24 膝枕
ほとぼりが冷めたころ、勇馬はそ~っと宿の部屋へと戻ってきた。
アイリスは勇馬が戻ってきたことに気が付くと床に膝と手をついて頭を下げた。
いわゆる土下座である。
「主様、先ほどは無礼な物言い申し訳ございません。罰はなんなりとお受け致しますのでご随意に」
「えっ?」
突然のことに勇馬も面食らってしまった。
そして改めてこの世界における奴隷というものがどういうものなのかを思い知った。
勇馬としては特に罰を与えようという気はなかったものの、せっかくなのでこれまでアイリスに頼みたくても頼みにくかったことをしてもらうことに決めた。
チキンな勇馬には絶好の機会であった。
「主様、これでよろしいでしょうか?」
勇馬がアイリスに頼んだことは膝枕である。
この日のアイリスは膝丈くらいのスカートに薄手の白色のブラウスを着ている。
ベッドの上に正座をしたアイリスのふとももに勇馬はそっと後頭部を乗せた。
アイリスのやわらかなふとももの感触に勇馬は感激を覚えた。
「主様?」
声を発さない勇馬をいぶかしく思ったアイリスが勇馬の顔を覗き込んだ。
人間とは違うわずかにとがった耳、金色の髪、整った顔立ち、よく見れば瞳の色はうすい金色であり今更ながらそのことに気付いた。
(アイリスの顔をこんなに近くから見たことはなかったな)
勇馬はアイリスを大事にしているつもりでそのことが逆にアイリスを不安にさせてしまったことを今更ながら反省した。
(こんなことじゃあ主人失格だよな)
そうは思いながらも今は小さな幸せを楽しむことにした。
その後勇馬は仰向けからうつ伏せになっていろいろと堪能しようとしたがアイリスから「もう終わりです」と打ちきられてしまった。
その後再開したアイリスとの主従会議では冒険者となることは危険なので現時点では却下。
ただし勇馬の役に立ちたいというアイリスの意思は尊重しようということになり勉強をする機会は与えることになった。
アイリスが学ぶことになったのは冒険者になるための勉強と使用人になるための勉強である。
両者を並行して進めることになった。
後者は勇馬が強く希望したことは言うまでもない。




