30話
投稿遅くなり申し訳ないです
○冒険者ギルド
訓練場を出てギルド内を見渡し、ししゃもを探す。
朝とは違い、ギルド内は賑わっていた。
ししゃもの様な仕事終わりの社会人や学校帰りの学生たちが一気にログインしてきたのだろう。
こうしてみてみると、本当にいろんな人がいるな。
腰に直剣を携え、左手には盾をつけて革製の鎧を身に纏い、掲示板を睨む様にみている人間の男。
身の丈ほどの弓を背中に背負い、緑色の髪に地面と平行に伸びた長い耳を持つロリエルフ。
顎に長い髭を蓄え、椅子の上に片足を乗せた状態で、その褐色の筋骨隆々たる体を見せつけるかの様にポージングする低身長の男ドワーフ。
三角の猫耳を頭の上でピクピクと時々動かし、不安そうにギルドの中を歩いている2人のロリショタ。
厨房のカウンターに手をかけピョンピョンと飛び跳ね、一生懸命に料理人に声をかけているショタ、小人。
猫耳の2人の獣人は、似た様な顔をしているところを見ると双子なのだろう。
と言うか、ロリやショタの割合高くないか…?
そんな事に考え、ギルド内を見ていると灰色髪の獣人、ししゃもを見つける。
ししゃもは昨日と同じ席に座って、コップに入った琥珀色の液体を飲んでいる。
彼1人しかいないところを見ると、まだみんなログインしていないみたいだ。
ししゃものいるテーブルまで歩いていく。
ししゃもはコップを片手にメニューをいじっている様だ。
俺は、ししゃもの前の席に座るがししゃもはこちらに気づいてない様なので、声をかける。
「おい、ししゃも」
「うおっ!」
俺が声をかけるとししゃもを驚き、体がビクッと跳ねる。
あ、耳と尻尾がピンと立ってる。
「ろ、ロイドか…いつからいたんだ。驚かさないでくれ」
「いや、別に驚かそうとしたわけじゃないが」
「じゃあなんで、スキルまで使って気配消してるんだよ」
訓練場の時のままにしてしまっていたらく、俺はスキルを発動したままだった。
俺は慌てて、スキルを解除する
「これで大丈夫か?」
「ああ、それなら大丈夫だ。バッチリわかる」
そう言ってししゃもはグッとサムズアップする。
「それで、何してたんだ」
「いや、なんだ。昨日のレベルアップ分のステータスポイントを今のうちに振っておこうかなと思ってな」
そう言いながらもメニューを睨み続けるししゃも。
どうも、INTとSTRどっちを重点的上げるか悩んでいる様だ。
STR=INTが無難なんだろうが、ししゃも的には1 : 1.5くらいの割合で振りたいらしい。
STR≧INTかINT≧STRなら、STR≧INTの方がいい気がする。
ししゃもは、武器が斧だからある程度のSTRは必要だろう。
そう考えると、STRの方をあげた方がいいと言うのが俺の意見だ。
それをししゃもに伝えると、ししゃもは顎に手を当て悩む仕草を見せる
「確かにそうだが、そうなってくると必然的にINTが低くなってくるから、魔法の火力が低くなるだろ?」
「そう言うものだろ。STRとINTの両方を上げると考えるならどの道中途半端で終わるだろ」
「うっ…だがそれじゃあ、ド派手に魔法打ち込めないだろ…。魔法を纏った斧でドカーンってする俺の夢が…!」
そう言って、頭を抱える。
そこまで落ち込むのか…。
確かに、そんなことが出来たら最高なのだろうが、そんな高火力出すためには1 : 3ぐらいの割合にしないといけない気がする。
そんな振り方するくらいなら、極振りした方がいいだろう。
「高火力出す方法か…ステータス以外の装備頼りになるんじゃないのか?」
「やっぱりそうなってくるよなぁ。でも装備にも限界があるし、装備頼りだと元のステータスが低い分素材集めで苦戦しそうだ」
素材集めか…その位なら手を貸してもいいが、時間が合う日があまり多くないだろうからきついか。
そうなってくるとステータスを上げる必要があるのか、考えるなら常時発動のパッシブスキル、称号、あとは加護か?
