世界を滅亡させようとするカタストロフィーインパクト
「うわあああああ」
と叫びながら、みゆきはメビウスに聖なる白い炎を浴びせた。
アリウスはいなくなった。どうやらみゆきのホーリープロフェットで跡形も無く消えて無くなったのだろう。
いや、アリウスの気配がする。あのような炎を浴びてただじゃ済まないはず、辺りを見渡すと、アリウスはいない。でも気配は消えない。いったいどうなっているんだ。
するとメグさんが「上よ」と言って上を見上げると、アリウスは工場に設置されている鎖に繋がれているフックにぶら下がっていた。
「今度こそ、アリウス、お前を跡形も無く消し去ってやる」
「出すが良いさ、すべての力を」
「ああああああああ!!!」
と叫びながらみゆきは聖なる白き炎をアリウスに浴びせた。今度こそ当たるはずだ。フックにぶら下がっていてはどこにも逃げ場所がないはず。
白き炎は以前よりも増して強力になっている。今度こそアリウスはその力に打ちひしがれるだろう。
しかしアリウスはみゆきの聖なる炎を浴びても何も効果は無かった。
「どうして、アリウスにみゆきの聖なる白き炎が効かないの?」
「まだ、分からないのかい?君の白き炎は邪悪なる者を消し去る能力、僕は邪悪なる物じゃ無いからさ」
そんなアリウスが邪悪なる存在じゃ無かったら、カタストロフィーインパクトで地球の者達を滅亡させようとする事は聖なる事だとも言うの?
するとみゆきの前に何かが横切った。それはリリィよりも早く吸血鬼の力を使ってメビウスに対抗しようとしている。
「カタストロフィーインパクトは地球に激突させる訳にはいかないわ」
そう言ってメグさんはアリウスに力押しで攻撃を加えようとしている。しかしアリウスはメグさんの攻撃をよけて、そのまま消えてしまった。
「逃がしたか・・・」
あのアリウスって奴はいったい何者なんだ。みゆきのホーリープロフェットが通じないなんて、しかもみゆきのホーリープロフェットである予言では、カタストロフィーインパクトですべての人間が悶え苦しみ死んでしまうと出ている。みゆきの予言は外したことが無い。本当にカタストロフィーインパクトで人類は滅亡してしまうのか?
いやそんな事はさせない、そこでリリィを思い浮かべて水晶玉を握って未来を見つめると、何も見えなくなり真っ白な世界が見えた。これはいったいどういう事なのだろう?そうだ、みゆき達はリリィを奴らに渡してはいけないんだ。水晶玉にも出ている、きっとカタストロフィーインパクトを防ぐにはリリィの力が必要だと。
それよりも孝君は大丈夫なのか?メグさんが言っているが、孝君は意識を失っている。そこで現れたのが、流霧さんだった。しかもリリィが見えるのか?リリィを両手で抱えて、流霧さんはサングラスをかけている。
でもみゆきは流霧さんが苦手だった。けれども今はそんな事を言っている場合じゃ無いだろう。流霧さんにはリリィが見えるのか?とにかくリリィは気絶しているようだが、リリィを抱えている流霧さんの所に行った。
「リリィ」
そう言ってリリィを抱える流霧さんの所に駆け足で行く。
「流霧さん、リリィが見えるの!?」
「ええ、あなたと星の子と孝がね」
どうやらその眼鏡はリリィの目線になれる眼鏡だと感じた。
「そのサングラスで見えるの?」
「ええ」
「それよりもリリィ気絶しているけれど、どうして?」
「あたしが見つけて、ちょっと痛めつけて気絶させてあげたのよ」
「何それ、ひどいんじゃ無いの?」
「この子に勝手な事をされたら困るからね。カタストロフィーインパクトはこの子にかかっていると思っても過言じゃ無いからね」
「だからって気絶させる事はないんじゃない?」
「今はそうするしか無いわよ」
そう言ってリリィを地面に置いてサングラスを取った。
みゆきはリリィの元に行き、「リリィ、リリィ」と数回軽く頬を叩いて目覚めさせた。すると、リリィは立ち上がり、「孝は!」と言って、孝君の方へ指を向けた。するとリリィは起き上がり、ものすごいスピードで孝君の元へと行った。
「孝、孝」
そう言って、リリィの手が輝きだした。痛めつけられた孝君の治療をしているみたいだ。
メグさんは孝君の存在に気がついていないはず、だってリリィと何かしら接触しているとみゆきと孝君しか見えなくなってしまうからだ。
