神に見捨てられたアラタトの民
さあ、今だ。私もリリィもメグさんも流霧さんも尋常じゃない力を持っている。だから十二メートルを一秒で走るなんて朝飯前だ。
しかしそこでアクシデントがあった。走っている途中でリリィが躓いて転んでしまったのだ。やばいよ。マブーの目に見られてしまう、そんな時リリィはアラタトに行ける兵器を私に投げつけた。このままリリィを野放しにしてしまったらリリィはさらわれてしまう。そんな時であるみゆきがリリィの兵器を受け取ると腕を引きちぎられそうな勢いで私の手を引っ張った。
そしてマブーの目玉に見つかって、リリィはどうなったか分からないが、流霧さんは一刻の猶予もないと言っている。ここでリリィをどうして見捨てたんだって流霧さんに大声で言いそうになったが、何とかこらえてメモ用紙にそれを書いた。
すると流霧さんは仕方がないことだと紙に書いて悔しそうな顔をしていた。そうだよね。仕方がないことなんだよね。リリィがマブーの目に見つかってアリウスにさらわれたてしまったのかもしれない。
リリィゴメン。そのようにして呟き、頭上を見ると、マブーの目が消えて、外を見てみると、リリィの姿はなかった。
「もう喋っても大丈夫みたいね。そろそろ、この地点にアラタトが通るわ、それでこの兵器でアラタトに行くわよ」
その兵器と言うのは新聞紙に包まれていて、丸い銀色の玉だった。こんな物をリリィは作っていたのか。リリィがいなくなったのは痛手だが流霧さんの言うとおりそれは仕方がないことである。
「さあ、メグ、みゆき、このビルの屋上に行くわよ、早く行かないと間に合わなくなってしまうわ」
みゆきとメグさんは見つめ合ってアイコンタクトを取って流霧さんの言うとおりだとビルの屋上にへと向かっていった。ビルの屋上に辿り着くと、マブーの目は消えていて、きっとリリィを確保してみゆき達が必要なくなったのでマブーの目をなくしたのだろう。そして空を遮ってアラタトの巨大な大陸が浮かんでいた。
「あれがアラタト」
凄く大きくてこんな大きな物が空に浮かんでいるなんて知るよしもなかった。
そして流霧さんはリリィが作ったアラタトに行ける兵器である銀色の玉を掲げた。するとみゆき達は空にではなくアラタトに吸い込まれるのように飛んでいった。
「アラタトの大陸に行くわよ」
アラタトの大陸にたどりついて、そこは見る物すべてが初めての物だった。たくさんの建物があり、その中央に城の様な物がある。
「アラタトに来たのは良いけれど、みゆき達はどうすれば良いの?」
「とにかくアラタトの民がいるかもしれないわ。私には感じるわ。アラタトの民がいると、このサングラスをかけている間はアラタト人の気配を感じるわ」
何か希望が見えてきた気がしたが、リリィは大丈夫なのか?とにかくみゆきは人類も心配だがリリィの方も心配だ。アラタトの大陸には地面に草が茂っていて、虫や鳥などが住んでいる。それに虫や鳥と言っても、図鑑でも見たことのない生き物ばかりだ。何か気色悪いし流霧さんはそんな知らない生き物に触れないようにしろと言われた、何か毒を持っているかもしれないからだと。
とにかく見たこともない虫や見たことのある蛇なんかがいた。それはコブラの様な「しゃー」とみゆき達を威嚇している。それに凄く大きくてその蛇たちに囲まれてしまった。五六匹いる。
「これは地上でも見るキングコブラよ、こんな所にこんな生き物がいるなんてまるでサファリパークを車ではなく生身の体で行くような事は初めてだわ」
「どうするんですか?キングコブラって普通のコブラよりも大人しいって聞くけれど、噛みつかれたら死に至るって図鑑で見たことがあるよ」
「でもここにいるキングコブラ達は私達を威嚇しているところを見ると・・・」
するとメグさんは目にも映らない早さでキングコブラ達の喉元を掴みあげて五六匹全部。そしてメグさんはキングコブラを全部握り潰した。それは何でも殺生な気がするが、みゆき達は蛇にかまっている場合じゃないんだ。するとメグさんが握り潰したキングコブラは機械の様な物だった。
「このキングコブラはアラタトの技術で作った生き物みたいね」
メグさんがそう言って、アラタト人が作り出したと言われるキングコブラを投げ捨てた。