スキルや称号は、調べれば取得方法はわかるだろうが、そう言った基礎ステータスを上げるタイプのやつは、取得条件がキツかったりする。
いい例が、俺の持っている【大物狩り】だろう。
効果は"相手よりも種族レベルが低い場合、ステータス50%上昇"デムやアルブトーラムなどの自分より種族レベルの高い相手に対して効果を発揮するタイプだ。
50%上昇と高い効果を誇っているが取得条件が"自分の種族レベルの三倍以上のレベルのボスorレアモンスターを単独での討伐"とゲームを進めれば進めるほど取得難易度が高くなっている。
そう考えるとーーー
「加護あたりが妥当か…」
「加護かぁ…どうすればいいんだ?」
「どうすればって?」
ししゃもは、そう言って疑問を口に出す。
「試練てのをクリアしないといけないんだろ。その試練はどこで受けられるんだよ?」
「ああ…それなら」
俺はししゃもに神殿の祈りの間で、神の試練を受けることができることを説明する。
これはハイレンの言葉が気になってネットで調べた時に出てきたことだ。
祈りの間にて、神を象った像の前で祈ると一定確率で神の試練を受けられると言うものだ。
「それなら、確かに一番手っ取り早そうだな。今度1人でやるときに試してみる」
ししゃもはそう言ってメニューを閉じ、コップに入った飲み物を飲む。
そして、コップをテーブルに置くとししゃもはまた話を始める。
「なぁ、話は変わるんだがロイドは[隠蔽]のスキル取ってたっけ?」
「唐突だな…まぁとってはいるがレベルはそんなに高くないぞ」
「取ってんのか?なら今からレベル上げしねぇか。俺も取ったはいいけど全くレベルが上がらないから」
ししゃも曰く、[隠蔽]のスキルのレベルを上げるためにお互いに[識別]を掛け合うらしい。
[隠蔽]のレベルも上がるし[識別]もレベルが上がるので、一石二鳥だそうだ。
断る理由もないので、俺はそれを快諾する。
「じゃあ始めるぞ」
「おう」
コップ片手にししゃもは俺に[識別]をかける。
それに習うように、俺もししゃもに[鑑定]をかける。
すると目の前にししゃものステータスが浮かぶ。
ししゃも側にも俺のステータスが見えているようで、じっくりと見ている。
「ロイドまたレベル上がってるなぁ…。昨日も思ったがAGI高くねぇか?」
「その分他に全然触れてないがな」
「称号も、色々あんなぁ。大物狩りに歴戦討伐者、理より外れし者に、北の森の……ッ!」
そこまで読んだところで、ししゃもは飲んでいた飲み物を吹く。
そして、まるで確認するかのように俺に向けて目を向ける。
俺が頷くと、目を見開きステータスと俺を交互に見ている。
「……ハァハァ、覇者ってなんだよ覇者って。ロイドお前、午前中のうちに何した…」
「いや何をしたというか、成り行きというか…」
「成り行きで覇者になるやつがいるかよ!」
「居るだろここに」
「そういうことじゃねぇよ!」
そんな声を張り上げて叫ばなくてもいいだろ…。
俺は、森でのデムとの戦闘についてししゃもに説明する。
ししゃもは、コップ片手に映画感覚で俺の話を聞く。
「はぁ、俺の知らないところで仲間がなんかすごいことしていた件」
「悪いのは、俺の頭蹴ってきたデムの方だ俺は悪くない」
そうだ、蹴ってきたデムの方が悪い。
思い出したら少しムカついてきたな。
デムと出会ったときのことを思い出し、そんなことを考える。
そんなことを考えながら、[隠蔽]のレベル上げを続ける。
◆
「こんなもんでいいだろ」
そうやって黙々とレベル上げを続けること数十分、[隠蔽]も[鑑定]も何度かレベルアップしだところでやめる。
このレベル上げで、[隠蔽]は8から13に、[鑑定]は2から7まで上がった。
[鑑定]の方は、レベルが低かったこともあり、結構上がった。
「やっぱり、レベル低いと上がりやすいな」
「そうだな、俺も今回のやつだけで結構上がったしな」
ししゃもの方も元のレベルが低かったらしく、結構上がったようだ。
[隠蔽]のレベル上げのためにも、またしときたいな。
そんなことを考えながら、メニューから出したジュースを飲んでいると。
「ごめん、遅くなっちゃったね。その辺でましゅまろ拾ってきたから」
「拾ってきたってなんよアーサー。ちょっと迷っとっただけやん。遅くなってごめんね〜」
そう言って、アーサーとましゅまろが到着する。




