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看護師やってます  作者: 久蔵 出雲


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8/8

スカッとしたかもしれない話

 このエッセイ、自分が看護師になるまで~なってからを順序だてて書いていく予定だったのですが、どうもそういう書き方が苦手みたいでうまく書けないので、今回からは自分の経験談を年代とか関係なく思い出したことを書きたいと思います。


 ちなみに、こちらのエッセイは完全に私の息抜き的なものでしてサクッと書ける内容の物しか書きません。故に本職というかちゃんとした小説の方もしっかり平行しながら書いているので、そちらのファンの人は心配せず読んでください。


 ここで書くのも微妙ですが次回作は逆行転生ものです。


 さて本題。


 以前長く勤めていた病院での話。


 なんやかんやあって、六年以上いた病棟から他の病棟に異動することになったんです。


 といっても、職員や患者様が変わるだけで治療内容はほぼ同じなので、そう難しいこともない感じの異動でした。


 ただ、噂でその移動先の病棟は人間関係が悪くて人が何人も辞めているって話は聞いていました。


 なんにせよ、とにかく淡々と業務をこなすのみと思っていた私は特に気にせずその病棟への異動を受け入れました。


 他の人もそうだと思いますが、同じような内容の仕事で階が変わっただけといえど異動当初は患者様のことをしっかり把握するために、じっくり観察し何事でも一つ一つ確認するので時間がかかると思います。


 もちろん私も同じで、異動になった当日から夜勤をやらされたのですが『まじかよ!』と思いながら、ゆっくり一人一人をしっかり観察しながら業務をこなしました。


 ミスがあったらいけませんしね。


 しょっぱなから見習いもつけてもらえなかったのですが、その分のびのびと仕事をさせてもらいました。


 ですが、一緒に夜勤に入った相手チーム担当(病棟担当はチーム別担当)には迷惑かけました。


 そして初めて一緒に夜勤して思ったようです。


『こいつ、仕事遅いやん』


 と。


 忙しい現場です。


『はじめてなんだからしょうがないじゃん!』


 なんて言い訳は通じません。


 ※今はそんな現場ないと思います。


 実際、次の日その職場のツボネーゼ1号と2号に早速報告したようでした。


『出雲は仕事が凄い遅い!!』


 とね。


 なんで知ってるかって?


 職場で話したことは全ての人間に共有されるのは当然のことです。


 誰にも知られたくなければ、どんなに仲の良い同僚相手でも話してはいけません。人の口に戸は立てられぬとはよく言ったものです。


 さて、話を戻します。


 それを聞いたツボネーゼ1号と2号。これで異動してきた出雲をいじめるネタができたとウハウハしたかどうかはわかりませんが、それをネタにしようとしていたようです。


 それから間もなくある日曜日、1号と2号、そして出雲と言うメンバーで日勤の日がありました。


 看護業務はまず、朝申し送りをうけ気になる患者様のところから順に検温や排せつ介助、処置に回ります。それからその他の業務をこなし時間があれば記録をして、昼食の準備をします。


 昼食の準備とは、主に経管栄養の準備です。経管栄養っていうのは鼻からチューブを通したり胃に直接穴をあけてチューブを通している人に、高栄養の液状の栄養剤を直接注入することで、その人たちのお薬を白湯で溶かして準備したりするのです。


 薬を懸濁ボトルというボトルに入れて、適温の白湯で溶かしておく。それと、栄養剤の準備。それだけのことなのですが、人数が多いとやや時間がかかります。


 午後は終わってない仕事や排せつ介助なども手伝います。


 細かい雑務を省くと一日の仕事はこんな感じです。


 で、私も申し送りを聞いたあと早速検温に向かいました。


 一番最初の夜勤でじっくり患者様のことを観察・把握してしまっていたので、観察ポイントは押さえています。あとは最小限観察しなければいけないことをチェックし、日常会話をしつつ異変がないか観察しながら検温をします。


 ここで一つ言っておくと、教科書に書いてある異常・正常は時に現場では役にたたないことがあります。


 一番大切なのはその人を知ること。そして、その人の異常・正常を知ることなんです。


 なので、その人の正常かどうかを見極めることさえできれば検温時の観察は結構短縮できたりします。


 そんな感じでさっさと検温ラウンドを終わらせ、詰め所に戻るとまだ1号も2号も戻ってきてませんでした。


 なにやってんだろう?


 そう思いながら、パソコンに向かって入力。もともとパソコン苦手ではないので、あっという間に入力も記録も終わります。


 その病棟はそんなに忙しい病棟ではなかったのでこんなに早く終わるってのもあります。忙しい病院だとこうはいかないと思います。


 早めに自分の仕事が終わってしまったので日曜日にやらなければいけない処置をしようと思い、処置表を確認したところ、その日は経管栄養のチューブ(ノーズガストロチューブ、鼻から胃に通すので略してNGチューブ、もしくはマーゲンチューブ略してMTともいう)の交換日でした。


 文字通り、鼻からチューブを胃袋にいれて留置しておくものなのですが、衛生上一週間に一度交換しなければなりません。


 ※現在では、チューブが肺に入ってしまってそれに気づかずに栄養剤を注入し死に至らしめる事故から、NGチューブの交換は看護師の仕事ではなくなっています。


 私このチューブ交換とっても得意でした。その日交換する人数は6人『よしやったるぜ!』とばかりに準備をし、交換を始めました。


 その途中、何度か詰め所の前にある処置台に物品を取りに戻ったのですが、詰め所内を見ると1号と2号がパソコン入力を終えて、私に聞こえるように私の方を見ながらこんなおしゃべりをしていました。


 ツボネーゼ1号「出雲、遅くなーい? まだ検温終わらないのかな」


 ツボネーゼ2号「あれさ、処置しながらラウンドするのはいいけど、いちいち物品取りにもどってきてるから遅いんだよね」


 ツボネーゼ1号「この前の夜勤も相当ラウンドに時間かかってたらしいよ~」


 ツボネーゼ2号「人不足で異動してきてんのに、これだったらいらないよね~」


 聞こえてますよ~! と、言いたいのをグッとこらえて『仕事遅いのはおめーらジャマイカ』と内心思いながら、淡々と私はチューブ交換しました。


 そして6人のチューブ交換を終えて、今度は経管栄養の準備に取り掛かります。


 すると、詰め所から1号と2号が慌てて飛び出てきました。


 ツボネーゼ1号「いいよ、やらなくて。出雲さんまだパソコン入力も終わってないんでしょ?」


 ツボネーゼ2号「そうだよ、経管栄養の準備は私たちやっておくから早く記録しちゃいなよ」


 私「え? 私、記録終わってますよ?」


 ツボネーゼ1号、2号「え?」


 私「なんなら、今日のやらないといけない処置全部終わってますけど?」


 ツボネーゼ1号、2号「ふぁ?!」


 それから二人は大慌て。


 ツボネーゼ1号「出雲さんはあと何にもしなくていいよ、座ってて!!」


 とか言ってました。そりゃそうだ。ラウンドと記録終わらせただけで何にもせずに余裕ぶっこいて詰め所で堂々とおしゃべりしてさぼってた訳ですものね。


 この話、ある日話の流れで後輩に話したところ、後輩はこの二人にいじめられていたことがあったそうで『溜飲が下がったありがとう』と感謝されたのでした。

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