6 錬金ギルド
次の日、勇馬はクレアを伴ってサラヴィの街にある錬金ギルドを訪れた。
あれからポーションを買ってもらえる場所を調べたところ、1つ2つ程度であれば普通の道具屋でも買い取ってもらえるものの恒常的に納めようと思えば錬金ギルドに納めることが一番条件が良いということがわかった。そのうえでポーションは最近では錬金術師が作ることが主流であり錬金ギルドで取り扱われているということだった。
「こんにちは~」
いつも付与魔法ギルドに行っているのと同じ感覚で錬金ギルドに来たものの建物内の様子は付与魔法ギルドとは随分違った。
まず、建物に入って直ぐのロビーが狭い、というよりもないと言っていいだろう。錬金ギルドでは外部から多くの客が一度に来るということは予定されていないことによる。
錬金ギルドは錬金術師が納める汎用的なアイテムを受け入れてそれを外部の店に卸すいわば問屋の様な存在だ。そのため一般人が錬金ギルドに何かを買いに来るということはない。例外として特殊なアイテムの作成について仲介依頼をすることがあるものの件数としてそこまで多くはない。
「おや、見ない顔ですね。今日はどういったご用件でしょうか?」
勇馬の声を聞いて錬金ギルドの受付に30代くらいの男性が奥から出て来た。
「私が作るポーションを引き受けていただけないかと思いまして」
「ああ、錬金術師の方でしたか。他の街でのご登録は?」
「錬金ギルドへの登録自体が初めてです。何か手続きが必要でしょうか?」
「いえ、ご登録いただかなくても引き受けは可能ですよ。ただ、その域に達している品質かどうかを見極める必要がありますのでもし作られたポーションをお持ちであれば拝見させてもらえませんか?」
「先ほど作ったものがありますのでこれをどうぞ」
勇馬はそう言ってさっき作ったばかりの上級ポーションを差し出した。
「この色は上級ですね。ただ、色を付けてごまかそうとする輩もいますので鑑定させていただきますね」
受付の男性はそう言って勇馬から差し出された瓶を凝視する。
「うん、品質も上等、間違いなく上級ポーションですね。お若いのにこのレベルの上級ポーションを作れるとは良い腕をされていますね。是非うちに納めていただければと思います」
「それで数の制限なんかはありますか? 例えば1日どのくらいまでしか買い取れないとか?」
「いえ、別にそういった制限はありませんね。このダンジョン都市でも相当程度消費されますしポーションはいくらでも買い手はつきますので」
「わかりました。ではその様に」
勇馬はポーションを入れるための大量の小瓶と小瓶を運ぶための木枠、他にタライやバケツを買って宿へと戻った。
「さて、始めるか」
勇馬は宿に戻ると白色キャップのマジックペンを顕現させると魔力を込めるように念じる。
そしてしばらくしてからタライの上でペン先を下にしてペンからその中の液を抽出する。すると白色の液体がさらさらとタライの中へと落ちていった。
「次に魔力を拡散させてと」
勇馬はペンに蓋をすると白色の液体に近づけた。すると白色の液体はみるみる膨張して体積を増やしていき、色も白色から赤色へと変化した。
勇馬は高級ポーションとなったタライの中の液体を次々と瓶に詰めていく。10本ほど瓶に詰めると残りの高級ポーションの魔力をさらに薄めていく。すると色が黄色に変化した。
「鑑定」
――中級ポーション
思ったとおり中級ポーションとなったタライの中の液体を瓶に詰めていく。そうして20本ほど中級ポーションが入った瓶を作ることができた。同じように最終的にタライの中身を青色の初級ポーションに変えると多少時間を掛けて30本の初級ポーションの入った瓶を作ることができた。