すると「メグ」と言って流霧さんはメグさんにサングラスを投げた。
「完成したのですね、流霧さん」
「ええ」
そう言ってメグさんはサングラスをかけた。するとリリィに気がつき、リリィもメグさんの事に気がつく。
「あなた、メグ?」
「そうよ。メグよ」
「今、自己紹介している場合じゃ無い」
そう言って、孝君の治癒に専念している。すると一瞬だがリリィの姿が見えなくなってしまった。その治癒能力は自身の存在を消し去る事を促進させる事になる。
「リリィ、止めろ、そんな事をしたら、リリィは完全に消えて無くなってしまうよ」
「関係ない、リリィ、孝、助ける」
「止めろ、リリィ」
そう言ってリリィを羽交い締めにしたが、リリィの怪力ですぐに解かれてしまい、後ろに吹っ飛んでしまった。みゆきは意識が吹き飛びそうだった。
覚束ない意識の中、みゆきは言った。「誰か・・・リリィ・・・を止めて」と。
でもメグさんも流霧さんもそれを止めようとはしなかった。
そうだよね。みゆきが間違っていたかもしれない、リリィは分かっているのだ。自分の存在が消えても孝君を助けたいと。みゆきがリリィの立場だったらそうしていたかもしれない。けれど、リリィが消えて無くなってしまうのはヤダ。そこでメグさんがリリィを羽交い締めにして、「大丈夫よ」と言って、孝君からリリィを引き剥がした。
「メグ!!離せ!!」
「孝君は大丈夫だよ。それよりもあなたが消えてしまったら、カタストロフィーインパクトはどうなるの!?」
するとリリィは涙を流してしまった。
何だろう。リリィが側にいて、そこでホーリープロフェットを発動してみると、アリウスの前ではカタストロフィーインパクトが地球を襲って消えて無くなってしまったのに、リリィの前でホーリープロフェットで予言してみると、なぜか分からないが真っ白に染まった世界が広がっている。それは希望の証なのか?それとも・・・とにかくメビウスにリリィを手渡してしまったら最後だと言うことは何となく分かった。
そうリリィはカタストロフィーインパクトを防ぐと共にみゆき達の掛け買いの無い友達だ。リリィはカタストロフィーインパクトを止める事だけに利用するだけの存在じゃ無い。だからリリィが完全に消えてしまうのは嫌だ。
リリィは私に見える。メグさんにも流霧さんが持ってきたサングラスを着用してリリィの存在に気がついている。
それにメグさんが一掃したアリウスに操らし悪人どもも、何とか一人も死なずに生きている。
パトカーのサイレンの音がした。
「警察の連中ね。警察にこいつらの事をメグがやったなんて言ったら面倒な事になるわ」
流霧さんはお香みたいなやつとライターで火をともして、倒れた連中にそれを投げつけた。
「流霧さん。いったい何をするの」
「今回の件でメグの事を忘れさせようと思ってね。警察にメグが面識を知ったら面倒な事になるでしょ」
なるほど。
そういう事でみゆき達はリリィが孝君を軽々とおぶってその場を後にした。
みゆき達はメグさんが運営する百合の里の施設に行き、気絶した孝君をリリィはベットに寝かせて、リリィは懇願する想いで孝君の意識が戻ることを待っていた。孝君きっとリリィの事が好きなんだな、それにリリィも孝君の事が好きなのだろう。
大切な物を無くす悲しい気持ちはみゆきにも分かる。みゆきの大切なお母さんはこの妙な水晶玉を残してどこかに消えていってしまった。そう考えると、本当にこんな世界無くなってしまった方が良いんじゃないかと思ったが、みゆきにはキラリちゃんや武士君にリリィ達がいる。だからこの世界はあった方が良いとみゆきは思っている。
流霧さんはみゆきに事情を聞こうとしていたが、事情を話す前に、みゆきは疲れていた。そこでメグさんが代わりに事情を説明する事となり、みゆきはお言葉に甘えて眠ることになった。
そしてみゆきは夢を見る。広大な大地にそびえ立つ、空に浮かぶ大陸を前にして、みゆきはその大陸を見つめている。いったいこの空に浮かぶ大陸は何だろう?これがリリィの故郷であるアラタト?そこでみゆきはポーチにしまってある水晶玉を握って、予言してみた。するとかすかだが何か見えた感じがした。それは何なのか分からないが、人々がカタストロフィーインパクトで悶え苦しんで滅亡してしまう事では無いとみゆきは思っている。
