19 嘘も方便
お待たせしました。
トーマスがセフィリアの様子を見に来たちょうどそのとき、同じくセフィリアの様子を見に来ていた勇馬と鉢合わせになった。
「おお、ユーマくん。シスターセフィリアの様子はどうだい?」
「まだお休みになっています。流石に徹夜で根を詰めた作業をされれば仕方がないとは思いますが」
勇馬の言葉を聞いたトーマスが渋い顔をしたのを勇馬は見逃さなかった。
「トーマスさん、何かありましたか?」
「ユーマくん、実はね……」
トーマスは先ほど騎士団からセフィリアに宛てて追加の依頼があったことを伝えた。
「そんな! 昨日あれだけのことをしたのにまだ足りないんですか?」
「どうやら今回の魔物はアンデッドばかりでその数も数千というとんでもない規模になっているらしい。今朝納めた数だけではとてもじゃないが足りないということだ」
数千という数を聞いて流石に勇馬も背筋が凍った。
アンデッドといえば物理攻撃はあまり効果がない魔物であり光属性が何よりも効果的ということは勇馬も知っている。
「わかりました。私からセフィリアさんにはそのことを伝えます。一応ギルドのみなさんにはセフィリアさんの手伝いとしてこの部屋に武具の運搬をお願いして下さい」
「わかった。早速起きた者たちを使ってこの部屋に武具を運びこんでおこう」
トーマスはそう言うと直ぐに部屋から出て行き、代わりに武具を運ぶ台車が次々と作業部屋へと集まってきた。
今回は攻撃重視ということで槍や剣、斧といった武器ばかりとなっている。
勇馬はセフィリアの希望という建前で部屋の入口に衝立を設置してもらい『自分が』これからする作業の準備を整えた。
「アイリス! しばらくこの部屋には誰も入れるな。シスターセフィリアの指示だと言って構わない」
「承りました!」
勇馬はアイリスの返事を聞いて軽く頷くとマジックペンを顕現させた。
(セフィリアさんがこんな状態では俺が何とかするしかない! 今回は新しいこいつを使わせてもらおう)
勇馬が顕現させたマジックペンのキャップの色は黄色。
光属性を付与することができるマジックペンだ。
勇馬は早速『印判モード』に設定して版下を作成する。
作るのは光属性に加えて重量軽減20%を付与できる印判だ。
勇馬はセフィリアとの作業の合間に聖印は1週間程度しか効果が続かないと聞いたことを思い出して有効期間はそれに合わせて1週間に設定した。
勇馬は印判を完成させると試しとして近くにあった鉄の槍に印判を押した。
そして直ぐに鑑定スキルを発動させる。
――鉄の槍【重量軽減20%(有効期間1週間)、光属性(有効期間1週間)】
勇馬は思わずガッツポーズを作った。
今日、もう1話投稿予定です。




