表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/226

それから3

「アイリスちゃんたちはもう着いたのかな~」


「う~ん、どうだろう? イチャイチャしながらだったらもう少しかかるかもしれないね~」


 勇馬のつくった街あらためヒーラ王国の王都ヒラギ。


 その街の大通りに面した大きな宿屋の食堂で2人の女の子が従業員の制服姿で椅子に座って雑談していた。


「それにしてもあのユーマさんが王様でアイリスちゃんが王妃様か~」


 テーブルに両肘をついて両手で顎を支える姿勢でフィーネがそう零した。


「ホント、びっくりだよね~」


 そう相槌を打つのはカリナだ。


 2人はこの街につくられた宿屋で再び従業員として働くようになった。


 それは勿論この国の国王になった勇馬の計らいである。


「は~、それにしても結婚式のアイリスちゃんは綺麗だったね~」


「ほんとエルフは反則だよね。ただでさえ超美人なのにあんな装いされたらユーマさんじゃなくても惚れちゃうよ」


 2人はそのときの光景を思い返したのかうっとりとした表情を浮かべた。


「は~、わたしも結婚式であんな綺麗なドレスを着てみたいな~」


「フィーネ、その前に相手を探さないといけないでしょ?」


「うっ、痛いところを……、でもそれを言ったらカリナもでしょ?」


「そのときはアイリスちゃんにお願いしてユーマさんの側室にしてもらうもんね」


 カリナは自信あり気にそう答えた。


「でも側室って結婚式するの?」


「えっ、そういえばどうなんだろ?」


 2人は首を傾げる。


「でもお城にいたらしょっちゅうドレスを着るんじゃない? だったら一緒でしょ?」


「いや、結婚式のドレスはやっぱり別!」


「う~ん、じゃあ、2人一緒に側室にしてもらって身内だけでいいから結婚式をしてもらっちゃおうか?」


「あっ、それいいね~」


 そうは言いながらも今の勇馬とアイリスの様子を見ていればそんなことは恐らくないだろう。


 2人はそうは思いながらも、これまでにどこかでボタンの掛け違いがあれば3人一緒に勇馬とそういう関係になることもあったのかもしれない。


 不思議となぜかそんなことを思った。



「でもやっぱり結婚は男の人から申し込んでもらいたいよね~」


「そうそう、やっぱりね~」


 2人はそう言って理想の結婚について思っていることを口にしていく。


 そしてプロポーズで男から贈ってもらいたい物の話題になるとフィーネはそっと真面目な顔をして呟いた。


「あっ、でも国はいらないかな……」


「そうだね……」


 カリナは即座に頷いた。


 2人はアイリスから聞いたことを思い出す。


 勇馬とアイリスとの結婚が決まった後、アイリスと3人で集まってアイリスが勇馬からどうプロポーズをされたのかを根掘り葉掘り聞いたのだ。


 そのとき聞いたのは勇馬がプロポーズでアイリスにこの国を捧げると言ったという話だった。


 勇馬は別に自分が国王になりたいと思っていなかったのでこの国をアイリスが女王として治める国にしようとしたというのがその真相である。


 勿論、アイリスはそれを全力で拒否した。


 自分を女王にするなら勇馬とは結婚しないと断固として拒否してこの国は結局勇馬を国王とする国にと落ち着いた。


「それにしても新婚旅行って初めて聞いたけどフィーネ知ってた?」


「ううん。おじいちゃんにも聞いたけど『そんなの知らん』って言われた」


 いま勇馬たちは新婚旅行と称してこの国を離れて旅行中である。


 後に勇馬とアイリスが始めたと言われるこの新婚旅行がこの異世界に広く定着するまでには大陸の政情が安定するまでしばらくの時間が必要となる。


「おーい、お前たち。いつまで休憩してるんだ!」


「あっ、おじいちゃんだ。大変、ディナーが始まっちゃう!」


 この宿の責任者となったオルドスの声にフィーネがいち早く反応した。


「ヤバっ、はやく行かないと」


 カリナは制服のエプロンを後ろ手で結び直しながら慌てて持ち場へと戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