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22 オルレアン工房②

本日2話目です。

 

 付与魔法ギルドからオルレアン工房の二人が出て行った後。



 取り敢えず受けた仕事をこなしたところで勇馬はマスタールームに呼ばれた。


 そして勧められるままに応接セットの椅子に腰かけていた。


 勇馬の向かいに座るのはギルドマスターのウォルグ、その隣には副ギルドマスターのトーマスが腰を掛けている。


 エリシアが3人に紅茶を出してマスタールームから退室するとウォルグはコホンと咳払いをした。



「さて、何から話すべきかな~」


 右手で後頭部をかきながら重い口を開いた。


 そしてゆっくりと事情を語り始める。



 ウォルグによるとこのアミュール王国国内では最近付与魔法ギルド所属の付与師が次々とギルドを辞めていっているということだ。


 その多くがギルドの主戦力となる中上級の付与師ばかりだという。



「それじゃあさっきのは……」


「あいつら、こともあろうにトーマスに粉かけてきやがった。俺がいないときを狙うなんていけ好かねえ連中だ」


 つまり勇馬はトーマスが勧誘されていた現場に出くわしたということだ。 

 

 ギルドの中で堂々と引き抜きをするとは大胆不敵である。



「はあ、それは大変でしたねー」


「何言ってんだ! 今度はお前がターゲットにされるかもしれないんだぞ」


 トーマスが慌てていたのは、勇馬という存在を知られてしまうことを恐れてのことだった。


「でも俺のような下っ端、そんなことは「一緒にローブを着たやつがいたろ?」


 勇馬の言葉はウォルグに遮られた。


「あいつは魔法使いなんだが人の魔力の鑑定をすることができるんだ。付与師の能力はだいたい魔力に比例するからな。お前も鑑定されたのは間違いないだろう」



 ウォルグもトーマスもこれまでの実績から勇馬はかなりの魔力を保有していると思っている。


 引き抜く付与師を探していたマディソンからすれば絶好の得物のはずだ。



「まあ、そういうことだ。今回のことは早いか遅いかの問題でもある。無理強いはできないが俺としてはお前にはこのギルドに出来る限りいて欲しいと思っている」


 そう言われて勇馬としてはうれしくないはずがない。


 しかし、一つ気になったことがあって勇馬は尋ねてみることにした。


「ギルドマスターと副ギルドマスターのお二人にこんなことをお尋ねするのは失礼かとは思いますが、多くの実力のある付与師の方が引き抜きに応じるほどの条件なのでしたら、お二人も本当は行きたかったりするんですか?」



 その言葉にウォルグとトーマスは顔を見合わせた。



「なるほど。まあ、そういう疑問もあるわな。まあ、俺たちのは職人としての気概きがいの問題ってとこかな」


「そうですね。そのあたりは実際にオルレアン工房がどういった武具を作っているのかを見てもらった方が早いでしょう」


 トーマスはそう言うと、この街でオルレアン工房の武具を取り扱っている店の地図を書いて勇馬に渡した。



「ヒルド武具店か」



 勇馬は早速帰りに寄ってみることにした。


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