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1 冒険者

【登場人物おさらい】


 シェーラ  

 ショートカットの白銀色の髪の狼獣人の女の子冒険者。近接戦闘職のボクっ娘。


 ケローネ

 肩口までの長さの青みがかった髪の猫獣人の女の子冒険者。とんがり帽子に薄い青色の魔女服、濃紺のマントの典型的な魔法使いスタイル。

 勇馬とアイリスは夕方、シェーラとケローネの獣人冒険者2人組が宿泊している宿を訪ねた。


 時間も時間であったことから4人で夕食を食べに出ることになった。



「最近の冒険者ギルドの様子はどう? 仕事はある?」


「最近はクエストがいっぱいでうれしいです!」


 勇馬の質問にケローネは満面の笑みで答えた。


「でも最近は報酬の受け取りに結構時間がかかるよ。クエスト報告以外にも魔石や素材の持ち込みが増えてるみたい」


「魔物が多いのでしょうか?」


「ボクたちはこの街に来たばかりだからよくわからないけどメルミド周辺より多いのは間違いないと思うよ」



 シェーラがアイリスの疑問に答えるとアイリスも「ふむ」という顔になった。


 冒険者が報酬を得るには大きく分けて2つのルートがある。


 1つは冒険者ギルドから出されている依頼、すなわちクエストを受注してそれをこなすというものだ。

 今アイリスが受けている個人授業も勇馬が冒険者ギルドに依頼を出した一種のクエストである。

 

 もう1つは、魔石や素材を持ち込んで買い取ってもらうことである。

 魔石や常に需要のある素材についてはいつでも窓口で買い取りをしてもらうことができる。

 素材は地域性や時期による需給状況で値段の変動があるが魔石については比較的安定した値段で買い取ってもらえるとされている。



主様あるじさま……」


 アイリスが勇馬をねだるような目で見る。


「まだダメ。先生の許可が出てからね」


「む~」


 アイリスはむくれるような表情をして不満を表した。


「なになに、アイリスさん何かやってるの?」


「今、冒険者になるための個人授業を受けさせているんだ。ほら、いきなり冒険者になるだなんて危ないだろ? そういえばシェーラたちは冒険者になるとき誰かから何か習ったりしたのか」


 勇馬がシェーラに問い返すとシェーラは頬を掻きながら答える。


「ほら、ボクたちはお金も伝手つてもなかったから我流だよ。いきあたりばったりってやつかな」


 あはは、とシェーラが笑う。


「もともと冒険者って自由な職業ですからね。皆さんやりたいようにやるっていう方が多いと思いますよ」


 そう補足したケローネによると冒険者になる場合、知人の先輩パーティーに入れてもらって実戦からイロハを学ぶということはあっても予めレクチャーを受けるということはほとんどないとのことだ。


「じゃあ、冒険者学校っていうのもないのか?」


「そんなの聞いたことないよ。まあ、あってもお金がかかりそうだからボクたちはいけないだろうけどね~」



 そういえばこの世界に来て学校というものを目にしたことがないと勇馬は気付いた。


 自分のいる付与魔法ギルドでも年若い者は先輩付与師の工房に弟子入りして勉強している。


 基本的には徒弟制とていせいであり広く勉強する機会を与えるという考えは一般的ではない。


「じゃあ、普通の人はどうやって勉強するんだ?」


「貴族や大商人は家庭教師を自宅に呼んで勉強させるのではないでしょうか? 中流階級用の学校もあるにはありますがみんなが行っているというわけではないようです。親が自分で教えたり、知り合いに勉強を教えてもらったりということもあるそうですよ」


「そういえば教会が子どもたちに簡単な勉強を教えてくれるよ。ボクたちも孤児院にいるときにちょっと教えてもらったことがあったし」


 シェーラやケローネが育った孤児院は教会が運営する孤児院であり、教会は布教の一環として街の子どもたちに勉強を教えることがある。

 とはいっても、その教会の運営者の個人的な活動であって教会全体として組織だって行われているわけではない。内容も簡単な読み書きや計算などであり、体系立ったカリキュラムがあるわけでもない。


「まあ、どっちにしてもアイリスが冒険者になるのはまだまだ先の話だ」



(そもそも許すかどうかもまだ決めてないけどな)



 勇馬は心の中でそう付け加えてこの話を終わらせた。


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