32話
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○ヌール 草原
「じゃあ、ボス戦も終わったことだし次の街に行こうか」
そんなアーサーからの声が聞こえ、その場から去ろうとしていると、
「おい!お前ら止まれよ!」
「ちょ、黒炎やめろよ」
後ろからそんな声が聞こえてくる。
何事かと思い振り返ると、そこには人間の少年とその青年を止める男エルフ。
わかっているだろうが、俺たちに声を掛けてきたと言うか、投げつけてきたのは人間の方で、それを止める様な声を出したのは男エルフの方だ。
俺たちが、それを聞いてその場で止まっていると人間の方が、さらに喋り出す。
「このグリッチ野郎どもが、そんなことして恥ずかしくないのか!」
「はぁ…?」
何かと思えば、そんな事を入ってくる目の前の少年。
少年の方の見た目は、つり目の真っ赤な色をした炎の様な髪型で、身長は160後半ほどしかなく、こちらを睨んで入るのだが、全くと入っていいほど凄みがない。
…黒炎なのに真っ赤とはこれいかに。
「ねぇ、アーサー」
「何だい、ましゅまろ?」
「グリッチって何ね?」
と言うましゅまろの素朴な疑問にアーサーは説明をする。
「グリッチは、そのゲームのバグや不具合を意図的に悪用する事だね。よく裏世界に入るとか、素材無限に増やせるーとか、あるじゃないかアレのことだよ」
「へ〜、でもあれしちゃダメと?」
「いや、オフラインやローカルだったりで、友達のうちでするのはいいんだろうけど。オンラインゲームでは基本的に使用しちゃいけないんだ。彼はそれを指摘したんだろう」
「でも別に俺たち、グリッチ使ってねぇけどな」
全くもって、ししゃもの言う通りだ。
「嘘つくなよ!最初少しの間、ボスの動きが止まってたじゃないか!」
彼は影魔法のことを言っていた様だ。
確かにはたから見ると、ただ止まってる様に見えるだろう。
「それは、俺のスキルで止めたんだ」
ボス戦ちゃんと見てたら、俺が何かしたってくらいはわかるだろ…。
「嘘だ!そんなスキル調べても出てこなかったぞ!……ッ!グリッチじゃないとしたらチートか!お前チーターかよ!」
「黒炎やめろって!」
「止めるなレンジ!おいチーター!俺が成敗してやる!」
彼の中で俺は悪者に決まった様だ。
すごいなぁ…話が急展開すぎてついていけない。
「ししゃも、僕ここまで堂々とPK宣言する人初めて見たよ」
「本当だよな…ちょっと堂々としすぎじゃねぇか?PKってもっとこう…暗殺者みたいな感じで、後ろからズバッと斬るんじゃないのか?」
「いや、エドはPKするとき一回一回、相手にちゃんと殺していいか聞いてるぞ」
「え…エドそんなことやりよったと?」
俺らは、目の前にいる黒炎くんたちをそっちのけで話す。
前、別のゲームしてた時、いきなりそのへん歩いてるプレイヤーに笑顔で声を掛けたかと思ったら、「今から殺してもいいですか」って言ってたからな…。
声かけられた側も、驚き過ぎて助けを求めるみたいにこっち見てて、俺もどうすればいいかわからなかったんだが。
そんなちょっとした思い出話しに浸っていると、黒炎くんが痺れを切らし叫ぶ。
「ふざけんな!お前ら、俺をバカにしやがって!」
そう叫びながら、俺に斬りかかってくる。
ちょっと短気すぎないか?
当たる意味も義理も無いので普通に避ける。
「普通に危ないんだが…」
「な、何で避けれるんだ!チートか!」
「いや…普通にAGI高いからだろ」
「うるさいチーターが!くらえ![斬撃]」
と言いながら、スキルを使って斬りかかってくる黒炎くん。
いや単に威力あげるスキル使っても、当たらないから無駄だろ…。
「はぁ…」とため息をつきながら周りを見ると、結構な観客が。
いつのまにか、アーサーたちは、黒炎くんと一緒にいたエルフ、レンジくんの隣に移動して何やら話している。
「本当すみません、黒炎があんなこと言っちゃって」
黒炎くんはアレだが、こっちの子はちゃんとしてる様だ。
「別に構わないよ、君は止めてくれようとしてたしね。紛らわしいスキルを使ったうちのロイドも悪いんだ」
「そうばい、あんま気にせんで良かよ」
「おい」
「あ、ロイド、黒炎くんの相手は終わったのかい?」
「あ、ロイド。じゃない!何で俺も悪いみたいなことになってるんだ」
向こうが勝手に突っかかってきたのに、俺まで悪者にされるのは心外すぎる。
そうやってアーサーたちと話している間にも黒炎くんはずっと斬りかかってくる。
時々、「くそっ!」だの「何で当たらないんだ!」だの聞こえてくるが、さっきから攻撃方法が変わってないんだから、当たるはずがない。
流石に、面倒臭くなってきたな。
でも、ここで反撃して相手を倒してしまった場合、 ペナルティとかつくんじゃなのか。
「なぁ、アーサー、この場合俺が黒炎くん倒したら、なんかペナルティがついたりするのか?」
確認のため、アーサーに聞く。
「うーん…流石に一回も攻撃受けてない状態だとPKペナルティかかると思うから、1発攻撃受ければいいんじゃないかな」
「1発受けないといけないのか?」
「ちょっとかするくらいでも可」
「それなら大丈夫だ」
かするくらいで十分なら、それでいい。
俺は息を切らしている黒炎くんの方に向き直る。
黒炎くんの目には、なんども俺に攻撃を避けられたことによるものか涙がたまっていた。
すると黒炎くんは、俺に向けて上段からの大振りな攻撃をしてくる。
その攻撃を剣先だけ当たる様な位置に移動し、手の甲にかすらせる。
すると、涙目だった黒炎くんの顔が晴れる。
「やった!やっと当たった!」
その場で、嬉しそうに喜ぶ黒炎くんさっきまでの涙をこらえていた顔が嘘の様な笑顔だ。
「チーター野郎、お前の動きは見切ったぞ!観念しろ!」
そう言って、彼は俺に向かって走ってくる。
「[斬撃]!」
スキルを発動し、斬りかかってくる黒炎くんを避け、
「[急所打ち]」
そうスキルを使って、短刀を振ると黒炎くんの首は、思っていたよりも簡単に斬れ、スパッと心地の良い音が鳴る。
別れた首と頭は傷口から粒子に変換され、空に昇っていく。
俺は、短刀直してアーサーの方に戻るが、アーサーたち、主に黒炎くんの友達レンジくんの顔に怯えの表情が見える。
「どうしたんだ。そんな怯えた顔して…」
「い、いや〜何というかその…」
「ロイドが黒炎くんの首飛ばすからだよ!もっと他にあったでしょ!心臓を一突きとか!何で首跳ねちゃったの!」
「お、おう…」
アーサーのまくしたてる様な言葉に気圧される。
何でと言われても、スキル発動したら、首に攻撃が行ったんだからしょうがないと思う。
そうやってアーサーからしかりを受けながら、俺のRFO初のPvPは終わった。
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