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お母さんを求めて冥界へ!

みゆきのお母さんがキャリアスにとらわれているなんてどういう事なのか水晶玉に問いただしてみる。キャリアスはカタストロフィーインパクトを阻止したみゆきとみゆきの弟の貴之に恨みを抱いているらしい。その報復らしい。キャリアスは世界を絶望の域に陥れようとした張本人だ。絶対に許してはいけない。


 みゆきはお母さんを助けるためにキャリアスの居場所を特定しようとした。しかしキャリアスがどこにいるのか分からない。もっともっと念を押してキャリアスの居場所を特定しようとした。でもキャリアスの居場所は分からない。分かることはキャリアスの野望が果たされてキャリアスは醜い笑みを浮かべて笑っているところだった。


 この事をメグさんに相談した方が良いかもしれない。でも今日はもう遅い、けれども一刻を争うときだ。キャリアスの野望を止めなくてはならない。そうしないとみゆきのお母さんはいなくなってしまう。


 時計を見ると、午後十一時を示している。メグさんの所に行こうとすると、メグさんはソファーに横になって眠っている。疲れているのだろう、いつも引きこもりの生徒にパソコンでメールやラインでエールを送っているから当然かもしれない。でも今は一刻を争うとき、メグさんには悪いが起きてもらうことにした。


「メグさん。メグさん」


 そう言いながらメグさんを揺さぶり起こした。


「うーん。どうしたの?みゆきちゃん」


「みゆきの予言何だけれども、みゆきのお母さんがキャリアスに捉えられているみたい何だ。それに水晶玉で居場所を特定しようとしても出てこないみたいなの?」


「みゆきちゃんのお母さんがね、それなら、流霧さんに相談した方が良いと思うけれど」


「流霧さん!」


 それを聞いてみゆきはゾッとした。確かに流霧さんなら力になってくれるかもしれないけれど、みゆきは流霧さんの事が苦手だった。でもそんな事を言っていられない。早速みゆきはみゆきの全速力で流霧さんの家に向かい始めた。


 流霧さんの家に到着して、家と言うよりも、教会何だけれどもここに流霧さんがいる。


 鉄柵の前に呼び鈴がついている。その呼び鈴を恐る恐る鳴らして、しばらくして流霧さんは出てきた。


「あなたは確かみゆきとか言ったね、いったいあたしに何のようかしら?」


「みゆきのお母さんがキャリアスに捉えられているのだけれども、みゆきの水晶玉ではどこにいるのか分からずに、メグさんから聞いて、その事だったら、流霧さんに相談した方が良いと言ってここまで来ました」


「キャリアス、あいつはこの世の者ではなかったわ。もしかしたら、あなたのお母さんを冥界に連れて行ったのかもしれないわね」


「冥界?どこですかそこは?」


「死者が行く所よ!」


「死者が行くところ?じゃあお母さんは死んでしまったの!?」


「そうかもしれないわね!?」


「そんな~!」


 みゆきは力を無くしてその場でひれ伏せた。


「でも冥界に行く事は私の力で出来るわ。もしかしたらキャリアスの奴、あなたのお母さんを冥界に連れて行って、あなたに予言させて冥界に来させようとする罠かもしれないわよ。言って置くけれど、生きた人間が冥界に入ったら二度と戻って来られないわ」


 希望が見えたと思ったのに、みゆきは体から力が抜けて、その場でひれ伏した。


「でもあなたのそのホーリープロフェットの力を使えればあなたのお母さんを連れて戻って来られるかもしれないわよ」


「本当に?」


 一筋の光が見えてきてみゆきは萎えていた気持ちが復活して、みゆきは立ち上がった。


「でもあなたのそのホーリープロフェットの力があるからと言って連れて戻ってくる確率は限りなくゼロに近いわ」


「良い、僅かな可能性があるなら、みゆきは冥界に行くよ」


「私にはこれはキャリアスの罠だと思うのだけど、それでも行くの?」


「罠でも何でも言い、みゆきはキャリアスの野望を食い止めるために、みゆきはお母さんを取り戻して、またお母さんと共に二人で生活がしたい」


「分かったわ。そう言うならもう止めはしないわ」


 みゆきはここで覚悟を決めなければならない。そう思った直後、車がこちらに向かって走ってくる。何だろうこんな真夜中に。良くその車を見てみるとメグさんのワゴン車だった。車が止まってワゴンのエンジンを切るとメグさんとみゆきの弟の貴之が中から出てきた。