続けてメグさんは、
「私達監視されているかもしれないわ!」
みゆきもメグさんと流霧さんの言うとおり私達は監視されているのかもしれない。本当にそうだったら、アラタトの人達にみゆき達は敵ではないことを知らしめる必要があるかもしれない。
「とにかく、あの中央にある城の様な建物に向かってみましょう。時間は一刻の猶予もないのよ」
そうだ。カタストロフィーインパクトが衝突するまで一週間を丁度切ったところだ。それまでにアラタト人の知識でカタストロフィーインパクトを何とかしないといけない。そしてみゆき達は進んでいく。
流霧さんを先頭に後ろにはメグさんが控えている。とにかく感覚を研ぎ澄まして危険はないか探るしかない。また蛇の機械が現れるかもしれない。それに感覚を研ぎ澄ましてみるとやはり何者かに見られている様な気がする。
そうだ。ここでアラタト人はどこにいるのか?みゆきのホーリープロフェットで占えば良いんだ。二人にそう言って占ってみると、少なからずだけど、アラタトの人間は実在している。アラタト人はさっきの蛇を殺して怒り狂っている。そう言うとメグさんは「悪いことしちゃったね」と舌を出してごまかした。
そんなおどけている場合じゃない。私達は、アラタト人の知識を借りて、カタストロフィーインパクトを阻止しなければならない。
次に現れたのが大きな一メートルはある蜂だった。
ここでみゆきのホーリープロフェットで占ってみると、アラタトの人達はみゆき達の事を凄く警戒しているそうだ。この蜂もメカだと言うのがみゆきには分かる。それにその蜂は尾に銃の様な毒針を持っている。それに先ほどの蛇と同じようにアラタトの人達は私達の事を凄く警戒している。
この蜂にはアラタト人達はみゆき達の事が見えているみたいだ。
「流霧さん。メグさん。手を上げよう、とにかくアラタト人達の警戒を解こう」
みゆきがそう言うと、二人は素直に手を上げてみゆきも手を上げてアラタト人達の警戒を解こうとして動かなかった。
一メートルの大きな蜂はブーンと大きな羽を動かして、建物の中へと入っていった。
そこでみゆきが「ついてこいって言っているのかもしれない」
蜂は飛びながら、ゆっくりと奥へと進んでいった。みゆき達はアラタトの人達に害はないと言わんばかりに、手を頭に乗せて、蜂が進む方向へと進んでいった。ここはアラタトの中央に当たる城のような建物だ。よく見ると粘土で出来ているのか、鉄や鋼などで作られているのか分からなかった。
そして蜂はゆっくりとみゆき達を案内するように進んでいる。すると闘技場の様な所に辿り着いた。闘技場に辿り着くと、外から入ってきた扉がゆっくりと落ちて、みゆき達は閉じ込められてしまった。
すると外線放送が流れて、「お前達は何者だ?」と聞いてきた。だからみゆきは、
「みゆき達は、カタストロフィーインパクトを防ぐためにアラタトのあなた達の力が必要になったの、だから力を貸してくれないかな?」
「カタストロフィーインパクト?そんな物は俺達に関係はない。神は俺達を見捨てたんだ」
すると正面の扉が開いて、恐竜であるティラノサウルスが現れた。ズシンズシンと大きく足を地面に踏みならしながら。そして私達を案内役をさせた蜂をティラノサウルスが大きな爪で引き裂いた。
「流霧さん、みゆきちゃん。ここはどうやら戦うしかないみたいだね」
メグさんがそう言って、ティラノサウルスに大きく跳躍して、跳び蹴りをかましたところ、その体が傾いて倒れてしまった。しかしティラノサウルスはすぐに立ち上がり、みゆき達はとりあえずみんなバラバラになった方が良いと流霧さんの戦法で戦うことになった。流霧さんはファイヤーと叫んで、手から炎を出した。するとティラノサウルスは正体を見せて、実はメカだった。
「みゆき達はこんな所で油を売っている暇なんてないんだ」
そう言ってみゆきは覚醒した。みゆきはホーリープロフェットの使者だ。かわいそうだけど、このティラノサウルスのメカを壊すしかない。
「はああああああ!!!」
と髪が真っ白に染まり、みゆきは叫びながら、ホーリープロフェットを放出させた。するとメカであるティラノサウルスに白き炎を浴びせた。するとティラノサウルスはまともにみゆきの炎に包まれて、機械ごと溶けてなくなってしまった。
