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35話




○アーインス 雑木林


あれから数十分。


ソードディアの首を片っ端から蹴り折っていく。


鹿たちにも個体差があるのか、時々一撃耐えられる事があったが、[空蹴り]を使用し空中を足場として二撃目の蹴りを入れる事でカバーする。


オスが頭のツノを使用して攻撃を仕掛ける中、木の陰に隠れているメス。


メスということもありソードディア特有とも言える剣状のツノは無く、側から見るとただの雌鹿にしか見えない。


あまり危険性もなさそうなので、メスは無視で次々と攻撃を加えてくるオスの相手をする。


剣状のツノを使った突進による突きを回避して、その長い首筋に蹴りを入れていく。


[急所打ち]のスキルは武器を使った攻撃でなくても効果があるようで、俺の蹴りは狙った通りの場所にはいりゴキッ!と鈍い音がなる。


そんなことを繰り返していると、段々とどんな蹴り入れれば効率的に相手を倒せるかがわかってくる。


「何となく感覚掴んできたな…」


そう一言言って次の攻撃は意図的に[体術]と[急所打ち]のスキルを使用せずに考えた通りに鹿に向けて蹴りを入れる。


一撃というわけにはいかないが、[空蹴り]を使用した二撃目をの蹴りによって首の骨を完全にへし折る。


やっぱ、スキルを使用してない蹴りでは今の俺のステータスだと火力が足りないか…。


特化型になるとこういうところに困るな…。


「少しぐらいSTRやVITに振った方がいいのかぁ…。でもやっぱここでAGI特化曲げるのはなんか違う気がするしなぁ…」


誰もいないのを良いことにそんな情けないことを声に出す。


目の前の鹿たちの相手をしながら、蹴り方について色々考える。


[空渡りの靴]のおかげでどんな体勢からも蹴りを入れる事ができるので様々な方法を試してみる。


[体術]のおかげで様々な蹴り方が思い通りにでき、飛び蹴りやひねり蹴り、回し蹴りに二段蹴り、ブラジリアンキックとサマーソルトキック、ect……。


流石にその蹴り方一つ一つに深い知識があるわけではないので、完璧ではないが形としてはできた程度に成功する。


だんだん"蹴り"と言うものを理解できてきている気がする。


「スキルって凄いな…」


今更ながらそれを痛感する。


そんなこんなでいろんな技を試しているとアナウンスの音声がなる。


《足による攻撃で、適正数の敵の討伐により、スキル[蹴り]を取得しました》

《思考しながらの戦闘で、適正数の敵の討伐により、スキル[思考時間延長]を取得しました》

《スキル[土魔法]を取得しました》


………


なんかおまけが付いてきたんだが…。


なんだろう……これは俺に向けて"お前戦闘中考え事しすぎ"とでも言っているのだろうか。


まぁ、確かに今も戦闘中だがここまで思考を続けていることだし、これくらいは他のプレイヤーも考えているんじゃないのか?


と言うか、ただ俺があまり声に出してないだけで、他の奴らはその代わりに独り言をや仲間と喋ってるだろ!


