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33 アイリスの憂鬱

(ようやくちゃんと出て来た)ヒロイン・アイリスの特徴(既出情報まとめ)


 種族:ハーフエルフ(とがった耳だがエルフほど長くはない)

 年齢:16歳(第1章27話)

 髪型:金色の長い髪の毛(第1章2話)

 身長:160センチにわずかに足りないくらい(ハーフエルフとすれば平均的)(第1章10話)

 体型:中肉中背(エルフとしてはどちらかといえば肉付きは良い方)(第1章10話)

 その他:生娘(第1章10話)


「は~」



 宿の大浴場で身体を洗いながらアイリスは溜息を洩らした。


 大浴場は男女でそれぞれ別である。


 この種の宿に泊まる女性は男性ほど多くはないこともあり、長期滞在者同士は直ぐに顔見知りとなる。

 

 宿の従業員たちとも同様であり、アイリスは既に彼女らとも顔見知りの関係になっていた。その中でも特に年齢が近い宿のオーナーの孫娘であるフィーネと主に受付をしているカリナとは会えば話をする間柄になった。



「おやおやアイリスちゃん、溜息なんてついてどうしたの?」


 たまたま一緒になったフィーネがアイリスの隣に座って尋ねた。


「いえ、別になんでもありません」


「ん~、もしかしてユーマさんのことかな?」


 アイリスは「何で分かったの!?」といわんばかりの驚きの表情を浮かべてフィーネを凝視する。



 フィーネは勇馬が最初は1人であったことを知っている。


 そしてある日突然アイリスを連れて来たことも知っている。


 そのときのアイリスの様子に加えてそれ以降の勇馬とアイリスとの会話の内容からアイリスが奴隷であるという結論を容易に導くことができた。


 そしてあるときフィーネはアイリスとこの大浴場で一緒になり、アイリスの背中に刻まれていた奴隷紋から自分の予想が正しかったことを悟った。


 一方アイリスは他人に奴隷紋を見られるのが嫌で大浴場を利用する際は宿泊客が使える間際の時間に入るようにしていた。

 宿泊客利用時間の後が宿の従業員が利用できる時間となっていたがフィーネがちょっとフライング気味に大浴場に入ったところアイリスと鉢合わせになったのだ。

 

 フィーネはアイリスが奴隷だと確認した後も態度を変えなかった。


 アイリスもそんなフィーネに対しては徐々に信頼を寄せるようになり、今では友人同士として話をするまでになっていた。



(アイリスちゃんにはそれしかないからな~)



 この世界に生きるものとしてフィーネは奴隷がどの様なものかは当然認識している。


 奴隷はあるじに生殺与奪を握られた存在だ。

 今でこそある程度の奴隷保護のためのルールもできてはいるが基本的に奴隷はあるじの『物』でしかない。


 あるじに縛られている以上、奴隷が気に掛けることの第一候補はあるじとのこと以外考えにくい。そもそも勇馬は他には奴隷を持っていないようであり奴隷同士のいさかいということも考えにくい。


 結局アイリスが悩むことは勇馬とのこと以外あり得ないのだ。

 


「で、どうしたの? お姉さんに相談してご覧なさいな」



 フィーネはアイリスよりも1歳年上の17歳である。


 それだけでなく宿のオーナーの孫娘として幼いころから宿の手伝いをさせられ仕事をしているからか精神的な成熟も早い部類であった。

 そして何よりこの宿で働く他の従業員たちはみなフィーネよりも年上ばかりであったことから年下でありお姉さん風を吹かすことができるアイリスが現れてはしゃいでいるということもある。



「…………」


「つまりは他人には言いにくいってことね。ということは……」


 フィーネが真面目な表情で考えているフリをする。


「ユーマさんとのエッチが物足りないとか?」


「フィーネ、何を言ってるんですか! そもそも私と主様あるじさまはその様な行為はまだ「なるほど、『まだ』なんだ」


 フィーネはしてやったりという表情でアイリスの表情を盗み見る。


 対してアイリスは恥ずかしさと怒りでどうにかなってしまいそうだ。



「でもアイリスが奴隷になって1か月くらいになるでしょう? 何でしないの?」


「何でって、それは私が聞きたいです……」


「アイリスが拒否するからじゃないの? あなたにヤられるくらいなら舌を噛んで死にますみたいな」


「そんなことは言いません! 主様あるじさまは特殊な性癖をお持ちなだけです!」


「でもそれって関係あるのかな~? ひょっとして本当の理由は他にもあるのかもしれないよ」


「本当の理由ですか?」


「そうね~、ユーマさんってひょっとして不能ってことはない?」


「不能!?」



 不能とは説明するまでもなく男性のアレが勃たないことである。医療的に言えばインポテンツである。


「まだ若いのに不能だなんてユーマさんかわいそう。きっとアイリスを買ったのも『アイリスだったら勃つかもしれない』と期待したのにそれも裏切られるなんて!」


「何か私が悪いみたいになってない? 私のせい? 私のせいなの?」


「そう、アイリス。きみが悪いのだ!」


 フィーネが自信あり気にそう宣言するとアイリスは一気に落ち込んだ。


「おーい、アイリス。どうしたー。冗談だから、冗談だから落ち込まないで~」




 その後何とか復活したアイリスは自分の悩みをフィーネに打ち明けた。


「つまりアイリスはユーマさんに手を出してもらえないことを疑問に思っていて、それは自分に魅力がないからではないかと悩んでいたわけね」


 ふむふむと頷くフィーネ。


「でもアイリスに魅力がないだなんてことは絶対ないよ。ユーマさんはアイリスを見てから買ってるはずだしそうだったら買ってないよ」


「じゃあ、どうしてでしょうか?」



 結局それに対する答えは出ず『勇馬不能説』が最有力説となるのであった。


 

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