「貴之、それにメグさん」


「冥界に行くならみゆきちゃんと貴之君で言った方が良いと思って連れてきたのよ」


「どうして貴之が?」


「貴之君が真夜中にあたしの家に訪ねてきたのよ。それに目的はあなたと同じだって」


「貴之も来てくれるのか?」


「ああ、お前の母親なら俺の母親でもあるからな」


 みゆきはそんな貴之を抱きしめた。


「ちょっと姉ちゃん。苦しいよ」


「だって嬉しいのだもん。あなたが入れば冥界にいるキャリアスなんて敵じゃないわ」


 そこで流霧さんが「あなたは甘いわ、冥界は生きた人間が行くべき所ではないわ。たとえあなた達がホーリープロフェットの力を持ったとしても」


「流霧さんは言ったよね、限りなくゼロに近いけれども、貴之と一緒ならゼロを一にする事が出来るわ」


「本当にあなたはおめでたい頭をしているわね。でも本当にあなた達ならキャリアスの罠かもしれないけれど、お母さんが見つかるかもしれないわね」


「きっと見つかる。みゆきには貴之がついているもん。それにみゆきのことを貴之はお姉ちゃんって呼んでくれたしね」


 貴之は恥ずかしそうに瞳をうつむかせている。


「とにかく流霧さん。みゆき達を冥界に連れて行って」


「別にそれは良いけれども、戻って来られなくても知らないからね。さあ、二人ともついてきなさい」


 みゆきは気を引き締めて、流霧さんの後についていった。本当に流霧さんの言うとおりキャリアスはカタストロフィーインパクトを阻止されたことの恨みかもしれない。でもみゆき達はそれでもキャリアスからお母さんを助けに行きたい。


 それにキャリアスを野放しにしていたら、また新たな第二のカタストロフィーインパクトを存在させるかもしれない。でもみゆき達はそんな事は絶対にさせない。


 みゆきと貴之がいれば大丈夫。みゆきと貴之でカタストロフィーインパクトを阻止した中だもん、貴之がいればみゆきは百人力だ。


 キャリアス待っていろよ、みゆきと貴之でお前が捕らえているお母さんを絶対に取り戻して見せるのだから。流霧さんの言うとおりこれは罠かもしれない、それでもみゆきと貴之は流霧さんが言う冥界に行くのだ。これは世界のためでもあり私達の事でもあるのだ。


「貴之、あんたの水晶玉はあるの?」


 すると貴之は漆黒の水晶玉を私に見せつけた。以前よりも野球ボールのように大きくなっている。みゆきと貴之は流霧さんの後についていく。流霧さんについて行くと、教会の外に出て、真っ暗な森の中を歩いている。流霧さんは懐中電灯が無くても、この暗闇の中見ることが出来るみたいだ。みゆきと貴之は流霧さんの後に送れないようにみゆきのホーリープロフェットの源である水晶玉を明かり代わりにしてついて行く。


 ボロで、今にも壊れそうな鳥居に辿り着き、流霧さんが立ち止まる。そして流霧さんはその鳥居の前で手を広げて言う。「冥界の扉よ!今こそ開け!」そう言うとボロで、鳥居の向こうに真っ黒な闇が漂っていた。


「さあ、冥界の扉は開いたわ。さあ、覚悟があるなら行きなさい」


 みゆきには分かる、この向こうにキャリアスと捕らえられたお母さんがいることを。この冥界の中なら水晶玉はお母さんを導いてくれるだろう。待っていてお母さん、今行くからね。すると貴之がみゆきの右手を左手で繋いだ。


「貴之!?」


「姉ちゃんは怖くないの?帰って来られる保証はないのだよ」


「みゆきだって怖いよ。でも、みゆきはホーリープロフェットの使者である者だから」


「僕はイービルプロフェットの使者何だ。つまり僕はお姉ちゃんの正反対で邪悪な力の持ち主何だ。それにホーリープロフェットは聖なる使者であり、イービルプロフェットは邪悪な使者でもあるのだ」


「貴之は邪悪なんかじゃ無いわ。貴之もみゆきと同じ目的でお母さんを探しに来たのでしょ」


「僕は一度、キャリアスに魂を売った人間でもあるのだ。僕はお母さんに捨てられた、それに赤ん坊の時に、僕に添えられていたのが、このイービルプロフェットの漆黒の水晶玉だったみたいなのだ」


