22 縁
トーマスはもうしばらく話をすることがあるということだったため勇馬とアイリスは先にお暇することとなりマスタールームを退出した。
「主様、もうしばらくは忙しい状態が続きそうですね」
「そうだね。まあ稼げるからいいっちゃいいんだけどね」
2人は会話をしながら1階のロビーに降りる。
「あっ、ユーマさんとアイリスさん!」
「えっ? ユーマさん?」
思わず名前を呼ばれて声のした方に視線を向けると、そこには数日前に別れた猫獣人ケローネの姿があった。
狼獣人のシェーラもケローネの言葉につられて受付での手続きをしながらこちらを振り返った。
「久しぶり……というほどでもないのかな?」
数少ない知り合いとの再会に勇馬は2人との縁を感じた。
「じゃあ、私は付与魔法ギルドに戻るよ。ユーマくんたちは今日の仕事は終わっているし好きにしたらいいよ」
4人で立ち話をしているとウルガンとの話を終えたトーマスがロビーに降りてきてそう言い残して冒険者ギルドを後にした。
トーマスにはこれから付与魔法ギルドに戻っての仕事が待っている。
勇馬たちはちょうど昼食時ということもあり4人で昼ごはんを食べることになった。
併設された食堂に入って4人掛けの席をとるとそれぞれ腰を下ろした。
「シェーラたちは受けられるクエストはあったのか?」
「はい! ここにはEランク冒険者向けのクエストも結構ありました」
「私たち、さっきもクエスト成功の報告を済ませたところですよ」
「へ~、どんなクエストだったんだ?」
「今回は『夜光草』の採取だね。夜に花が咲く植物で夜の時間以外に採取すると直ぐに枯れてしまう植物なんだ。夜通しのクエストで今朝街に着いて報告を済ませたところだよ」
冒険者ギルドが閑散としていた時間に会ったので疑問に思っていたがそういうクエストもあるんだと勇馬は感心した。
そんな勇馬の隣ではアイリスが何か思い詰めた様な表情をしていた。
「アイリス、どうしたんだ? お腹でも痛いのか?」
アイリスの様子が気になった勇馬がそう声を掛けた。
シェーラもケローネも心配そうな顔をしている。
するとアイリスは勇馬の顔を正面から見据えて口を開いた。
「主様、私も冒険者をやってみたいです!」
「「「はいいっ?」」」
突然のアイリスの言葉にその場の3人が同時に驚きの声を上げた。




