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5 3人寄ればやっぱり姦しい

 この日は勇馬の仕事が休みということもあって勇馬の3人の奴隷たちも休日になっていた。


 要塞内部の勇馬の自宅には幹部の自宅ということもあって風呂がついている。


 しかし、大人一人が入るのに精一杯で大きなものではない。



「というわけで大浴場へ行きましょう!」


 なにが『というわけ』なのかはわからないがエクレールが他の2人にそう提案した。


 自宅に風呂がついていない兵舎もあるため要塞内には大浴場が設置されている。


 男女別であり、食堂と同様に幹部用は別になっている。


「しかし、私たちには奴隷紋がありますのであまり他人ひとの目には……」

「それは大丈夫よ。今の時間、貸し切りにしてあるから」


 エクレールは勇馬の威光を使ってちゃっかり貸し切りの予約を済ませていた。


 昼間の時間ということもあってあっさり許可が出たという。


 特に断る理由のなかった2人はエクレールの誘いに乗ることにした。その中でもアイリスは勇馬の奴隷となり勇馬と同じ生活習慣になってから入浴が習慣化していた。そういった事情もあって大きなお風呂に魅力を感じないと言えば嘘になる。


 そんな3人は並んで大浴場への道を歩き5分ほどで目的地に到着した。




「おお、さすがに広いな」

「ほんとうに大きいです」

「やっぱりお風呂は大きくなくちゃね」


 要塞内の軍事施設ということもあってそこらの安宿の大浴場に比べて一回り大きな施設にクレアとアイリスが目を丸くした。


 3人は脱衣所で衣服を脱ぐとまずはクレアが、続いてエクレールが浴室に入った。


 少し遅れて最後にアイリスが入る。


 先に入った2人は遅れて入ってきたアイリスの肢体に目を細めた。


 アイリスの顔は色白でそれだけで見る者を引き付けるがいつもは衣服の下に隠された柔肌はそれに輪をかけて白く美しいものであった。肌のキメは細かくそれでいて艶やかなことはタオルで隠しきれないチラリと見える部分だけでもわかるレベルだ。2人には浴室の明かりに照らされてキラキラと輝いて見える。


「やっぱりアイリスちゃんのお肌はキレイね」

「ほんとだね。同じ冒険者とは思えないな」

「いえ、そんなことは……」


 エクレールもクレアも人族としてはかなりの美人に属することは間違いない。


 エクレールに至っては自分を奴隷として売ることを考えていたこともあってお肌の手入れにも十分気を使っていた。


 クレアもここ2年は冒険者をしていなかったこともあり日焼けもなく肌の色つやは令嬢のそれに勝るとも劣らないレベルだ。


 しかし、それでもハーフであるとはいえエルフの血を引くアイリスには及ばないことは当の本人たちが自覚していた。


 3人は最初に湯船の外で身体を洗うと順次湯船につかる。



「ふ~、やっぱり広いお風呂はいいわね~」


 エクレールは広い湯船に手足をこれでもかと伸ばしてぐっと胸を反らした。


「……おっぱいってホントに浮くんですね」


 アイリスは湯船に浮かぶエクレールの双丘をまじまじと見つめた。


「アイリスはこれからまだ大きくなるんじゃないか?」


「そうかしら? 大きい子は最初から大き……むぐっ」


 アイリスに余計な燃料を投下しそうなエクレールの口をクレアは即座に塞いだ。


「ぷは~、ちょっとクレアっ、ひどいじゃない! まあ、そうね。ご主人様に大きくしてもらうことはできるかもしれないわね」


 その言葉に耳年増のアイリスは長い耳を真っ赤にさせて湯船に顔を半分沈めた。


「その反応、アイリスは主殿にその、そういうことをされたことはないのか?」


 クレアがアイリスに視線を送り、次にエクレールに視線を向けた。


「わたしとクレアはこの前奴隷になったばかりだし、まだよね」


 クレアに首を左右に振るとエクレールは一応確認しておこうとクレアに視線を返す。


「そうだね。まあ、わたしの場合は主殿がそういう対象と見てくれているかわからないけどね」


「で、奴隷頭さんはどうなのかしら?」


「…………」


 2人の視線が一斉にアイリスに集まる。





「……です」


 たっぷり間を置いてからアイリスはか細い声で答えた。


「えっ?」


「まだ何もされたこと……ないです……」


「えっ、何も?」


 クレアの言葉にアイリスは静かに頷いた。


「じゃあ、キスとか、お口でご奉仕とか、胸では……(無理か)」

「ちょっと黙らないでもらえますかね? それと最後のは聞こえてます。まあ、どちらにしてもどれもないのですけど!」


 アイリスがちょっと逆切れ気味に語気を強めて言った。


「ええっと、主殿はその、どこか身体の調子が悪いのかな?」


「でもそんな話は聞いたことがないわ」


 いつもの勇馬の様子から体調が悪いということはなさそうだ。


「アイリスちゃんに興味がないということはないでしょう。話を聞いたら、ご主人様、かなり熱心だったみたいだし」


「となると男色家ということはなさそうだね」


「そもそもご主人様って女の人というかおっぱい大好きよね。初めて会ったときもわたしの胸をチラチラ見てたし」


 3人は「う~ん」と首をひねる。


「……やっぱり主様は不能なんでしょうか?」


 アイリスはメルミドの街で仲の良かった二人の友人を思い出しながらそうこぼした。


「ご主人様が不能……」


「それは……つらいね」


「あっ、でも主様、そういえば今は時期尚早だって言ってました!」


 お通夜みたいな空気を何とかしようとアイリスが勇馬の言葉を思い出して言った。


「早いって、何が早いのかしら?」


「そうだね。アイリスも16歳で成人しているし、年齢的に早いとは思えないよね」


「となると……」


 エクレールとクレアの視線がアイリスの胸へと寄せられた。


「こちらは待っても望み薄だと思うのよね~」


「いいでしょう、その喧嘩、買いました。ここで一つ決着を付けましょう!」


 そうして湯船の中でアイリスとエクレールとの2人のつかみ合いが始まり、クレアもとばっちりを受けながら3人は楽しい時間を過ごした。






「はっくしょん!」


 そんな3人が大浴場で過ごしているとき。


 勇馬は自宅で一人くしゃみをした。

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