「お母さんはあなたを捨てたのじゃ無い」


「どうしてそんな根拠も無い事を言えるのだ?」


「貴之、あなたとみゆきが一つになったときの事を思い出して」


 そう。貴之と一つの水晶玉になったとき、みゆき達のお母さんは現れてくれた。それに貴之に申し訳ないような気持ちでいっぱいだった。それにみゆきにも。だから貴之、お母さんがこの水晶玉をそれぞれもらっていなければ生きては生けなかったわ。


 貴之は目を閉じてその漆黒に染まった水晶玉を胸に確かめている様子だった。


「確かにそうだね。僕達はこの水晶玉が無ければ生きていけなかった。でもひどいことはあったけれど」


「みゆきもひどい目に遭ったよ。でもメグさんって言ういい人に出会えて、今では施設でキラリちゃんや武士君とお友達になれるようになったよ」


「でも僕には裏切られる人間ばかりだったよ。それに僕は何人もの邪悪な心の人を殺した」


「みゆきも何人も人を殺してきたよ。それに友達にも裏切られたりもした。みゆきの正体を知って」


「お姉ちゃん・・・」


「貴之、絶対にお母さんをここに連れてきてそうしたら、一緒に暮らしましょうよ」


「僕はお姉ちゃんにひどいことを何度もしてきた。リリィを殺したときだって・・・」


 みゆきはそれ以上言うなと言わんばかりに、貴之の唇に指を添えた。


「・・・」


「さあ、行こう、お母さんを助けにそれにあなたを操ったキャリアスのとどめを今度こそ刺しに行こう」


 冥界の扉は今開かれた。あっちの世界に行ったらみゆき達は戻って来られなくなってしまうかもしれない。それに死ぬよりもひどい目に遭うかもしれない。でもみゆきと貴之は行く。みゆき達のお母さんを助けに行くために。


 みゆきにはこの真っ暗な闇の向こうにキャリアスとそのお母さんを水晶玉に感じることが出来る。本当に嫌な予感しかしない。でも行くのだ。みゆきと貴之は行くのだ。お母さんを助けに。貴之は言っていた。あの時の貴之を抱きしめた温もりをまた感じたいと。


 みゆきもその気持ちは同じだ。みゆきの右手が貴之の左手を握りしめている。これがみゆき達姉弟の絆だ。その絆はそんじょそこらの偽物の絆とは訳が違う。


 鳥居の向こうは流霧さんが開いた真っ暗な闇の中だ。もしかしたらみゆき達はそこで死んでしまうかもしれない。それでも行くのだ。お母さんの愛情を取り戻しに。


 真っ暗な闇の中にお母さんの声が聞こえる。


『みゆき、貴之、来ちゃダメよ。これはキャリアスの罠なのよ』


「聞こえた。貴之」


「うん聞こえた確かにお母さんの声だ。やっぱりキャリアスの罠であったか」


「みゆきは罠でも飛び込みに行くよ。流霧さんの言うとおりみゆき達が行ったってお母さんを連れ戻す可能性はゼロに近いけれどみゆきは行くよ」


「僕も同じ気持ちだよ。みゆきお姉ちゃん行こう。お母さんを僕達のお母さんを助けに」


 やはりキャリアスの罠であったか、みゆきと流霧さんの予想は当たったみたいだな。でも正直怖い。でもみゆきはお母さんを助けに行かなくてはいけない。


 みゆきはお母さんに凄くかわいがって貰った。その時の温もりをみゆきは覚えている。今度こそみゆきと貴之とお母さんと三人で一緒に暮らしたい。


「行くよ!貴之!」


「うん、みゆきお姉ちゃん」


 みゆきと貴之はその手を繋いで、流霧さんが開いた冥界の扉に入っていった。入った瞬間お母さんの声が聞こえる。


『来てしまったのね、二人共』


「今、行くから、お母さん」


「僕も行くから」


『二人とも、私のせめてもの贈り物です。これは聖なる者しか使えない精霊石です。大事に至った時はこれを使いなさい』


 するとエメラルド色の石が私達の前に現れた。


「精霊石?」


 みゆきが掴むと、凄くパワーがみなぎってくるような気持ちに駆られた。


「貴之も感じるよね。この精霊石の力が!」


「うん、みゆきお姉ちゃん。これがあれば僕達は百人力だよ」


 そうしてみゆきと貴之はお母さんから精霊石を手に入れて、冥界の奥深くの闇の中へと落ちていく、この先には何があるのか?でも感じる聖なる力のお母さんと邪悪なエナジーのキャリアスの気配が。


 みゆきと貴之は冥界の地面に着地して、そこにはおびただしい魑魅魍魎の気配が凄くする。


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