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4 冒険者登録

 アイリスの冒険者の個人授業が終わった。


 この授業は冒険者ギルドに併設された訓練場で行われていたため、勇馬は帰り際に冒険者ギルドでアイリスの冒険者登録をさせられる羽目になった。


 勇馬としては正直アイリスに冒険者の様な危ない仕事をさせたくないという思いがある。


 しかしアイリスに才能や実力がないという事情がなければ本人のやりたいようにやらせてもいいだろうという結論に至った。


 というよりも冒険者ギルドの受付の前でアイリスに捨てられた子犬のような表情で見つめられたことが大きかったのは事実である。




「冒険者についての説明を希望されますか?」


 受付嬢にテンプレの言葉を掛けられ勇馬は「はい」と答えた。


 登録をするくだんのアイリスはクレアの授業で冒険者ギルドの仕組みについてかなり詳しい説明を受けてはいる。

 しかし、クレアの授業の内容に抜けがないとは限らない。

 また、授業の復習にもなるからとアイリスも率先して説明を受けることを求めた。


 冒険者として登録をする予定のない勇馬も自分の頭の中にある『異世界の常識』には冒険者の常識は入っていなかった。

 元ライトノベルオタクの勇馬としては冒険者の基礎知識についてはやはり押さえておきたかったということもあり、アイリスのおまけとして説明を聞くことになった。


 冒険者ギルドの他の職員から別室で冒険者としての簡単な説明を受けた。


 テンプレの冒険者のランクについての説明からクエストの受け方、報告の仕方について教わる。


 倒せば魔石を残して消滅する魔物は魔石そのものが討伐の証拠となる。


 魔石を見れば魔物の種類が判別することができるそうだ。


 倒しても身体が消滅しない魔獣については討伐の証拠は魔石でもいいし、その身体の一部、つまり討伐部位でもいいそうだ。

 もっとも魔獣から必ずしも魔石が取り出せるとは限らず、取り出すのが大変なことも多いらしいので実際には討伐部位による認定がおもとのことだ。

 討伐部位については魔獣の種類ごとに決められている。

 魔獣の場合は、討伐部位以外も素材によっては買い取りの対象となるため、余裕があれば持って帰りたいところだ。


 アイリスは主な魔獣の買取対象の素材や部位をクレアから教えられており、その知識が役に立つ日を心待ちにしていた。


 アイリスと勇馬が別室で説明を受けている間にアイリスの冒険者ギルドのギルドカードができていた。

 説明を終えてギルドカードを受け取ると冒険者ギルドを出た。



「えへへ、私のギルドカードです」



 宿への帰り道、アイリスは冒険者ギルドで発行されたばかりのEランクのギルドカードを眺めてうれしそうにしていた。


「おいおいアイリス、よそ見しながら歩くなよ。危ないぞ」


 アイリスは「は~い」とは言うもののどこまでわかっているのか怪しい限りである。


「まったくしょうがないな……」


 勇馬は右手でアイリスの空いている左手を軽く掴んだ。


「あっ……」


 いきなりの感触にアイリスはふと我に返った。


 最初は驚いたアイリスだったがそのまま軽く勇馬の手を握り返した。

 

 手をつないで歩く2人の表情は緊張のためか固い。


 宿への道のりを俯いたまま黙って歩く2人を街を行き交う人たちは不思議そうに眺めていた。


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