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23 主従会議

 勇馬たちは昼食を終えるとその場で別れた。 

 

 シェーラとケローネは夜通しのクエスト明けのため起き続けるのも我慢の限界ということで昼ご飯を食べたら直ぐに宿へと戻ってしまった。

 

 その際、宿の場所を聞いて再会を約束して別れた。

 

 勇馬は先ほどのアイリスの言葉の真意を確かめるため自分たちの宿へと戻って来た。



「アイリス、さっきの話だけど本気か?」


主様あるじさま、以前から考えていたのですが、私は主様あるじさまのお役に立っているとは思えません。この街に来るときにも主様あるじさまをお守りするどころか一緒になって守られている有様です」


 勇馬がアイリスを買ったのはイチャコラするのが目的であり、特別何かをさせるつもりはない。


 ましてや自分の身を守らせるつもりは毛頭ない。

 

 つまりはアイリスが思っていたとおりアイリスの立場は『愛玩奴隷』なのだが2人の意識の違いが今回の行き違いを生み出してしまった。



 勇馬が時間を掛けて親密になろうと手順を踏むことを考えているのに対し、無理やり言うことを聞かせてこその奴隷というアイリスの奴隷観とにより齟齬が生じていた。


「アイリスはそのままでいいんだよ。それに仕事も手伝ってくれているじゃないか」


「あのくらいで仕事と言われてもやったうちには入りません!」


 世の奴隷と言われる者たちは日々過酷な仕事に従事させられている。


 アイリスの仕事は奴隷ではないそこらの平民たちの仕事と比べても格段に楽であることは間違いない。


「アイリスは俺の傍にいるだけで仕事なんだよ。癒しなんだよ」


「でも主様あるじさまは私なんかに女を感じてなんかいらっしゃらないじゃないですか。この前だって人間の魔法使いの女の人にはだらしない顔をされていました。やっぱりおっぱいですか? おっぱいなんですか?」


 アイリスはそう言って服の上から両手のひらで自分の胸を覆った。


 アイリスの胸は両手ですっぽりと覆える程度のサイズである。


 決して小さくはないがアイリスが言うくだんの魔法使いエクレールのものとは比べものにならない。


 確かにあれはいいおっぱいだった。

 巨乳は正義であると勇馬が思い返すほどのものである。



「ほら、やっぱり思い出しています!」


「いや、確かにエクレールの胸もいいものだけど大きければいいってもんじゃない。偉い人は言ったぞ。おっぱいに貴賤なしだ」


 本当は「エロイ人」なんだろうがそこは勢いで押し通す。


「そんな言葉は聞いたことがありません。主様あるじさまはいったい私をどうしたいんですか!」


 こんなに感情を露わにするアイリスは見たことがなかった。


 女の子がイライラしている理由を探ろうと知識を総動員させた結果、勇馬は思わず「あっ」と何か大事なことに気が付いたかのような言葉を発した。



「そうか! アイリスは女の子の日だったか!」



主様あるじさま!」



 初めて見るアイリスの憤怒ふんど形相ぎょうそうに危険を感じた勇馬は慌てて部屋を飛び出した。





「ふ~、危ない危ない……。危うくヤられるところだった」


 奴隷は主人を害してはいけないという誓約が課せられているため実際に勇馬が危惧するようなことは起こりようがない。


 しかし、勇馬には元々アイリスが奴隷であるという意識は希薄である。



 勇馬はほとぼりが冷めるまでしばらく外で時間を潰すことにした。

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