アラタトの長の試練と真実
「神はみゆき達を見捨てたりしない」
みゆきはアラタトの長の瞳の奥に潜んでいる希望の炎が見えてきた。アラタトの長達は先ほど死んだ目をしていた。でもみゆきと出会えた事により、その光を取り戻した感じだった。
「みゆきとやらよ。我々と戦ってはくれぬか?数日後にカタストロフィーインパクトは今度はアラタト事、地球に衝突させるつもりだ。そうなったら我々も地球の民もみんな消えてなくなってしまう。お主達が最後に頼れる者じゃ」
「任させてください。それよりもみゆきの仲間達も中に入れてもよろしいでしょうか。彼女たちもみゆき達の力になってくれます」
「ふむ、良いぞ仲間は多い方が良い」
それを聞いてみゆきは流霧さんとメグさんをみゆきがいる長が座る玉座の元へと呼びに行った。長は言っていた。アラタトの技術は凄い者だと。その技術と、みゆきのホーリープロフェットとメグさんの潜在的な吸血鬼の力と流霧さんの魔法があればみゆきはまさに鬼に金棒である。
でも今回来るカタストロフィーインパクトが来るのはどのように来るのかみゆき達には予想がつかなかった。アラタト人達もその瞳に希望の光がともり、戦うことを覚悟したようだ。アラタトの人達は人工で動く蜂などの開発を何体も作っている。とにかくカタストロフィーインパクトが来るのはみゆき達もアラタトの人達にも分からないのだからわずかでも良いから戦力を培っている。
みゆきもメグさんも流霧さんもテンションが上がっていた。アラタトの民にみゆき達に力を貸してくれるからだ。
みゆきは長に呼ばれた。
「みゆきと言う女勇者よ、こっちに来てはくれぬだろうか?」
「はい。何でしょう」
流霧さんもメグさんも共にみゆきの後についていく。
「すまぬがみゆき一人に来ては貰えぬだろうか?」
そう言って流霧さんとメグさんは下がって、メグさんが何か大切なお話があるみたいね。みゆきもそう思った。長の表情がいつもと違うからだ。
みゆきは黙って長の元へとついて行く。何が始まるのか少し緊張していた。すると長は足を止めて、みゆきの頭に手を乗せた。
「そうか、お主にはアリウスという姉弟がおるのじゃな」
「姉弟ではないと思いますけれど、どうしてアリウスの名前を・・・」
「お主の頭の中身を少しだけ覗かせて貰ったのじゃ」
「頭?」
「それにお主には母親と生き別れになったのじゃろう。その母親は、邪悪に染まってしまったアリウスを殺そうとしたが出来なかったみたいじゃ」
どうやらこのアラタトの長は、みゆきの頭を覗くことで記憶はおろかその経緯まで見えるようだ。そうだったのかみゆきの弟ってアリウスは言っていたけれど本当の事だったのか、それよりも邪悪に染まってしまったと言うのはどういうことなのか?
それに母は人間だが、私とアリウスの父親はアラタトの民だと言っている。その父親こそがアラタトを救う者だが地上で消えてなくなり、誰からも私の母親からも見えなくなってしまったと言っている。みゆきはその父親の末裔なのだと言っている。
「アラタトの戦士であるのはみゆきだけなんですか?」
「その通りじゃ。じゃが、今のお主にはカタストロフィーインパクトを食い止める力はない。もし我々を本気で救いたいと言う気持ちが残っておるのなら、試練を受けてはくれぬか?」
「その試練を受ければ、アラタトの人達も地球にいる人間も救うことが出来るのですか?」
「確定とまでは行かない。ただわずかながらに可能性が上がるだけじゃ。それにその試練は命をかける試練になる。どうせカタストロフィーインパクトが起きればお主達も我々も消えてなくなってしまう。この試練をお主はカタストロフィーインパクトから救いたくば、我々の試練を受けざるを得ない」
みゆきには迷っている暇などなかった。「受けます」ときっぱりと毅然とした態度でみゆきはその試練に乗ることにした。みゆきがそう断言すると、長から水色の光の玉を召喚した。
