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16 奇跡は続く

「あなたが現世での救済を願うのであれば神を、御使いユーマ様を信じなさい。聖教会ではなく優真教を求めなさい。そうすれば神は貴方に奇跡をお与えになるでしょう」


 痛みで絶望で正常な判断のできない者たちの耳元でセフィリアがそう囁く。


 今この瞬間の苦しみから逃れられるのであればこの者たちは神ではなく悪魔からの誘いにも間違いなく乗ったであろう。セフィリアの言葉を無条件に肯定することは当然であった。


「優真教を……ユーマ様を信じます……お慈悲を……」


 セフィリアはそう口にした横たわる兵士にエリクサーをそっと使った。


 出力は抑えているとはいえ光魔法によるエフェクトも忘れてはいない。


「……痛くない? 苦しくない!」


 横たわっていた兵士はそう口にするとその場で勢いよく起き上がった。


「治ってる、治ってるぞっ。しんははっ、俺は生きてるぞ!」


 さっきまで自分たちと同じく骸となる最後を待っていただけだった男が息を吹き返した。


 それは朦朧とする意識の中で横たわっていただけの他の兵士たちにも衝撃を与えた。


 周りからもかすれるような声で奇跡を、慈悲を求める低い声が聞こえてくる。


「祈りなさい、誓いなさい。神に、御使いユーマ様に、縋りなさい優真教に。聖教会はあなたたちを救いませんでしたが私たちはあなたたちを救いましょう」


「……ユーマ様、お慈悲を」

「信じます……お救い下さい」

「ユーマ様……信じます、お助け下さい」


 その言葉を聞いた者たちは口々に祈りの言葉を、誓約の言葉を紡ぎ出した。


 その後、この救護所から一際大きな光が窓から溢れる光景を外にいた兵士が目撃した。


 そして次の日にはこの救護所には誰もいなかった。




 ――コンコン


 ダンジョン都市サラヴィの代官であるクライスの執務室をノックする音がした。


「入りたまえ」


 部屋の主が入室を許可すると秘書の女性が部屋に入ってきた。


「お伝えしたいことが」


 女性秘書の言葉に頷いたクライスは話を聞いて絶句し、そして笑った。


「そんなことがあり得るのか? まさに奇跡じゃないか!」


 クライスは前線で瀕死となり死を待つだけの兵士たちが突如として復活して前線に復帰したという報告を受けた。


 このことは他の兵士たちにも大きな衝撃を与えた。


 明日は我が身と思っていた前線の兵士たちはとっくに死んだものと思っていた同僚たちが復帰し、中には身体が欠損していたはずの者が五体満足になって戻ってきたのだ。


 原隊に復帰した彼らは口を揃えて言ったという、神の奇跡を見たと。

 

 その奇跡の体現者は皆が口を揃えて聖教会の教えを唾棄し、新たな信仰を口にし今やすごい勢いで新たな宗教の信者が増えているという。


「期待どおりどころかいつも斜め上をいくな、彼は……」


 神聖国とラムダ公国との戦争が始まって2週間、膠着していた戦局は次第に公国側に有利に傾いていく。


【新作のご案内】(7/2投稿完結済み)

 ジャンル違いで恐縮ですが新作を投稿しました(全6話・約1万5000字)。


 『王太子殿下は真実の愛を貫きたい』

 https://book1.adouzi.eu.org/n4251hb/


 実質短編作品です。

 初めての異世界恋愛ジャンル作品です。

 ジャンル的に女性向け作品ではありますが、男性の方も楽しめる作品です。

 むしろ私が書いているので男性の方が共感できるかもしれません。一応純愛ハッピーエンド(のつもり)です。

 是非一度覗いてみて下さい。

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