31話
最近投稿が遅くなってばかりで本当に申し訳ないです。
○ヌール 草原
場所は変わって、蹴りうさぎのいた草原。
今回は森に行くわけでもなく、普通にレベル上げと、次の街に行くための草原のボスを倒すことだ。
昨日始めて、直ぐにボス戦というのもおかしいのだが、昨日の蹴りうさぎで十分にレベルが上がったので、少し装備を整えての挑戦になる。
ちなみに今回のメンバーは、俺、ししゃも、ましゅまろ、アーサーの4人。
他のメンバーも誘ったが、時間が合わないということで、この4人でのボス戦となった。
「全員が揃ったときにボス戦しよう」という案も出たが、エドと、ゲルドがこれを拒否したことで今回ボス戦することになったのだがーーー
「うわ〜、すごい渋滞やね。昨日は全然おらんやったとに」
「ちょうどいい時間帯にはまったみたいだね。僕みたいな学生も、ちょうど帰ってくる時間帯だろうから」
「それにしてもちょっと多すぎねぇか?姉貴の言ったみたいに昨日全然いなかったじゃねぇか」
そう、この辺りは昨日全くプレイヤーがいなかった場所だ。
だが、今はなぜか数十人のプレイヤーがボス戦の自分の番を待っている状態だ。
「ログイン前に少し調べた感じだと、この辺りにいた蹴りうさぎたちの動きが落ち着いたかららしいけど…」
「落ち着いたってどういう事?」
「蹴りうさぎ達が、攻撃的じゃなくなったんだよ。前はそのせいで、ボス戦前にポーションとか減らされて、ボス戦どころじゃなくなってたそうだ」
確かに、それは厳しいだろう。
ボス戦は長期戦になることがほとんどなのだ。
それは、この草原のボスも変わらないそんな相手に準備が万全にできてない状態で、勝てるなんてそれこそ俺の様にレベルが推奨レベルを大幅に超えているやつか、以上にプレイヤースキルが高いやつぐらいだ。
そういうことだから、確かに昨日の様に蹴りうさぎが襲ってくるのなら全くボス戦はできないだろう。
「でも、なんで蹴りうさぎが落ち着いたんだ?俺たちが入っていない午前中の間に、何かしらのクエストをクリアした奴がいるのか?」
「誰がしたかは知らないけど、なんで蹴りうさぎが動きを変えたかはわかるよ」
「へ〜…なんがあったと?」
「依頼の受注ついでにギルドにいた住人の話だと、北の森にいた蹴りうさぎの統率者が誰かに討伐されたらしいんだ」
「…ん?」
…北の森のうさぎ?
俺の頭の中に1匹該当するモンスターが上がる。
事前に話をしていたししゃもが、睨む様に俺の方を見ている。
「蹴りうさぎの統率者ってこともあって、蹴兎って言う蹴りうさぎの進化した種族で蹴り技に秀でてるらしく、斬撃を飛ばす[斬脚]や、無数の蹴りを一瞬で入れる[乱脚]を使うらしい」
「へ〜、すごかね〜。絶対強かやんそのうさぎ?レベルはどのくらいやったと〜?」
「……」
「確かにその住人に聞いた限りでは、レベル70以上は確定って言ってたね。どっちにしても、初心者の街の近くで出ていいモンスターな気はしないけど……ってロイドもししゃももどうしたの?」
俺の頬を汗が伝っているのがわかる。
「なんか、顔色悪かよ?ししゃもも、ロイドばそげん睨んで…どげんしたと?」
「い、いや何というか…」
「はぁ…なぁ、アーサーその蹴りうさぎの統率者ネームドモンスターだったりしねぇか?」
「うん、そうだけど…」
「そして名前は、デム・シュトーセンだったか?」
「なんだ、ししゃもも知ってたの僕みたいに住人にでも聞いた……わけじゃなさそうだね。ねぇ、ロイド僕たちがいない間に何したの?詳しく教えてよ」
「?」
ましゅまろはまだ理解できてないのか、首を傾げている。
アーサーは、ししゃもの言葉と俺の態度を見て理解したのか笑顔で問い詰めてくる。
俺は隠すこともないので、午前中の出来事を話す。
…別に、アーサーの笑顔の圧に押されたからではない……決して。
◆
それからボス戦の順番を待つこと、1時間程度俺たちの番が来る。
この草原のボスは、ビックスライムと言って、その名の通り大きなスライムだ。
特徴は何と言ってもその大きな体だろう。
普通のスライムを何倍にも大きくした体の中央部に丸い核の様なものがふわふわと浮いている。
だがただ大きいだけではなく、物理攻撃に対する耐性を有しており、魔法を使えるプレイヤーがいない状態では、厳しい相手だ。
そのためか、どのパーティも魔法職がいる。
その上、[水魔法]を使ってくるので、ヘイトの管理が重要になってくる。
「さぁ、僕らの番だ。ロイドからのまさかの告白があった後だけど、気にせず全力で行こうか」
そう笑顔で、俺たちに声をかけるアーサー。
気にしないなら、触れなくていいじゃないか…。
俺はそんなことを思いつつも、今から始まるのボス戦に意識を向ける。