「それは何なのです」
「わしも昔は戦士だったんじゃよ。アラタトの、でもここまで年を取ってはもう以前の様な力は持っていない。じゃからわしの力をお主、みゆきと申したか。受けて貰うぞ」
長はみゆきの胸にその青い光の玉をねじ込むように、体内に入れた。
あれ、何でもないと思いきや、みゆきがおかしくなるほどの体がバラバラになりそうな程の物が、頭にリフレインしてしまった。目の前にはアリウスがリリィの頭をもぎ取って、アリウスは不適に笑っていた。
どうなっているの?みゆきはどうしてしまったの?みゆきは叫ぶしかなかった。みゆきの頭の中がパニックに陥ったようにみゆきは精神を壊されそうになってしまった。これが試練なのか?本当だ本当に凄い。もしこの試練をみゆきが合格したらみゆきはわずかでもカタストロフィーインパクトを食い止めるチャンスが貰える。でもこの精神がプッツリと切れそうなほどの心の痛みは尋常じゃない。
みゆきの大切な物が。それに精神だけでなく肉体にも来てしまっている。額から血が飛び散ってきて、みゆきの心と体がバラバラに砕けそうになっていた。覚束ない意識で目の前を見てみると、長が目を閉じて黙っていた。
何だよ。頑張れの一言でも言えないのかよ。ここで分かったことだがみゆきは変わっていないことに気がついた。みゆきは単に力を持っただけで、その力で自分より弱い物を倒してきただけだったからだ。カタストロフィーインパクトを阻止するにはこれを乗り切るしかない。そうしないとみんないなくなってしまう。みんなが消えていなくなってしまう。キラリちゃんや武史君にメグさんに流霧さん。
もはや叫ぶことすら出来なかった。心では叫んでいても声に出ないほどみゆきは苦しんでいる。この試練どうやら一筋縄ではいけないみたいだ。この試練を乗り切ればわずかながらでもカタストロフィーインパクトを壊す事が出来るのだ。そう思うとみゆきに安らぐ余裕もないようにみゆきの心と体をこの長の試練は迫ってくる。
もうみゆきしかいないんだ。みんながいなくなってしまったら、カタストロフィーインパクトはどうなってしまうのか?考えただけで怖い。みゆきは負ける訳にはいかない。
そうだ。負けるわけにはいかないんだ。みゆきは体の痛みと精神的苦痛を耐え忍ぶように叫び続けた。そうだ。みゆきは叫ぶしかないのだ。叫んで叫んで戦うしかない。この試練を乗り越えなければアリウスはおろかカタストロフィーインパクトを防ぐことは出来ない。
そしてみゆきは覚醒して、髪が白く染まり、白き炎を放出させた。それでも苦痛は止められずにみゆきは叫び続けて白き炎をまき散らした。これ以上はみゆきは限界だ。でも負けるわけにはいかないんだ。
アリウスの野望はカタストロフィーインパクトを衝突させてアラタトもろうとも地球をも滅ぼすつもりだ。そうはさせない。どうやらみゆきは意識は覚束ないが負けるわけにはいかない。この試練を乗り越えてキラリちゃんや武史君やメグさんに流霧さんもいなくなってしまう。せっかくみゆきは一人じゃないのにここで死んでしまったら、みゆきは孤独死になってしまう。そうはさせない。みゆきはこの試練を乗り越えてみんなの命を助けるんだ。
もう限界だった。みゆきはこのまま死んでしまうのか?
長が「もうこれ以上は限界だ」そう言ってみゆきの胸元に触れて先ほどの青き玉を取り除こうとしたのか、でもみゆきはそれを拒むように長の手を振り払った。みゆきがこの試練を逃したら、みんなが死んでしまう。それだけはダメだ。みゆきはホーリープロフェットの使者だ。この試練でどんな力を得ることが出来るのか分からないがみゆきは負けるわけにはいかない。
そうだ。みゆきがこの試練を放棄することはみんなの死を意味する。みゆきは負ける訳にはいかないんだ。
「負ける訳にはいかないんだ!!!」
そう叫ぶとみゆきの心の奥底から得たいのしれない力が沸き起こってきた。何だ。この力は?
