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友達が出来た

 ボロい施設の英明塾に行って、みゆきはメグと言う人に連れられた。


「中を案内するけれど、ここ一階はパソコン室と勉強室と娯楽室があるわ」


 一通り見てみると、勉強室ではある老人と何人かの生徒が勉強をしていた。

 娯楽室はゲーム部屋になっていて、みんなしてゲームで遊んでいる。

 パソコン室は誰もおらず、メグさんと二人きりで話すには持って来いの場所だと思った。


 みゆきとメグと言う人はパソコン室に入り、メグさんはみゆきの顔を見るなり、ニコニコしていた。


「そんなに警戒しなくても良いよ。もっと気持ちを緩くした方が良いんじゃない?」


「メグさんはみゆきの力を悪用するつもりなの?」


「私はそんな事はしないよ」


「嘘、みゆきが意識が失いそうになったときにあなた達は言っていたわ。みゆきがホーリープロフェットの使いだと」


「ええ、言っていたわ。あなたは選ばれしホーリープロフェットの使いだと」


「みゆきに何をして欲しいって言うの?」


「実を言うと世界に危機が迫っているって流霧さんは言っているのよ」


「危機が迫っている?」


「それでみゆきちゃんのホーリープロフェットの力が必要になってきているのよ」


「みゆきには関係のないことだわ、世界がどうなろうともこんな汚れた世界なんていっそ壊れてしまえば良いんだわ」


「それは困ったわね。みゆきちゃんが力を貸してくれないとすると、どうすれば」


「どうしようもないよ。こんな世界いっそ壊れてしまえば良いのよ」


 そう言って、みゆきはこの施設から出ようとすると、ドアの隙間からみゆきの事を見ている人がいた。

 それに何かニコニコしていてみゆきに興味を持った感じであった。

 みゆきと同じくらいの女の子で、髪は短く、黄色いワンピースを着ている。


「何よあなた、みゆきに何か用?」


 すると女の子は「何、メグさん、この人新しいお友達?」


 女の子は言った。お友達と・・・その言葉にみゆきの心の底から得たいのしれない嬉しさが湧き出そうになってきた。


「そうよ。その子はここ英明塾の新しいお友達の坂下みゆきちゃんよ」


 メグさんは勝手な事を言う。


「みゆきはここの人じゃなくて・・・」


 とびきりの笑顔で私の手を取り、「ねえ、あたしは河合キラリ、キラリちゃんとみんなに呼ばれているの。あたしもみゆきちゃんの事をみゆきちゃんって呼んで良いかな?」


 みゆきの中で葛藤が始まる。でもお友達と言われた時の気持ちに嬉しさに圧倒されてみゆきは「うん」と返事をした。


「みゆきちゃん。みゆきちゃん。みゆきちゃーん」


 嬉しそうに飛び上がって、みゆきの名前を連呼する。


 みゆきは正直嬉しかった。こんな気持ち初めてであった。

 このキラリちゃんって子にみゆきは興味を示し始めた。


「ねえ、みゆきちゃん。メグさんとお話が終わったら、娯楽室でゲームをしようよ」


 そこでメグさんは「お話は済んだから、キラリ、みゆきちゃんと遊んで来なよ」


「行こうみゆきちゃん」


「みゆきは強制的にキラリちゃんに娯楽室まで案内されてしまった」


 娯楽室ではゲームをしている人ばかりだ。

 みゆきはテレビゲームなんてしたことがないので、少々戸惑った。


「みゆきちゃん、みんなテレビゲームをしているけれど、みゆきちゃんはテレビゲームってやったことはある?」


「いやないけれど・・・」


「じゃあ、三人でトランプとかジェンガなんかしようよ」


「三人って?」


 そこでキラリちゃんが「武士たけし、みゆきちゃんと一緒に遊ぼう!」

 武士?疑問に思っていると、娯楽室の隅っこで、体躯座りをしている、いわば根暗の男の子だった。


「武士、紹介するね。この子はみゆきちゃんって言うんだ!」


「・・・」


 武士君は何も喋らない。でもみゆきに手を差し出して来た。その手を握るとまたお友達が出来たと嬉しく思えてきた。


 早速、みゆきとキラリちゃんと武士君でトランプをする事になった。


 本当に楽しかった。こんなに友達に囲まれて遊ぶことがみゆきの夢だったから。ここはまさにみゆきが求めていたユートピアなのかもしれない。

 でも分からない、あの悪魔のような流霧さんと優しいメグさんは何を考えているのかみゆきには一つの疑念が生まれた。

 もしかしたらこの子達もひどい目に合っているのかもしれない。

 みゆきが住んでいた施設はとんでもないところだったからな。

 でもみゆきはここには悪い人はいないのかもしれない。

 でも分からない、流霧さんとメグさんはこの世の危機を救うためにみゆきを必要としている。その為にみゆきは死にそうな所を助けられたのか?

