高橋孝のリリィへの想い
次の日、みゆきは目覚める。そう言えば今日はリリィと孝君とで遊びに行く予定を立てていたんだっけ。今日はお休みだからと言って、朝ご飯の時に、キラリちゃんに武士君とどこか遊びに行かない?と言われたがみゆきは丁重にお断りをした。
何か用事でもあるの?と聞かれたが、孝君とリリィと遊びに行くと言ったら、みゆきと孝君は付き合っているなんて、誤解を招いてしまうから、ちょっと用事かあるからと言って軽くごまかして置いた。
朝ご飯を食べ終えて約束通り、リリィと孝君とで遊びに行くんだ。そう言って歯ブラシをして手を洗って、白いワンピースに三百万円入った赤いポーチを下げて、外で待っているリリィと孝君の所に行った。
リリィは今日の事を楽しみにしていたのか凄くはしゃいでいた。本当にリリィは、羽目を外していた。
そして町に出てリリィの右手には孝君の左手、リリィの左手にはみゆきの手が繋がれていた。本当にリリィは町の人から見ると存在そのものが消されたかのように自然と避けているような感じだった。しかもそれはリリィと接しているみゆきも孝君も同じようになってしまう。
ちょっと手を離して見ると、人々は急にみゆきの存在に気がつき驚いた感じで、しかも人とぶつかってしまった。すいませんと謝って、再びリリィの左手を掴んだ。するとリリィと同じように孝君とみゆきは町の人とは存在そのものを消されたかのように行きずりの人間は気がつかなかった。
みゆきは考えた、もしリリィが一人になってしまったら、どうなってしまうのだろうかと。
そして町にあるゲームセンターに辿り着いた。リリィは大はしゃぎでみゆきと孝君の手を引っ張って、駆け足で向かっていく。
「ちょっとリリィ落ち着いて」
そう言えばリリィは百メートル七秒台で走るんだった。そんなリリィが手加減してもこれほどの早さにはついてこれないみゆきであった。
「ゴメン、みゆき、リリィ興奮しちゃって・・・」
「とにかくリリィ、落ち着いて、ゲームセンターはどこにも行かないから」
「うん」
早速リリィには落ち着いて貰って、ゲームセンターに行き、リリィが大好きなリズムゲームマシンに飛びついた。
孝君が百円を入れると、ゲームは作動して、早速リリィはゲームに飛びついた。リズムゲームマシンだが、一番ハードなレベルでやるつもりだ。みゆきはこういったゲームをしたことが無いが、リリィはすさまじい早さで落ちてくるリズムの何て言うか分からないけれど、みゆきは見ていてとてもついて行ける状態じゃ無かった。
それにリリィといると本当に周りの人間はリリィと孝君とみゆきに気がついていない。これだけの高得点をたたき出せるリリィを見たら普通、みんなが注目するとみゆきは思った。
またリリィはリズムゲームマシンで、今度は手で押すのでは無く、足下に矢印のついたリズムゲームをやりたいと言っていたので孝君がまた百円を入れようとしたところ、私が千円を両替して、百円玉にしてリリィと孝君の元へと行った。
「今度はみゆきが出すよ」
「良いよ、そんな悪いよ」
「まあまあ」
と言ってみゆきはちょっと強引だがみゆきのわがままを聞いて貰った。
またリリィは最高レベルに上げて、リズムゲームをする。この足下の矢印がついたリズムゲームは画面から落ちてくる矢印を踏んでいくというゲームだ。リリィは凄く器用に矢印を踏んでいく。リリィの身体能力は半端じゃない。恐ろしいほどの矢印が落ちてくるのを起用で機敏な動きで踏んでいく。
それが終わると今度はクイズのゲームだ。リリィの頭脳は昨日勉強を教わったのだが凄い博識だった。どんな問題も解いてしまう。いつ、こんな事を知ったのは定かでは無いがリリィは半端じゃなく頭脳の持ち主だ。本当にリリィはゲームセンターにいるときは凄く楽しそうにしている。
「ゴメン、孝、みゆき、リリィだけ、こんな楽しんじゃって」
「良いんだよ。俺はお前が幸せならそれで良いよ」
と孝君は優しく言う。そして切ない顔をする。
「どうしたの孝君?」
「いや、何でも無い」
何でも無いならそれで良いか?