あのアリウスと言う少年はいったい何者なのか?みゆきが全力で放った聖なる炎を受けても全然効いていなかった。アリウスは言っていた。カタストロフィーインパクトで世界を全滅させると。そのような者が聖なる者だとも言いたいのか?現にみゆきの炎は効いていなかった。
とにかくみゆきはこの夢で出てくるアラタトに行かなくてはいけないような気がした。夢に出てくるアラタトでは無く現実世界であるアラタトに。そこに何か世界を救うような何かがあるかもしれない。
メグさんの話によるとカタストロフィーインパクトはアラタトに与える千年に一度の神の試練だ。それで千年前アラタト人はその試練を乗り越える事が出来なくて、ほとんどのアラタトの民は滅んだと言っていたっけ。
その神が与えるアラタトの試練は何のためにするのだろう?それで千年が経過した今、みゆき達人類にその神の魔の手が差し伸べられそうになっている。
アリウスの前で予言をしたら、カタストロフィーインパクトは地球に衝突すると出た、でもリリィの前で予言をすると、何も無い真っ白な世界が浮かび上がった。
本当になんなのだろう。神の試練だか何だか知らないが、みゆき達が済む地球に害を起こさせないようにしたい。
あのアリウスって奴、きっとリリィの事が見えるんじゃ無いかと思った。いや見えるかもしれない。本当にアリウスは何者なのか?あいつにリリィを渡したら、流霧さんもメグさんも最後だと言っていた。
そしてみゆきはいつもの夢から目覚める。時計は午前六時を示していた。今日は学校だ。そう言えばみゆきは学校の先生になりたいんだ。それにはいっぱい勉強して大学にも行かなきゃ行けないんだな。
ただし、この件が済まないと行けないだろう。とにかく今日は学校には行かないでメグさんの所に行った。メグさんはいつもパソコン室にいる。だからみゆきはメグさんに会いにパソコン室に行く。
メグさんはお疲れモードか?そう言えば、引きこもりや悩みを抱えた人達のメールのやりとりとかで大変なんだよな。みゆきは知っている。そう言った人の悩みや鬱を癒やすのは大変な事を。
メグさんは今、パソコン室にあるソファーの上で眠っている。昨日はあれだけの事があったのに、あの後に悩み多い人達にメールでエールを送っていたみたいだ。
メグさんを起こそうとしたが、何か悪い気がして、起こさないでいると、起こさなくてもメグさんは急に目覚めた。
「あー、一時間は寝たかしら」
グッと伸びをしてみゆきの目を見る。
「あら、みゆきちゃんおはよう」
「あっ、おはようございます。昨日は大変でしたね」
「本当にねえ」
「あのっ、カタストロフィーインパクトの事で話があるんですが!」
するとメグさんは目を閉じてため息をついた。
「本当に大変な事になっちゃったわね」
「そんな暢気な事を言っている場合じゃ無いでしょ」
「そうだね。あっ、そうだ!私とした事が、そろそろ、みんなの朝ご飯を作らなきゃ行けないんだった」
そんな事をしている場合じゃないんじゃないかと言ってやりたかったが、みんなは知らないんだよなカタストロフィーインパクトのことを。
そんな大変な事がこの世界に起ころうとしているのにメグさんはいつも元気で、カタストロフィーインパクトの事を話す隙を与えてくれない。
そこで水晶玉で未来を予言してみると、何も見えない真っ白なままだ。みゆきの予言が弱まってしまったのか?分からないが、アリウスの時に予言した時よりかはましだと思っている。アリウスの前で予言したらカタストロフィーインパクトが地球に激突して、みゆき達人類は。
とにかく食堂に行くと、キラリちゃんと武士君とまどかさんが「おはよう」と挨拶してきた。
リリィはまだ、食堂に来ていないのか?心配になり、見に行こうとするとメグさんに「どこに行くの?」ここでキラリちゃん達にリリィの存在を話したら話がこんがらがってしまうため、黙っていた。そしてリリィの所に行こうとすると、メグさんは分かっているだろう、みゆきがリリィの所に行くのを。
メグさんは今のリリィに合わせないような感じで、その手を離そうとせず、席に座るように促された。その様子を見ていたキラリちゃん達は心配していたが、「何でも無いよ」とごまかして置いた。
本当にこの世界はどうなってしまうのだろう?




