しんがを極めたホーリープロフェット
いつものようにメグさんは朝ご飯を作ってくれた。メニューはトーストに目玉焼きにソーセージに後サラダだった。朝食はいつもこれに決まっている。メグさんは分かっているのだろうか、みゆき達がこんな事をしている場合じゃ無いことを。昨日のアリウスの攻防の時見えたあの予言は何だったんだろう。
今、ホーリープロフェットで未来を予言してみると、今朝の夢と同じ、真っ白な光景が目に浮かぶだけだ。これは本当にどういう意味なのだ。それにアリウスにはみゆきのホーリープロフェットは効かない。奴が聖なる者なのかと思うと、頭がこんがらがってしまいそうになる。
私はメグさんに何かする事は無いか?聞いてみると、メグさんは大丈夫よ。とにかく学校に行きなさい。と言われただけだった。いったい何なのだろう?世界の命運がかかっているというのに、メグさんは余裕がありそうで、慌てた様子では無かった。
みゆきはメグさんの言うとおり、いつものように学校に行くことにした。そして空を見上げると東の空に浮かぶ太陽を見てみると、小さな点のような光が見えた。
「ねえ、キラリちゃん。あの東の空に何か点みたいな輝きが見えない?」
と聞いてみると、見えないと答えが返ってきた。何なのだろう?あの白い点は?星が見える時間でも無いのに?あの夜でも無いのに星のように輝く白い点は何なのだろうとホーリープロフェットで調べて見ると、驚く事にあれがカタストロフィーインパクトだと言うことが分かった。
「ちょっとみゆきちゃん!?どうしたのそんなに血相かいて!?」
どうやらあのカタストロフィーインパクトが見えるのはきっと星の子に関係する者だけなのかもしれない。あれが地球に衝突したら、キラリちゃんも武士君もみんな死んでしまう。
「みゆきちゃん!」
と言ってみゆきはキラリちゃんに体を揺さぶられ、ハッと気がつく。
「みゆきちゃん。どうしたの本当に?」
「ゴメンキラリちゃん。今日はみゆき学校を休もうと思う。ちょっと体調が悪いから!」
そう言って来た道を引き返す。
この事をメグさん達に伝えなきゃ、そうしないと本当にこの世は終わりになってしまう。
みゆきが走って、メグさんにカタストロフィーインパクトが近づいていることを知らせなきゃいけない。するとどこからか声が聞こえてきた。
「無駄だよ!!」
と。
どこかで聞いた声が聞こえてきた。そしてその声が誰だか分かった。
「アリウス、どこにいる!!隠れていないで出てこい!!」
「ここにいるよ」
背後から声が聞こえてきて、振り向いてみると不適に笑うアリウスの姿があった。私ぐらいの男の子で白いマントのような物を羽織っている。
「みゆきに何か用なのか?」
「用がなければここまで来ないよ」
「じゃあ、何をしに来た!!」
そう言って胸の底から熱くなり、みゆきはホーリープロフェットを発動させた。髪がリリィの髪のように白く、みゆきは早速聖なる炎で、アリウスを焼き尽くそうとした。だが、アリウスはみゆきの聖なる炎に包まれながら、みゆきに近づいてくる。
「みゆき君と言ったね、君は学習能力が無いのかい?僕に君の聖なる炎は通じないのにそれでも聖なる炎を僕に喰らわせるなんて何て愚かなホーリープロフェットの使者なのだ!!」
聖なる炎が効かないなら、力押しで、みゆきはアリウスに立ち向かう。
白き炎をまとった拳をアリウスに喰らわそうとしたが、アリウスはみゆきの拳を手で受け止めて、アリウスは黒い炎をみゆきに浴びせて来た。やけどするほどの熱さでは無い、みゆきはアリウスには勝てない。このままでは、みゆきは殺されてしまう。でもみゆきが死んでも、まだリリィは・・・。
みゆきが死んでもきっと誰かがみゆきの代わりにカタストロフィーインパクトを何とかしてくれる者が現れるはず、みゆきはそれを信じるしか無い。きっとみゆきがいなくなってキラリちゃんや武士君にメグさん達を悲しませてしまうかもしれない。この命はもはやみゆきだけの物じゃ無いことは分かっている。みゆきが死ねば、悲しむ人は少なからずにいる。
あの東の空に見えた星のような輝きはカタストロフィーインパクトだ。きっとみゆきとリリィと孝君と、それとにっくきアリウスには見えるのだろう。それにあのサングラスをかければあのカタストロフィーインパクトが接近している事を気がつくはずだ。
