらいの温度だと言うことに気がついた。

 何?貴之の奴こんな熱いお風呂に入っていたの?貴之が言っていた覚醒温度を超えてネットゲームの住人にエールを送っているらしい。お風呂の温度は四十五度になっている。それはそうだよな貴之の奴が入っていた時は四十八度になっていたんだよな。四十五度でもこの熱さ尋常じゃない。

 使用がないお風呂の温度を冷ますために水を足そうと思っている。温度は四十二度ぐらいになってやっと入れる温度だ。それでもお風呂は熱かった。とにかく長い髪を結い、お風呂に入り髪を洗って体を洗いまたお風呂に入った。


「はあ、極楽極楽」


 何て暢気な事を言ってられるのは、みゆきと貴之はこの世の中を救ったんだもんな。この事は誰にも知られていないんだもんな。ニュースを見ていたら芸能人が痴漢で騒いでいた事がトップニュースとなっていた。こっちは命がけでこの世を救ったと言うのに、その事を報道されても良いんじゃないかとみゆきは思い始めた。


 世の中が平和になっても、社会でもパワハラやマタハラなどで苦しんでいる人もいるみたいだ。でもみゆきが担当する人は十代ぐらいの思春期を迎えた位の人だ。みゆきはまだ六年で思春期を迎えるのは早いとメグさんから言われている。それにみゆきの事を大人扱いしてくれているのだろうか?


 みゆきはお風呂から出て下着を着用して、パジャマに着替えるパジャマと言ってもネクリジェだけれども。


 それよりも貴之の奴しっかりやっているのかな。また何かあったら姉としての立場が無くなるからな。


 貴之の部屋に入ると。


「もう、入ってくるなよ!!!」


 怒鳴られてしまった。


「何を言っているのよ!さっきはあんたを担いであのままだったら死んでいたところだったんっだよ」


「・・・」


 ぐうの根もいない貴之。みゆきも貴之の隣に座って、みゆきは貴之がやっていることを鑑賞した。 本当に偉いな、貴之の奴は、こうしてネットゲームでネットないで冒険しながら、色々な人達にエールを送っている。


 そうだよな。みゆきと貴之がいなかったら純君も生きていなかったんだよな。純君はみゆきのことを本当の占い師みたいに見ているけれど、純君も純君で本の声が聞こえる特殊能力を持っている。それに純君は本が恋人だと言っている。


「何だよ姉ちゃん。暢気に恋なんてしちゃって」


「何よ。みゆきの事をイービルプロフェットで探ったわね」


「そうやって恋に現を抜かしていると痛い目に会うよ」


「あんたには関係ないことでしょ!この根暗」


「人が下手にのっていれば調子に乗りやがって!」


 そう言って貴之が襲いかかってきた。みゆきも負けていられないと思ってみゆきと貴之は取っ組み合いになってしまった。


 その時である。お母さんが帰ってきて、「あなた達やめなさい」とお母さんに止められた。

「とにかくこの部屋から出て行け!!」


 と貴之は怒鳴り散らして、貴之は本気で怒っている。


「貴之、お母さんにそういう言い方はないんじゃないの?」


「うるせえこのくそカカア!!」


 その時、お母さんの堪忍袋の緒が切れた。


「親に向かってその言い方はないんじゃないの?貴之!?」


 そうだ。貴之はお母さんに叱られた方が良いと思っている。いくらネットゲームで人助けをしているからって調子に乗りすぎだと言ってやれば良いのだ。


「なるほど、貴之が四十八度のお湯に浸かってそれでみゆきが助けてあげて、それでみゆきが恋をしていることに現を抜かしていると、痛い目見るって言って喧嘩になった訳ね」


「俺のイービルプロフェットのガードが破られた」


「お母さんね、こう見えてもあなた達よりかは力があるのよ」


「そのカカアを助けたのは俺達だろ」


「あら、お母さんは助けて何て一言も言っていないし、それに恩着せがましい人間はお母さん嫌いだな。それに親に向かってカカアはちょっとお仕置きが必要みたいだね貴之は」


 お母さんは笑っているが目が笑っていない。みゆきはこんなお母さん初めて見た。みゆきはお母さんに怒られたのは、冥界に行ってお母さんを助けようとしたところを怒られた事しかない。お母さん本気で怒っている。みゆきは怖くて見ていられずに、その場を後にした。


 みゆきは部屋に戻ると貴之の叫び声が響いた。これじゃあ近所迷惑になってしまうがお母さんは容赦しない。そうだ。貴之は一度、懲らしめられてしまえば良いのだ。

 カカアなんて言ったからそうなるんだ。それで少しは素直になって欲しいと思っている。色々と貴之は人助けをしているみたいだが、まずは自分の事を直すべきだとみゆきは思う。いつも学校では人を蔑むような目をして、休み時間になるとどこかに消えて無くなってしまったんじゃないかと心配もした。

 あんなのが純君に弟だと知られたら、みゆきの株は下がってしまう。もっと純君にはみゆきの素敵な部分を見て欲しいと思っている。

 とにかく今日は寝よう。貴之の奴にはちょっと気の毒だと思ったけれど、それぐらいの心の痛みを被って欲しいとみゆきは思っている。


 今日も良い夢が見られると良いんだけれどもな、みゆきが不吉な夢を見ると、本当に不吉な事が八十パーセント起こるからな。これはみゆきが能力者だと言う証なのかもしれない。


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