「みゆきよ。よくぞわしの試練に打ち勝った。もうお前に教える事など何もない」
「ありがとう。アラタトの長さん。みゆきはこれなら、アリウスの野望を食い止めることが出来る」
「じゃが油断しては行けぬぞ。確かにお主は最強の力を手にした。でもこの次のカタストロフィーインパクトを防ぐにはお主の力にかかっている」
「分かりました」
私はメグさんと流霧さんがいる部屋へと戻っていった。
「あら、みゆきちゃん。長さんから何か試練を受けたようね」
「どうしてメグさんに分かるのですか?」
「私も流霧さんに吸血鬼になるときに流霧さんから試練を受けたことがある。その時の私は試練を終えたときの感じに似ていたからよ」
「そうなんですか?」
流霧さんに問いかけてみる。
「そうだ」
相変わらず素っ気ない感じでみゆきに言いかける流霧さん。続けて流霧さんは、「そろそろカタストロフィーインパクトがアラタトを目がけてそれは地上にも影響を及ぼしに来るよ」
そうだ。そろそろカタストロフィーインパクトが私達に迫って来るわ。
そんな時である。一人のアラタトの民が、「みんな大変。外に出て空を見上げると気味の悪い目が現れたわ。アラタトの民いやアラタトはアラタトの民にしか見えないのにおかしいわ」
私と流霧さんとメグさんはアラタト人が言う外に出て空を見上げるとマブーの目が私達を見ていた。
「これはどういう事なの。アラタトの大陸は私とサングラスをかけた流霧さんとメグさんにしか見えないはず」
マブーの目が私達の頭上におびただしいほど現れた。本当に気味の悪い目をしている。マブーの目に見つかった時、空からアリウスの気配がした。あの白い光がメビウスだと感じた。
「アリウス、今度こそけりをつけよう」
私は白き炎を体全体に燃やし続けて、アリウスを迎え撃つ準備をした。
そしてアリウスは私達の目の前に現れた。
「ふっふっ、マブーの目がここまで見させることが出来るまで相当苦労はしたがな」
「アリウス勝負だ」
「君は懲りないのかな?僕に勝ち目なんてないと分かっていながら僕に勝負を挑もうとするとは」
「前のみゆきとは違うところを見せてやる」
長がみゆきに青白き玉を胸にねじ込んだ力だろうか今のみゆきならアリウスに勝てると確信した。
「はあああ」
そう言ってみゆきはメビウスに攻撃を仕掛けた。
「何だ?この力は?」
「以前のみゆきだと思っていると痛い目に遭うよ」
「くそ、どうやら差し詰めアラタトの民から力を与えられたみたいだな」
「そんな事を推測している場合じゃないぞ」
みゆきはアリウスに対して手加減などせずにパワーアップした純白の炎を放った。
「くそ!」
「アリウス降参しろ、そしてこのアラタトから消えるか、みゆきに殺されるか一つかにしろ」
「ならば、こっちもフルパワーで行くぞ」
くっ、アリウスがフルパワーで来るのか、ここは少しでもカタストロフィーインパクトを防ぐために負けられないのに。
「みゆきは負けるわけにはいかないんだ。こっちもフルパワーで行くぞ」
するとみゆきの頭の中から懐かしい声が聞こえてきた。
「みゆきよ。アリウスを殺してはいけません」
「誰?」
みゆきが言うと、「私はあなたとアリウスの母親です」
「お母さん?」
みゆきは仕方なくフルパワーでやったらアリウスは死んでしまうので手加減をした。
「ふん、お前の力はこの程度の物か?」
アリウスはみゆきが手加減していることを知らない。
「これで終わりだ」
アリウスは本気でみゆきの事を殺そうとしている。どこから聞こえてきたのかみゆきのお母さんはメビウスを殺してはいけないと言っている。
「どういう事よお母さん」
みゆきはどこから聞こえてくるのかみゆきのお母さんに聞いてみる。
「カタストロフィーインパクトはあなたの弟のアリウスとみゆき、あなたにかかっているのよ」
「それってどうゆう事よ、アリウスはみゆきの事を本気で殺そうとしている」
「アリウスは強力な力であなたに力を与えた長が言っていたように強力な力で操られている」
「操られている?」
するとアリウスは「何をためらっている油断しているとはずいぶんと余裕があるみたいじゃないか」みゆきを愚弄するように言うアリウス。
「アリウス、みゆきはあなたをお母さんから殺すなと言われたわ」
「何!?」




