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独りぼっちの時でさえも誰かがいつも見ててくれる

 学校が終わって、みゆきはメグさんが経営する施設へとキラリちゃんと武士君とで行くことになった。貴之も行かないかと言ったが、「俺は忙しいんだよ」と言って断られてしまった。

 そうだ。貴之はイービルプロフェットで悩み多き人を助けたりしているんだ。そんな貴之を見つめると貴之は「何ニヤニヤしているんだよ」「いいや別に」と言って貴之が帰るのをそのまま後ろ姿を見て見送ってあげた。貴之の奴も恥ずかしがり屋だな、堂々とネットで悩み多き人にエールを与えることで忙しいんだよって言えば良いのに。


 それよりも今日もみゆきはメグさんの施設で遊びたいと思っていた。


 みゆきはキラリちゃん達とゲームをしたり外に出てバスケをしたり、とにかく楽しいことをたくさんした。キラリちゃんみたいなお友達が出来てみゆきは幸せである。


 もうカタストロフィーインパクトに怯えることはないんだ。みゆきはもう自由なんだ、そしてみゆきはもう一人じゃないんだ。


 さて、そろそろ遅くなってきた。遊び疲れて施設に戻るとそこで待っていたのがみゆきをモデルにしているまどかさんだった。


「みゆきちゃん。お帰り。まどかはこの日を待ちわびていたよ」


「みゆき、そろそろ帰るから」


「そんなつれないことを言わないでよ。報酬ははずむわよ」


 それは聞き捨てならない、まどかさんは言った。報酬ははずむと。お金はホーリープロフェットの力で手にするとホーリープロフェットの力が衰えるんだよな。それにかなりの額を稼いできたが、このお金は遊びとかで使ったら偉い目に遭うってお母さん言っていたっけ。それに身をもって知ったことがある。


 みゆきも現金な女である。最近お小遣いが欲しいから、まどかさんの絵のモデルになったりしている。


 みゆきは真っ赤なワンピースに着替えさせられて、まどかさんがスケッチする目の前でみゆきはよつんばになって、まどかさんの目をジッと見つめた。まどかさんの絵を描くときの目は凄い。ギラリと光り、何かにとりつかれているようにみゆきをモデルにして描いている。

 でもこうしてジッとしているのもかなり疲れるんだよな。三十分くらいが経過して、みゆきはもう限界だった。


「みゆきちゃん。後もう少しだからね」


 ギラリと光る目から一転して目が凄くエロくなっている。こうゆう時のまどかさんはいったい何を考えているのだろう。本当は絵のモデルなんて嫌なんだが、今日、報酬は弾むと言う言葉に惑わされてしまった。


 まどかさんの目が元の優しい目に戻った。そろそろモデルの仕事も終わるだろうと思ってその通りだった。


「みゆきちゃん。もう良いわよ」


 そうまどかさんに言われて気が抜けてモデルの仕事に疲労困憊だった。


「はい。みゆきちゃん。今日の報酬」


 まどかさんに渡された報酬は二千円だった。やった。これで明日、キラリちゃんと武士君とでカラオケにでもいけるかもしれない。そんな事を思っていると、まどかさんは。


「ねえ、みゆきちゃん。みゆきちゃんがヌードモデルをしてくれたらもっと報酬ははずむわよ」


 興奮した牛のような感じでみゆきを見つめてくる。


「それは嫌です」


 みゆきはきっぱりと断る。大体、ヌードモデルなんてやったらみゆきはお嫁になんか行けなくなってしまうよ。みゆきはそんな軽い女ではない。自分の貞操は自分で守らなくてはいけない。


 時計を見ると、そろそろ午後四時半を示している。みゆきには門限はない。いつもお母さんは占いの仕事でいつも遅いからだ。お母さんもみゆきのホーリープロフェットと貴之のイービルプロフェットのような物で力はあるのだろうか。


 そう言えばあの時、キャリアスがみゆきと貴之とお母さんとで三人の力で絶対神を目覚めさせた事を思い出した。きっとお母さんはみゆきと貴之を養うために働いているのだろう。それよりもみゆきのホーリープロフェットと貴之のイービルプロフェットは百発百中だ。だからお母さんの力も相当な物なのかもしれない。私達の力は私利私欲の為に使うと力は失い、仕舞いには何もなくなってしまうとお母さんに教わった。


 だからみゆきも貴之もその点には気をつけている。だから貴之はイービルプロフェットでネットゲームをしている悩み多き人達にゲームをしながらエールを送っているのだろう。あれならイービルプロフェットの力は増すだろうな。みゆきも貴之に負けていられない。