今回の俺たちの作戦は俺が盾役、アーサーと、ししゃもが攻撃、ましゅまろは前回と同じ回復役だ。
俺は盾役といっても回避盾で、ボスのヘイトを受けるのが役目なので、気配希釈などの隠れるスキルを使わない様にする。
そして、ボスのヘイトが俺に向いている間に、アーサーと、ししゃもが攻撃を入れる。
アーサーと、ししゃもに攻撃が飛んだ際は、ましゅまろがポーションを投げつけて回復という流れだ。
先制攻撃は、俺の[影魔法]でボスの動きを止め、最初のうちに出来るだけボスのHPを減らす。
[鑑定]使ってビックスライムを見る。
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ビックスライムLV.12
モンスター:敵対
称号【ボス ヌールの街草原】
スキル[水魔法][物理耐性]
草原のボス。
スライムの進化個体の一種。
大きくなったことにより動きが遅くなったが、魔法を覚えた。
その液状の身体は非常に大きく、弱点である核に攻撃が全く通らない様になっている。
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俺は、ボス戦の前にあらかじめ[薪の炎]を使用しておく。
ボス戦はこちらから攻撃を仕掛けない限り、ボスは動かないという結構な親切設計だ。
そうこうしているうちに短刀の刀身が真っ赤にになる。
「アーサー、準備できたぞ」
俺がそういうと、アーサーはコクリと頷き、
「じゃあ、頼んだよ!」
そう俺に告げる。
俺もそれに答える様に、魔法を発動する。
「影魔法『影縫い』」
発動とともに俺の影が伸び、ビックスライムをガッチリと固定する。
ビクッとスライムの身体が震えたかと思うと、停止する。
「今だ!一気に行け!」
アーサーの言葉とともに一斉に攻撃を始める。
ししゃもは斧で、アーサーは槍で、俺は短刀と短剣でそれぞれ攻撃を加えていく。
「[強撃]!」
「[刺突]!」
2人も職業レベルが上がっている様で、それぞれ技を使っていく。
「[急所打ち]!」
スキルを使った俺の攻撃は、弱点であろう核の直線上に向かってスルリと向かっていく。
というのも、その身体が大きすぎるが故に短刀では全く核まで攻撃が通らないのだ。
だがそこに追い打ちをかける様に、短刀の炎が突き抜け、ジェル状のスライムの身体を蒸発させる。
その抉れている場所に向けてもう一度短刀を振り、さらに抉る。
これを続けることで、どんどん核に近づいていく。
ビックスライムの身体を切り裂き続けていると、MPが無くなったのか、完全に動きを止めていたビックスライムの身体が動き出す。
するとビックスライムは俺の攻撃でえぐれている部分を治すために、身体を集め抉れている部分を塞ぐ。
数秒後には、完全な状態になっている。
だがその姿は、最初の様な大きな身体ではなく、半分程度のおおきさになってしまっている。
「なんか可愛くなったね」
「そうやね、まぁ、まだ普通のスライムと比べたら結構大きいけどね」
「そうだな、まさか小さくなるとはな…」
「ロイドが関わると変なことばっか起こるな」
ししゃもに皮肉を言われた気がするが気にしない。
俺は、MP回復ポーションを飲み風魔法を撃つ
「風魔法『風弾』」
俺の放った風の弾丸は、ビックスライムの身体にあたるが、止まることなくそのまま真っ直ぐ直進し、ビックスライムの身体を貫通する。
その攻撃にビックスライムのヘイトがこちらに向く。
「[強撃]!」
「[刺突]!」
ビックスライムがこちらに向かって、[水魔法]を撃っている間に、アーサーたちが攻撃を入れる。
アーサーの攻撃がビックスライムに突き刺さり、核にかする。
すると、先程までミリ単位でしか削れなかったビックスライムHPがガッツリと削れる。
これに焦った、ビックスライムがアーサーに向かって魔法を放っていくが、その隙に次は俺が風魔法でビックスライムを攻撃する。
アーサーのHPは削られるが、そこにすかさずましゅまろがポーションを投げる。
「このまま押していこう!」
◆
先ほどの流れを3回ほど続けたところで、ビックスライムのHPはあと一撃で無くなるほどにまで減った。
「最後の一撃だ![刺突]!」
アーサーの放った一撃は、ビックスライムのジェル状の体を突き抜け、核に突き刺さる。
すると、ビックスライムの核は粉々に砕け散る。
それとともにビックスライムの身体が粒子に変換される。
《草原のボス[ビックスライム]を討伐しました》
《これにより次の街への道が通行可能になります》
《ボス討伐報酬[装飾石]を取得しました》
「おつかれ〜」
「結構早めに終わったな」
「まぁ、殆どロイドのおかげだがな」
「初のボス戦としてはまあまあだったんじゃないかな?」
こうして俺のパーティー戦初のボス戦は、終了した。