「リリィ、みゆき、孝にお礼がしたい」
「またクレーンゲームでプレゼントするつもりだな」
「うん」
リリィはみゆきの欲しいものを聞かれて、クレーンゲームの場所まで行った。するとキティの大きなぬいぐるみがあった。みゆきはこれを見てときめいた。
「みゆき、これ、欲しい?」
「欲しいけれど取るの大変じゃ無いの?」
「リリィに任せて」
みゆきが欲しい巨大なキティ人形を取ってくれるみたいだ。そのキティのぬいぐるみはみゆきぐらいの大きさの物だ。そのクレーンゲームは一回二百円でリリィが財布から二百円を取り出して、いとも簡単にキティのぬいぐるみを取ってしまった。
「ほら、みゆき、これ」
「それじゃあ、リリィそろそろ仕事をしよう」
「仕事って何?」
と孝君に聞いてみる。
それはリリィのクレーンのテクニックを利用してその商品を売るみたいだ。なるほど、何か疚しさを感じるが悪いことをしているわけでは無い。リリィは次から次へと高級そうな商品をクレーンゲームで落としていった。
孝君に釘を刺されて言われたがこの事は他言無用と言われてしまった。でも本当に良いのだろうか?ちょっと何かそんな事をしているリリィとそれを指示する孝君に何か悪い予感がした。
そんな二人を止めるタイミングをつかめずに、リリィは孝君にリリィの高度なテクニックで高級そうな物を落としていく。それを専門店に行き売りに出すと凄い値段になるらしい。
「今日はこれぐらいにしておこうかリリィ」
「そうだね。孝」
ここでみゆきは一言言っておくことにした。
「孝君、そうやってリリィを利用するのは止めた方が良いんじゃない?」
「そんな事は分かっているよ。でも仕方が無いんだ。俺達もお金貯めて二人でどこかに行こうって相談していたんだから」
「どこかに行くってどこに行こうと言うの?」
「リリィと俺のユートピアさ」
「ユートピアって別にそんな事をしなくたって施設があるじゃ無い。百合の里が」
「あそこはもう借金にまみれで、いつ潰れてもおかしくない所なんだよ。だから、少しでもリリィの力を借りて、お金を稼いで俺とリリィのユートピアを見つけようとしているんだよ」
「でもメグさんあなたの事を心配していたよ。それにリリィの存在を気がついている」
「メグさんもリリィが気がつくことが出来るのか?」
「出来ないけれど。とにかくこういう事止めて置いた方が良いよ、いつか痛い目見るよ」
みゆきがそう言うと、孝君は複雑そうな顔をしていた。みゆきもそんな孝君の顔を見て気持ちが複雑だった。
とりあえずご飯を食べに行こうとして、みゆき達はマックに行った。みゆきとリリィは二階の席の隅っこに行った。何度も思うことだがリリィと接している時はみゆきは周りから気配が感じられないのか?周りには大勢の人達がいるのにみゆきとリリィの事は気がつかないみたいだ。みゆきは周りの人間は見えるがリリィはみゆきと孝君しか気づくことが出来ないんだよな。
それよりも孝君遅いな、孝君はみゆき達が食べるそれぞれのバリューセット買いに行ったんだっけ。みゆきが様子を見に行くと、孝君はいなかった。孝君の事が心配になり、二階にいるリリィの元にと戻ったと思ったら、二階には大勢のお客の中、誰にも気づかれないリリィがいた。
「リリィ、孝君来なかった?」
「孝、まだ来ていない」
本当に孝君は何をしているのか心配になってしまった。こういう時はみゆきのホーリープロフェットを使ってみゆきは探した。孝君がマックの裏口に悪い連中に連れて行かれて、金を出せと脅されている。
「大変だよリリィ!」
「孝、何か、あったの?」
リリィに孝君の事を伝えた。するとリリィはみゆきをその尋常じゃ無い力で抱っこして、マックの裏側に行った。
するとみゆきの予言通り孝君は裏に連れて行かれてリンチにあっていた。
「孝君」
とみゆきが呼ぶと、孝君はみゆきとリリィの存在は気がついているが、孝君をリンチしている四人には気づいていないみたいだ。
だったら好都合だ。みゆきはリリィの気づかれない事を良いことに孝君達にリンチする連中に攻撃をかましてやろうと思ったが、不自然な事にさりげなくかわされてしまった。