 今日もみゆきはメグさんのお手伝いをしようと思っている。今日も自殺なんて考える人はいないかとメグさんの力になってあげたいと思っている。そうすれば力は増して素敵な力を持つ人になれると思っている。これは私利私欲の為ではない。誰かの為にその力を発動させるのだ。


 みゆきは早速メグさんの部屋に行った。


「メグさん。今日は力になれることはないかな?」


「丁度良かったわ、みゆきちゃん。その『『ひゃっほ』』って言うチャットのユーザーなんだけれども、その子が最近往信不通なのよ。メグちゃんの力でその『『ひゃっほ』』を占うことは出来ないかしら」


「分かりました」


 その『ひゃっほ』って言うユーザーの子の事を占ってみた。するとその『ひゃっほ』って言うユーザーは十四歳の女の子で今にもマンションから飛び降り自殺をしようとしている。


 地図で場所を特定して占ってみると、ここから遠くない程の距離だ。この距離ならばいけるはず。待っていて、その『ひゃっほ』って言う十四歳の女の子。


 みゆきはホーリープロフェットの力を駆使して全速力で走り出した。みゆきは目にも映らないほどの早さでその『ひゃっほ』って言う、十四歳の女の子を助けに行く。その『ひゃっほ』って言う女の子は本気で自殺をしようとしている。良く自殺をしようとしても勇気が無くて出来なかったと言うケースが多いがその『ひゃっほ』って言う女の子は本気で自殺をしようとしている。


 みゆきが本気で止めてあげて、みゆきもこのホーリープロフェットの力を誰かの為に使いたいと思っている。


 そしてマンションの屋上に『ひゃっほ』はいた。


「『ひゃっほ』ちゃん。メグさんから最近連絡が無いから心配していたよ」


「あなた誰よ」


「私は坂下みゆきって言うんだけれども、『ひゃっほ』ちゃん。あなたの本名を教えてくれないかしら」


「坂森絵里よ!」


「年は十四歳だよね」


「あなたあたしに何か用なの?」


「もちろんあるよ。自殺なんてバカな真似をする絵里ちゃんを助けに来たのよ」


「あたしを助ける?どうしてあたしを助けるの?あなたにあたしの何が分かるって言うの?あなたみたいな小娘があたしに何もする事なんて無いわよ」


「そこから落ちたら、トマトのようにぐちゃぐちゃになって、脳みそも目玉もボロボロの状態になるよ」


 とみゆきは脅す。


「そ、そんなの怖くないもん」


 凄く怯えている。自殺する勇気という物は相当な物だとみゆきは知っている。みゆきも自殺を考えたことが何度もあったが出来なかった。


「絵里ちゃんだっけ?もしよろしければ自殺する前に、その手をみゆきに触れさせてくれないかな?」


「何でそんな事をする必要があるのよ」


「良いから良いから」


 そう言ってみゆきは絵里ちゃんの手を握ってみた。すると絵里ちゃんの過去が見える。絵里ちゃんは学校では一年から六年生までいじめられて、中学に入ってからもいじめられていた。それでメグさんのチャット仲間に入り、いつもメグさんのメールでエールを受けて耐えていたという。


 登校拒否をしたが、親に見つかって、フライパンで腹を殴られたと言っていた。親にいじめられていることを言っても『あんたがだらしがないから』と言って相手にされなかったと言っている。


「ねえ、絵里ちゃん。みゆきもいじめられた事があるんだ」


「はぁ?何で私の事が分かるのよ」


「さあ、それは何ででしょう?」


「とにかくあんたみたいな小娘に私の気持ちなんて分からないわよ」


「分かるよ。いじめって辛いよね。いじめる連中はそれが楽しいからやっているみたいでさ、みゆきにはそんな連中の気持ちが分からないよ。人が傷ついているのに、それに絵里ちゃんの親は何も聞いてくれない。それに絵里ちゃん仲間もいないみたいなんだね」


「そうよ私は独りぼっちなのよ、もう苦しいのよだから楽に死なせてよ」


 みゆきの掴む手を離して飛び降りようとしたところ、みゆきは目にも止まらない早さで、それを阻止して絵里ちゃんのその頬を叩いた。


「何するのよ」


「一人ぼっちの時でさえも誰かが絵里ちゃんの事を見ている人はいるんだよ。その事に気づいて」


「そんなのあるわけがない。私を理解してくれる人なんていない!だから私を死なせてよ。もうこの世になんか未練なんて無いんだから」


「絵里ちゃんが死んだら、家族の人が悲しむと思うんだ」


「思わないわよ。私の事、全然理解してくれないし、私がこんなに苦しんでいるのに、私の相手もしてくれない」


「でも子供の時の事を思い出してごらんよ。お母さんもお父さんも絵里ちゃんの事を宝のように育ててくれたことを思い出して、そして勇気を持って、生きて。悲しい事があればもうすぐ楽しいことが待っているから大丈夫だよ」