 そう思うと自分の置かれた立場を呪いたくなってきた。


 トランプは楽しかった。


 そこでキラリちゃんは「みゆきちゃんはどうしてこの施設に入ってきたの?」と、とんでもない質問をしてきた。


「以前、とんでもない施設に放り込まれて、散々虐待をされた所をメグさんに助けられたの」


 まあ、所々の所は省いてはあるが嘘は言っていない。


「私はねえ、公衆便所に産み落とされてこの施設に来たんだってってメグさんは言っていた。私が物心が付くときにはこの施設で貧しいけれども幸せな毎日を送っていたよ」


 私はキラリちゃんの境遇に凄く驚いた。

 キラリちゃんに比べればみゆきなんて幸せな方かもしれない。

 でもキラリちゃんはそんな事があっても、凄く明るくて一緒にいるだけでもディズニーランドにいるよりも楽しいと思う。


 みゆきは少しもよおししてきてトイレに行きたくなった。

 キラリちゃんにトイレの場所を聞いて、用を足してトイレから出た。

 

 そこで眼鏡をかけた制服を着た女の子がみゆきの前に現れた。


「あなた、何て名前なの?」


「坂下みゆきです」


「へえみゆきねえ、良い名前ね、うちの名前は高崎まどかって言うんだ」


「まどかさんって言うんですね」


「ねえ、あなたうちのモデルになってくれない?」


「モデル!?」


「あなた結構かわいいし、何か芸術的な何かを感じるのよ」


 モデルくらいなら別に良いかと思って、二階にある通称まどかのアトリエに案内された。


 アトリエには様々なキャンパスに描かれた絵が飾られていた。

 壺の絵など、ひまわりの絵など、花瓶に生けられたダリアの絵など、様々な絵が飾られていた。


「これ、全部、まどかさんが描いた絵なんですか!?」


「うん。そうだよ。うちは中学を卒業したら美術学校に行くつもりでね、毎日、その学費を稼ぐために新聞配達の仕事をしているんだ」


「へー」


 みゆきにはまどかさんのような夢はないから内心嫉妬してしまった。

 て言うかみゆきは夢を見れるのだろうか?


「じゃあ、みゆきちゃんだっけ、そこの椅子に座ってもらえるかしら?」


 みゆきは言われたとおり、まどかさんのアトリエの窓際にあるパイプ椅子に座った。


「それで横を向いて、手は膝の上に乗せて、そのままジッとしていてね」


 このままジッとしていろと言うのか、みゆきはモデルは簡単だと思っていたが、案外疲れるものだな。

 みゆきが少しでも動こうとすると、まどかさんに注意をされてしまう。

 本当にモデルって厳しいな。


 あれからどれぐらいの時が経ったのか?みゆきはもうヘトヘトだった。


「良いわみゆきちゃん動いても」


「ハァ」


 やっと終わったと思って、みゆきはもう疲労困憊だった。


「ほら見て、まゆが描いたみゆきちゃんの絵」


 まゆさんはみゆきを描いたデッサンをみゆきに見せてきた。


「みゆき、こんなに綺麗なの?」


 みゆきはあのとんでもない施設に連れて行かれて自分で鏡を見ることがなかったので、みゆき自身の姿をあまりまともに見たことがなかったのだ。

 