どうなっているの!?もう一度連中に攻撃を加えようとするとまた、さりげなくかわされてしまった。どうやらリリィといると誰も攻撃を加えることは出来ないみたいだ。そんなにもリリィは誰にも気づかれないような存在であった。
だったら、みゆきはリリィに注目されている。それでみゆきは孝君の手を取ると。
「何だ。あいつ消えやがったぞ」
「どこに逃げていったんだ」
「分からない、いきなり消えたんだよ」
「まあ、いいさ、金はたんまりと貰ったからな」
そう言って孝君に暴力を振るった連中はそこから消えていった。
「孝、大丈夫」
リリィが心配そうにリリィは孝君が殴られたであろう、切れた唇をそっとなめた。
「へっ、みっともないところを見せちゃったな」
「あんな連中相手に一人で立ち向かうなんて無謀すぎるよ、とにかくリリィの所に避難して置いた方が良かったのよ」
「リリィ、孝、守る事、出来なかった」
リリィも心配している。
「ゴメンリリィ、リリィが稼いだお金全部取られてしまった」
「そんなの、どうでも良い。リリィ、孝、傷つける連中、一泡食わしたい、でも、リリィはみゆきと孝以外に気づくこと、出来ない」
とリリィは悔しそうに言っていた。
リリィはお金よりも孝君のことを心配していた。そうだ。リリィは孝君とみゆき以外の人には気がつかないのだ。
みゆきは孝君にリリィの事を話した方が良いんじゃないかと言ったら頑なに拒否されてしまった。メグさんには面倒はかけられないと。これは孝君自身とリリィの問題だから口を挟むなと言っていた。
「あなたに何が出来るの!?」
みゆきは感情的になってしまい、孝君にきつく言った。
すると孝君は黙ってリリィの手を引っ張ってどこかに行こうとしたところ、みゆきは止めた。
「どこに行くのよ!」
「どけよ。俺はリリィを守る!」
「孝君も往生際が悪いわね」
みゆきは孝君の事を痛めつけると、横から凄い力で横っ腹を蹴られてしまった。どうやらリリィの仕業みたいだ。リリィは孝君を痛めつけるみゆきの姿がはっきりと見えるのだ。
何て凄い破壊力何だ。リリィは軽く蹴ったつもりでいるみたいだが、みゆきに取っては痛恨の一撃と言ったところだ。
とにかくリリィの事はメグさんに相談した方が良いと思っている。施設の運営が厳しいことはみゆきも知っている。でも誰にも相談しないで自分の力で解決させようとする。それにカタストロフィーインパクトを防ぐにはリリィの力も必要だと言っていた。運動神経は尋常じゃない上に頭脳もずば抜けている。
みゆきが目覚めると、どこぞの公園だった。みゆきは確か孝君に制裁を加えようとしたところ、リリィに横っ腹を蹴られて気絶してしまったんだ。みゆきは一人だった。しかも公園には誰もおらず、空は夕焼けに染まっていた。
そうだ。リリィと孝君はどこに行ったのだろうと心配してホーリープロフェットで調べてみると、どうやら大人しく施設に戻ったみたいだ。みゆきも公園から出て施設に戻ろうと思って歩いて施設の方へと向かっていった。
施設に到着すると、リリィと孝君は勉強室にいた。
「リリィ、孝君」
「何だ、みゆき、また、孝をいじめるつもり!?」
「そんなつもりは全然無いよ。リリィも孝君もメグさんに相談しようよ。みゆき達はリリィの力が必要なんだ」
そこでメグさんが現れた。リリィの目を反らして、メグさんの方に目を向けると、メグさんはみゆきに注目してくれた。
「どうしたの?みゆきちゃん?」
「メグさん、今勉強室にリリィと孝君がいます。リリィには言葉は通じないかもしれないけれど、孝君を説得してください。孝君、この施設の運営が厳しくて潰れそうな事を知っているみたいなんです。それで二人は駆け落ちしようとしているんです」
するとメグさんはみゆきの事を信じてくれたみたいで、メグさんはリリィに注目している気がつかない孝君に言いかける。
「孝、どこにいるのか知らないけれど、私は孝の味方だよ。だから考え直してくれないかな!?」
「みゆきからもお願いだよ。とにかくメグさんを信じて!」