みゆきはホーリープロフェットを解放して元の姿に戻った。
「アラタトの民の者達よ、我々は敵ではない。姿を現し出てきてはくれまいか?」
と流霧さんは叫ぶ。
するとコロシアムのティラノサウルスが出てきた門から、一人の杖をついた老人が現れた。
「お前達はどうやってここまで来た?」
「あなた達と同じアラタトのリリィと言う子からアラタトに行けるメカを作ってくれた。それに元々、アラタトの民はここにいるみゆきにしか見えないんだ。それにこの二人はアラタトが見えるサングラスをかけているから見えるんだ。もしサングラスをかけていなければあなた達に気づくことも出来ないでしょう」
「先ほど、カタストロフィーインパクトを何とかしたいために来たと聞いたが、どうしておぬし達にカタストロフィーインパクトを知っておるのじゃ?」
「地上にいたアラタト人であるリリィって子から聞いた」
「下界にもアラタトの民は残っているのかね?」
「ええ、その子はアラタト人であり、地上ではみゆきともう一人の少年しか見えない。この流霧さんとメグさんはアラタトが見えるサングラスをかけているために見えるんだ」
すると老人はここの長か?ティラノサウルスが出てきた、中央の門から次々とみそぼらしい服に身を包んだ者達が一人十人五十人ぐらい出てきた。みゆきは思った。本当にアラタトの民だと。よく見るとリリィに似ているが、みんな目が死んでいる様な感じだった。
そして長だと思われる老人は目を光るようにみゆき達に聞いてきた。
「先ほどの戦い凄く見事なものじゃった。もしかしたら、神の試練に我々は打ち勝つことが出来るかもしれない?」
長が言うと、『それは本当ですか』『私達は生き残ることは出来るんですか』『希望が見えてきたぞ』となどなどとみゆき達の事を期待している様子だった。
そしてみゆき達は、駆け足でアラタト人の者達の所へと歩み寄って行った。すると先ほどアラタト人達は死んだ目をしていたが今ではそれがとれたように、輝かしい目をしている。そこまで期待されてしまうと緊張してしまうが、リリィの仲間であるアラタト人が希望を持てるようになったのは良かったことかもしれない。
とりあえずアラタトの民に会えたのは良かったが、みゆき達はリリィを失ってしまった。きっとマブーの目に見つかり、アリウスにとらわれてしまったのかもしれない。リリィ・・・。拳を小さく握った。
でもアラタトの人達は生き残っている。この事をリリィが知れば、きっと喜ぶだろう。そうリリィが入ればの話だけどね。
みゆきは長が二人きりで話したいと言っていたから、みゆきは長がついてこいと言っていたので言われたとおり長の行くところについて行った。
「どこに行くんですか?」
「お主はホーリープロフェットの使いじゃな」
「多分そうですけれども、それが何か・・・・?」
「わしはアラタトの技術で千七百年は生きている。千年前我々は神の試練であるカタストロフィーインパクトを防ぐことは出来ず、多くのアラタトの民を亡くした」
「どうして神はアラタトに試練を与えたのです?」
「それは神が我々アラタト人が怠慢になっていないかを調べるために神はアラタトに試練を与えたのじゃ」
「でもアラタトは平和な国だと聞いています。だから怠慢ではなかったはずなのじゃないですか?」
「人もアラタト人も当たり前の平和にすがりついていると、怠慢になり、愚かな者へと進化してしまう。じゃから神は千年に一度のアラタトの試練を与えることにしたのじゃ。千年前、アラタトにはお主のような、ホーリープロフェットの強者がおった。そのものを神の試練であるカタストロフィーインパクトを破壊しに行ったのじゃが、力不足で、カタストロフィーインパクトを止めることは出来なかった。カタストロフィーインパクトは千年に一度でどのような形で現れるのか分からない」
「それで千年前はどんなカタストロフィーインパクトだったんですか?迫り来る異星人からの機械であった。先ほどはあのティラノサウルスの様な物を何体も何体も攻め込ませて、我々はホーリープロフェットの使者と共に戦ったが、勝つことは出来なかった。じゃから、我々は神に見捨てられた」
長が私の目をジッと見つめる。