 するとまどかさんはうろんな目つきで私を見つめてきた。

 それは疚しいときの目だと気がつき、みゆきの中で危険信号が発信された。


「ねえ、みゆきちゃん。今度はみゆきちゃんのヌードモデルを描きたいんだけど、良いかな?」


「嫌です」


 と即答。

 このまどかさんという人は何を考えているのだ?やっぱりみゆきの思ったとおり、疚しいことを考えていたのだ。


「お願いみゆきちゃん。まどかの一生のお・ね・が・い」


「みゆきはこれで失礼します」


 そう言って、ドアから外に出ようとすると、ドアは鍵がかかっていた。


「あれ?開かない」


「鍵はまどかが持っています。ヌードモデルしてもらえるまで開かないかもよ」


 まどかさんが嫌らしい目つきでみゆきを見つめて、みゆきのフリルのついた白いワンピースの裾を掴んでまくし上げた。


「きゃーー」


 と叫んで、みゆきはまゆさんがみゆきのワンピースを脱がそうとしたところ、窓から、メグさんが現れた。


「まどか、何をやっているの?」


 メグさんは笑っているがみゆきには見える。その笑顔の裏の怒りが。

 どうやらみゆきはメグさんに助けられたみたいだ。


「あの、その、みゆきちゃん。かわいいから、モデルになって貰おうと思って・・・」


「だからってヌードモデルを強要するのはどうかと思うよ」


「あれ?その?何て言うか?てへ!」


「何をさせようとしているのよあなたは?」


 そう言いながらメグさんはまどかさんの所に行き、まどかさんに怒りの鉄拳をお見舞いした。どうやらみゆきはメグさんに助けられたって、ここは確か二階だ。どうやってこの二階まで上って来たのか不明だ。


「もう大丈夫よみゆきちゃん」


 メグさんはそんなみゆきを抱きしめた。


 メグさんの体って冷たい。


 まどかさんはメグさんのゲンコツを喰らって、悶えている。

 このメグさんって言う人、みゆきと同じ能力者なのだと分かった。


 みゆきはそんなまどかさんを放置して、メグさんの冷たい手にひかれて、鍵が閉まっているドアの鍵を開けて外に出た。


「ゴメンね、みゆきちゃん。気分を悪くしないでね」


「ここ、凄く危険な所じゃないですか!」


「いやまどかが危ないだけよ、でもまどかは絵のことになると見境がなくなるからね」


 そこでキラリちゃんが現れて、「みゆきちゃん、トイレから出て、どこに行っていたのよ、探したんだから」と。


「うん。ゴメン」


 そこでメグさんの顔を見ると、爽やかな笑顔でみゆきを見た。

 どうやらここの施設は、私が以前いた施設よりも危ない場所ではないみたいだ。

 でもまどかさんには気をつけた方が良いとみゆきは胸に刻んだ。


 メグさんに連れられた施設は凄く良いところだった。

 ここはまさにみゆきのユートピアと呼んでも良いところ何だけれども。本当にこんなにも早くユートピアに到着して良いのだろうかと思うほどだ。

 でもメグさんも流霧るぎりさんも世界に危機が迫っているからと言って、みゆきの力を必要とされている。

 だけれども二人はみゆきの事を強制しようとはしていない。

 

 メグさんは優しくていい人だ。でも流霧さんは嫌な人だ。でもメグさんは流霧さんの事を本当はとても優しい人だと言っていた。


 その後、みゆきはキラリちゃんと武士君と一緒に夕飯の買い出しに行った。

 夕飯の買い出しは当番制で、今日はたまたまキラリちゃんと武士君だった、それでみゆきもこれからこの施設にやっかいになろうと思って、この施設のお手伝いをさせて貰っている。

「みゆきちゃん。ここは良いところだよ。みゆきちゃんもどこにも当てがないならここにいなよ」


「本当だね。ここにいる人みんないい人ばかりだね。あのまどかさんって言う人以外は」


「まどかさんはいい人だよ。みゆきちゃんまどかさんに何かされたの?」


「みゆきのヌードモデルを強要された」


「えっ!?マジで?」


「何かメグさんの話によると、まどかさんは絵の事になると見境がなくなるみたい」


「あのまどかさんはピカソを超えるほどの絵を描いて、ここの施設の借金を返済させようと躍起になっているからな」


「ここの施設って、そんなに借金があるの?」


「うん。その事をメグさんに言ったら、あなた達が心配しなくても良いから、と言って流されたけれどもね」


 そこでみゆきは考えた。ここの借金をみゆきの力で返済させようと。

 みゆきは手持ちに三百万円のお金を持っている、これをメグさんに渡そうとみゆきは考えた。


 お買い物はとある小さな商店街で買う事になっている。

 キラリちゃんに今日のメニューを聞いてみると、カレーライスと言っていた。

 ちなみに作るのは今日はメグさんが作ってくれると言っていた。

 みゆきは思ったんだ。あの人は人間の姿をしているけれど、ただの人間ではないと。

 キラリちゃんにメグさんの事を聞いてみると、優しくていい人だと言っていた。

 キラリちゃんは気づいているかどうか分からないがあの人は人間ではない。

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