お願いリリィ、アラタトに行くにはあなたの力が必要なんだよ。みゆきには分かる。アラタトは現代の科学では見ることも気づくことも出来ない大陸であることを。リリィならアラタトを見つけ出す機器を作ることが出来る。
「うっ・・・」
みゆきは生きている。でも手と足を縛られて動くことが出来ない。
「お目覚めかな?みゆき君」
「その声はアリウス!!」
「そうだよ。僕はアリウスだよ。みゆきお姉ちゃん」
「あなたにお姉ちゃんなんて言われる筋合いは無いわよ」
「だって僕とみゆきお姉ちゃんは双子の姉弟なんだよ。信じられないのは仕方が無いけれど」
「その証拠はどこにあるのよ」
「この水晶玉が物語っているさ」
そう言ってアリウスは二つの水晶玉を取り出した。一つは私が持っていたビー玉サイズの水晶玉で、もう一つが黒い水晶玉であった。
「この水晶玉は君が持っていないと意味をなさない」
そう言って、アリウスは本来みゆきが持っていた透明な水晶玉を差し出した。
「どういう風の吹き回しよ」
「どういう風の吹き回しも無いよ。お姉ちゃんにはお姉ちゃんの友達のリリィを連れて来るように取引をさせたいだけさ」
「あなたは本気でカタストロフィーインパクトを衝突させるつもり?」
「もちろんさ、この世の人間達を輪廻の輪をくぐらせて再び僕達は転成させるために、カタストロフィーインパクトを衝突させるのさ」
「そんな事はさせないんだから」
みゆきはホーリープロフェットを発動させて、手かせ足かせを解いた。
気がつけばみゆきは牢獄の中にいることに気がついた。
みゆきはダメ元でホーリープロフェットを発動させて、牢獄を出ようとしたら、アリウスは漆黒に染まる炎を召喚して「本当に学習能力を知らない女だね」そう言ってみゆきの真っ白に染まった聖なる炎をかき消し、みゆきは漆黒の炎に包まれ意識を失いそうだった。
みゆきは生きているみたいだ。苦しい。こんなに苦しいなら死んでしまった方が良いんじゃないかと言うくらい苦しい。みゆきはリリィ達にとって足手まといでしか無い。だったらこの場で舌をかみ切り死んでしまった方が良いんじゃないかと思ったが、みゆきにはそんな度胸は無かった。
みゆきのホーリープロフェットの炎がアリウスに効かないなら、みゆき達はアリウスにどう立ち向かえば良いのだろうか?みゆきは何も役にも立たないお人形の様だ。諦めちゃダメだ。そうしないとこの世はアリウスの思い通りになってしまう。
みんな、お願いだからみゆきの事はほおって置いて、みゆきはみんなの役には立てないのだから。せっかくみゆきにも居場所が出来たのに、こんなのって無いよ。キラリちゃんと武士君は今頃学校かな?鉄格子を破る事は出来ても、みゆきにはアリウスに立ち向かう力は無い。だってみゆきのホーリープロフェットの炎は通じないのだから。
そんな時、アリウスがやってきて、「みゆき君」と言ってアリウスは黒く光紐を取り出してみゆきをそれで拘束した。
「何をする気だ!アリウス」
「あのカタストロフィーインパクトを衝突させるには君の力も必要なんだよ」
「みゆきに何をさせるつもりだ」
「ちょっと君には洗脳させて貰う必要があってね」
「そんな事はさせない」
そう言ってホーリープロフェットを発動させて、どす黒い縄を燃やし尽くそうとすると、その縄は燃やし尽くすことは出来なかった。
「本当に君は学習能力が無い子だね。君みたいにお馬鹿な人間にはこの力は良く効くそうだ」
するとアリウスは手からどす黒い玉を取り出した。どす黒く丸い玉をみゆきの頭に入れた。するとみゆきはどうなってしまったのか?すべてが憎しみに変わってしまう。そんな事はない、私にはキラリちゃんや武士君にリリィ達がいる。みゆきは一人じゃ無い。するともう一人のみゆきはみゆきに語りかける。
「じゃあ、どうして君のお母さんは君を捨てたの?散々苦しめられたんでしょ。君のお母さんもひどいね」
そうだ。みゆきはお母さんに捨てられた。それでみゆきは一年ぐらいさまよい歩き、そして安井という最低な人間の施設に放り込まれてしまった。そこでの暮らしは、みゆきと同い年ぐらいの人間を利用してみゆきに競馬の予想をさせた。わざと競馬に外れるようにしたら、一人の男の子をみゆきの目の前で銃殺した。
