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34 風雲急を告げる

 

 

 勇馬が付与魔法ギルドに登録してからそれなりの月日が経った。



 勇馬は毎朝付与魔法ギルドに出かけていたがいつも午前中で仕事が終わってしまい何かもったいなさを感じていた。


 魔法の付与には相応の魔力を消費するとの説明を受けているがこれまで魔力の枯渇を感じたことはない。

 そのため、毎日ギルドへ行ってすぐに帰るよりは週に何回か行ってまとめて仕事を請け負うことができないかと考えた。





「なるほど。つまりは仕事をし足りないということか」


 勇馬は付与魔法ギルドにいって自分の希望を伝えようとしたところ、運悪く居合わせたギルドマスターのウォルグに引っ張られてマスタールームに来ていた。


「最近はお前のおかげでうちの仕事も順調に回ってこれ以上お前に回すことは難しい。お前にだけ多く仕事を割り振っていては他の者から苦情が出かねないしな。ただ、お前の言いたいこともわかった。いいだろう、お前の分の仕事はとり置いておくから毎週来る日を予め決めておいてくれ。それに合わせて割り振りをさせよう」


 勇馬は当面、月・水・金曜日の週3回ギルドに来るということにした。

 そうしてマスタールームを出ようとしたところ、副ギルドマスターのトーマスがノックもせずに部屋(マスタールーム)に飛び込んできた。



「ギルドマスター大変です!」



 トーマスのあまりの慌て様にウォルグもたしなめるのを忘れて直ぐに椅子から立ち上がった。


 トーマスは勇馬に視線を移すことなくウォルグの元へ駆け寄ると手にしていた1通の手紙を差し出した。


 ウォルグは手紙を受け取るとすぐに目を通す。





「何てこった……」


 ウォルグは手紙を読み終えるや力が抜けた様に椅子に腰を下ろすと天井を仰いだ。


 トーマスはウォルグの反応をじっと待っている。



 勇馬は話も終わっているし場違いな気がしたためそっとマスタールームから出て行こうとした。

 その気配にウォルグはふと勇馬を自分の視界に捉えると何かに気が付いたかのように、にっと笑みを浮かべた。



「いるじゃねーか。適役がよ」



 ウォルグの視線と言葉にトーマスもその意図に気付いた。


「確かにちょうどいいかもしれませんね」


 急に二人の男に見つめられて勇馬はぴたりと動きを止められてしまった。






 

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