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10 レベルアップ

 日の出とともに警戒・監視の任務を受けた騎士団の隊員たちが各地に散らばっていく。


 しかし昼にもならないうちに隊員たちが次々に報告を挙げてきた。


「西方よりアンデッドの群れ、数およそ2000、昨日報告のものは第一陣であると思われます」

「北西よりアンデッドの群れ、数およそ1000、魔の森から続々と溢れるように出てきており数は更に増える模様」

「北からも同様にアンデッドの群れ、数は2000から3000。ここレスティと隣国ラムダ公国とをつなぐ街道を埋め尽くしています。民間の被害は不明。大元は魔の森から出てきたものと思われ別集団と思われます」


 騎士団からの報告を受けてリートリア辺境伯は正式に領都防衛のための指示を出す。


「やつらの目的地はこのレスティだろう。このままの速度でいつごろ到着する?」


「明後日の朝には」


 第2騎士団団長のジェイクがそう答えた。


「教会にはアンデッド対策の準備を急がせろ! 冒険者ギルドには正式にレスティ防衛のために緊急の強制クエストを出せ! 市民には城壁外、特に北から西にかけては危険であることを周知せよ。物資の買い占めが起こるかもしれん。物資については統制をかけよ。状況によっては徴発して配給制にせよ」


 辺境伯は次々と指示を出していく。


 レスティの市民には公式には何の発表も出されていない。


 しかし街を出入りする商人や冒険者からレスティに迫る危険について噂は広まっていた。


「多数の魔物がこのレスティに向かってきているらしい」

「アンデッドだってよ、どうする。逃げるか?」

「北はダメだ。逃げるなら南だ」

「冒険者に護衛依頼は出せないのか?」

「馬車の手配をしろ! 金はいくらかかっても構わん!」



 噂が噂を呼びレスティ内では混乱が起こり始めていた。








 そんなこととはつゆ知らず、勇馬は宿でのんびり過ごしていた。


 今日は久しぶりの休みである。


「そういえば最近、マジックペンのメニュー画面を開いていなかったな」


 最初に見たときマジックペンはレベルが1となっていた。ひょっとするとレベルが上がっているかもしれないし何か新しいことができるかもしれない。


「メニュー」



 ――マジックペン(レベル2・カラーペン)


『色つきのマジックペン。物質にその色に応じた属性効果を付与することができる。

 赤色:火属性、青色:水属性、緑色:風属性、茶色:土属性、黄色:光属性』


 付随スキル 

 アクティブ:付与鑑定(物に施された付与の状態を視ることができる)

 アクティブ:印判モード(同一内容の付与を連続で施すことができる)




「おっ、レベルが上がってるぞ! 新しいスキルも!」


 今のところ使う予定はないが属性の付与ができることになれば仕事の幅が広がりそうだ。


 さらに嬉しいのが『印判モード』のスキルだ。

 このスキルがあれば以前の様な単純な大量作業も腱鞘炎になることなくできそうだ。


 そう思っていた矢先に息を切らせたアイリスが部屋に飛び込んできた。



主様あるじさま、緊急の招集です! 付与魔法ギルドへお急ぎ下さい!」



 混乱は勇馬の直ぐそばにまで近づいていた。


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