でもお母さんはこの水晶玉をみゆきに託してくれた。この水晶玉が無ければみゆきはもっとひどい目に遭っていたかもしれない。そしてもう一人のみゆきは言う。
「じゃあ、どうして君はここにいるのかな?君を助けに来る者はいないみたいだよ」
「そんなのいなくても良い。みゆきはみんなの手を煩わせたくは無い。みゆきの事はほおって置けば良いんだ。あんたみたいに力で何でもねじ伏せられると思わないで」
そう言ってみゆきはホーリープロフェットで聖なる炎を解き放ち、さっきアリウスがみゆきの頭の中に入れたどす黒い玉を追い払った。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
そう叫んで、みゆきはどす黒く光縄を解いて、みゆきはダメ元で再び、アリウスにホーリープロフェットの炎を浴びせた。すると「うわ」とわずかながら効いて見るみたいだ。もっとだ。もっとだ。心の底にある光を輝かせればみゆきはメビウスの野望を止められる。
しかし、アリウスは「こしゃくな、だったらここでお前は死んでしまえば良いんだ」そう言ってどす黒い炎をみゆきに浴びせようとした。みゆきは今度こそは死ぬ覚悟を決めたが、わずかでも良いと思って思い切りホーリープロフェットの炎を最大限まで上げて、アリウスのどす黒いオーラに向かって放った。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
もはや声にならないほどの声でみゆきは叫び、ホーリープロフェットの聖なる炎を解き放った。するとアリウスのどう黒い炎と拮抗している。まだだ。まだ。みゆきは諦めてはいけないんだ。みゆきにはキラリちゃんや武士君にリリィ達がいるんだ。
「往生際が悪いのも程ほどにしろよ」
そうアリウスは言ってどす黒い炎を解き放ち、それでもみゆきは心の奥底にあるしんがとも呼ぶ所に近づいている。そのしんがに近づけば、ホーリープロフェットは完成する。みゆきはしんがに届き、アリウスが放つどす黒い炎をかき消して、みゆきの聖なる炎をアリウスに浴びせた。
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
おぞましい獣のような断末魔と共にアリウスは消えていった。
「みゆきはまだ、負けるわけには行かないんだ!」
しかしアリウスの気配をまだ感じる。しかしアリウスもみゆきの心のしんがに問いただした聖なる炎を浴びて無事では済まないと思っている。その通りであり、アリウスは目の前に現れ、それでもみゆきに問いかける。
「見事なホーリープロフェットだよ。君には感服させられる」
「アリウス、往生際が悪いよ。もう負けを認めてここから立ち去ることをみゆきは進めるよ。みゆきは鬼じゃ無いから、これ以上みゆきとやると言うなら、みゆきは負けないよ」
「そのようだね」
するとアリウスにヒビが入り、粉々に砕け散った。
「この体で君に挑んだのは間違いだったようだ。まさかしんがを極めたホーリープロフェットを撃ち放つとは思っても見なかったよ。この体はデコイで真の僕の姿じゃ無い。今度会うときまでに仲間達と楽しんでいるんだね」
割れた鏡を見つめて、みゆきは髪が真っ白で、目が赤くてちょっと自分でも怖い感じがする。そしてアリウスがいなくなることを知ると、元の黒い髪に戻り目も黒く染まっていた。
力を使い果たしたのかみゆきはもうヘトヘトで、立っているのもやっとで、みゆきは地面にへたり込んだ。そして意識が遠のいてくる。みゆきはここで終わるわけには行かない。カタストロフィーインパクトを消滅させるまでは死ぬわけには行かない。みゆきももっと強くならなければならない。
そんな時、みゆきを軽々と持ち上げる感覚にとらわれた。それはこの感触はリリィの者だ。とりあえずアリウスの野望には加担しないだけの事は出来た。みゆきはただ飾られているような人形では無いことは自分でも分かった気がする。みゆきはもっと強くならなくてはいけない気がする。そうしないとカタストロフィーインパクトが地球に衝突してキラリちゃんや武士君やリリィもみんないなくなってしまう。そう思うと、リリィにも孝君にも、メグさんや流霧さんにも、あの東の空に見えるカタストロフィーインパクトを消滅させなければならない。