 すると絵里ちゃんはその場で泣き崩れてしまった。自殺したいと言う意志の膿を出しているのだろう。


 今は思い切り泣いて、そして思い切り笑って欲しいとみゆきは思っている。


 絵里ちゃんはかわいそうな子だったんだな。


「絵里ちゃん。戻ろうよ。きっと絵里ちゃんのお父さんもお母さんも心配しているし、最近あなたがメグさんにチャットに参加していないから心配していたよ」


「あなたはメグさんの何なの?」


「メグさんはみゆきの大切な友達だよ」


「でも私は死にたい」


 まだ。そんな事を言うのかあ、じゃあ仕方が無い。


「じゃあ、みゆきが絵里ちゃんを地獄まで案内してあげるよ」


「地獄まで案内って?」


 みゆきは絵里ちゃんを抱えてそのマンションの屋上から飛び降りた。みゆきもこのやり方はしたくないのだが仕方が無い。死ぬと言うことはどれほど怖い物か身をもって知ってもらう為に、絵里ちゃんを抱えて飛び降りた。


「きゃあああ、私死にたくない!!!」


 と絶叫して、気絶してしまった。そしてみゆきは絵里ちゃんを抱えたまま、急降下して、直前でホーリープロフェットの力で止まった。ホーリープロフェットの力で絵里ちゃんを占ってみると、もう自殺なんてバカな事はしないと言っている。だからみゆきは絵里ちゃんを公園のベンチの上にのせて、みゆきが羽織っているカーディガンを絵里ちゃんにかけてあげた。


 これでもう自殺なんてバカな真似はしないとホーリープロフェットは言っている。でも心配だから絵里ちゃんが意識を取り戻すまでここにいようと思っている。


 こうして絵里ちゃんの顔をジッと見つめていると、みゆきはまだ幼いガキなのに、絵里ちゃんはちょっと大人びていて、何かムカつく。


 本当に夜の公園は物騒だ。真っ暗で何もない。それよりも絵里ちゃんは大丈夫か見ていないといけないな。メグさんとの約束だもんな、このままほおっておいても大丈夫だろうが何か心配でもしかしたらみゆきのホーリープロフェットは百発百中だが万が一と言う言葉がある。もしかしたらこのまま絵里ちゃんは気がついたら一人でこんな所にいて、また自殺なんてするのかもしれないし、もしかしたら誰かに誘拐されてレイプされてしまうかもしれない。

 本当にみゆきのやることは楽な事じゃないな、人を改心させるには色々と面倒でしんどいってメグさん言っていたけれども本当の事だ。


 そして絵里ちゃんは「きゃあああ!!!」と絶叫しながら目覚めた。


「お目覚めですか?絵里ちゃん」


「怖かったよ。本当は死にたくないよ!!」


 と言ってみゆきに抱きついてきた。


 そんな絵里ちゃんをみゆきは優しく抱きしめた。


「そうだよね。死にたくないもんね」


「ところであなたみゆきちゃんって言ったね、私に何をしたの?」


「さあ、ただみゆきは本当の死の恐怖を身をもって知ってもらいたかっただけだから」


「あなたには不思議な力を感じるんだけれども」


「それは気のせいだよ。みゆきは何にもしていないよ。悪い夢でも見ていたんじゃない」


 とみゆきはホーリープロフェットの事を隠しておいた方が良いと思ってとぼけた。


「私死にたくない。本当はもっと友達に囲まれて、一緒に勉強したり、一緒に遊んだり、一緒に部活したい」


「だったらその思いを現実にぶつけてごらんよ」


「でも私はいじめられっ子」


「そのいじめっ子に牙を向ける勢いで立ち向かって見なよ。そんな死ぬ勇気があるなら、それぐらいの事は出来ると思うんだけれどもな」


「じゃあ、やってみるよ」


 拳を握りしめて絵里ちゃんは帰っていった。


 これで大丈夫かどうかは分からない。それにホーリープロフェットの力でも分からない。後は絵里ちゃん次第だ。


 みゆきはスマホを取り出して、メグさんに連絡を入れた。


「メグさんですか?みゆきですけれども」


「あら、みゆきちゃん。『ひゃっほ』は大丈夫だったの?」


「もう少しでやばいところでしたけれども、後は彼女次第です」


「そう。ありがとうみゆきちゃん。恩にきるわ。あっそうだ。今日は施設でお好み焼きパーティーなのみゆきちゃんも来る?」


「行きます」


 とりあえず一件落着と言ったところである。


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