たしかに高校の頃友人に、「お前の話飛び飛びで大事なところ抜けてて、ちょくちょく何話してるのかわからなくなる」と言われたことはあるが…。


「そこまでじゃないッ!」


……多分。


そう声に出しながら鹿に向けて蹴りを入れる


鹿たちと戦闘しながらもそんなことを考えている時点で必死に弁解しても無駄なことがわかる。


はぁ…ちょっと疲れたな。





ツノを使って攻撃を仕掛けてくるオスの鹿たちを蹴り倒していると、ある違和感が湧き辺りを見渡す。


先程まで、木の陰からこちらを見ていたメスの鹿が見当たらない。


[気配感知]を使用して探るがそれらしい気配が見当たらず他の場所を探す。


逃げられたか…。


メスの鹿が目の前から消えたことをそう捉え、俺はオスの鹿の相手をするために視線を正面に戻していると…。


ふと背後に気配が現れる。


「……ッ!」


俺はいきなり背後に現れた気配から逃げるように[回避]を使用するとすぐに金属を打ち合わせたかのようなガキンッ!と言う音が鳴り響く。


[空蹴り]を使用して空に逃げ、さっきまで自分のいた場所を見ると、そこには居なくなっていたはずのメスの鹿が歯を噛み締めた状態でこちらをにらんでいた。


メスが噛み締めているその歯は、草食動物のそれではなく、まるで肉食動物のものような獲物の血肉や骨を砕くためと言わんばかりに鋭い乱杭歯となっていた。


そう言えばソードディアたちのステータスのフレーバーテキストの中に"獲物を背後から斬り"だの"殺した獲物の腹を裂き"だのえらく"獲物"ってのが強調されて書かれてた気がするな…。


もしかして…こいつら雑食か?


うさぎを好戦的にしたり、鹿を雑食にしたり、このゲームの運営は草食動物になんか恨みでもあるのかよ…。


しかも後ろから的確に頸動脈噛み切る気だった。


俺の[気配感知]がレベルが低いせいか、スキルを切る瞬間まで全くわからなかった。


「でも、奇襲は失敗だなッ!」


メスの鹿の脳天に向けてかかと落としを入れるとベキッ!っと頭蓋の割れる音が聞こえ、メスは粒子に変わる。


メスの鹿による渾身の奇襲が失敗した事にオスの鹿たちが呆然としている。


ソードディアは群れにメスが一頭しかおらず。


あのメスがこのソードディアたちの群れをまとめるものだったようで、そのメスが倒された事に驚いているようだ。


「と言うことは、あとは残りのオスたちを倒す簡単なお仕事らしいな」


俺は奇襲に怯えないで良いとわかり、そう息巻きながら、今もなお群れの長が倒された事に困惑している鹿たちに向かって走っていく





それから数分して鹿を全て倒し終えた。


蹴り縛りだった事もあり少し倒すのに時間がかかったが、目当ての[蹴り]のスキルは手に入れたのでよしとする。


一応手に入れたスキルたちの詳細はこんな感じだった。


[蹴り]

効果:足による攻撃を最適化し蹴りの威力を上げる


[思考時間延長]

効果:スキル使用時、AGI×0.02秒間、時間を止める。ただし時間を止めている間自身も動くことはできない。


[土魔法]

効果:土属性の魔法を使用可能になる。


[思考時間延長]結構なスキルだったようで、俺のようなAGI特化の場合は、結構助かるな。


今の俺のAGIが、装備を含めた場合900とちょっとあるところを見ると、今の時点で18秒間、時間を止めれるって事だよな。


まぁ、一応思考時間を延長するだけって事もあって体を動かすことはできないみたいだけど、選択肢を増やせるのは嬉しいな。


さっきの鹿の時みたいに奇襲された時とか役立ちそうだな。


以外に使えるスキルだった事に驚きながらも俺は本来の目的だった[武術指南書:蹴兎]を取り出す。


鑑定画面の通りならこれで条件を満たしたはず。


俺は恐る恐る手に持っている少し古めの本を開く。


すると、前回とは違いスルリと本のページをめくることができる。


何か書いてあるのか見ようとし、本に顔を近づけていると、急に本が光りを放ちだす。


「……ッ!目がッ!」


あまりの光に驚き、そう叫ぶ。


未だにボンヤリとしている目を擦りながらその場で頭を抱えていると、


《アイテム[武術指南書:蹴兎]を使用を確認しました》

《アイテムの効果により、スキル[蹴り]をスキル[蹴技]に昇華します》

《アイテムの効果により、スキル[蹴兎]を取得しました》

《アイテム[武術指南書:蹴兎]を使用時に、攻撃手段"足"に対する理解度が規定値を超えていることを確認しました。これによりスキル[天脚]を取得しました》

《これによりスキル[蹴技][蹴兎][跳躍]はスキル[天脚]に統合されます》


そんなことが脳内にアナウンスされる。

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