5 検証
翌日。
勇馬以外の4人はそろってダンジョンへと潜り勇馬は1人宿に残っていた。
勇馬はマジックペンを手で弄びながら久しぶりにメニュー画面を開いた。
「修正ペンから作れるアイテムについて検証してみるか」
修正ペンは外傷をペン先でなぞって患部を治すことができるほか、中身を抽出して回復アイテムを作ることもできる。試しに魔力を込めて作ってみたらそれがエリクサーであった。
このエリクサー、売ることができれば巨万の富を得ることができる。
しかし、対外的にはただの付与師である勇馬がエリクサーを持っていれば流石に怪しまれる。出所を追及されればマジックペンの存在自体を知られてしまいかねない。
そこで勇馬はマジックペンのカモフラージュとしてアイリスたち冒険者組を上手く使えないかと考えアイリスたちにダンジョンの攻略を進めるように指示している。アイリスたちがダンジョンの深い階層まで進んでいれば勇馬の作ったエリクサーをダンジョンで入手したかのように装ってオークションに出すことも可能だろうという目論見だ。
(しかし何度もエリクサーを出品すれば流石に怪しまれるだろうな……)
先のことは一旦放置して取り敢えずはアイリスたちが留守の間に他のものを作ることができないかを確かめてみることにした。
(エリクサー以外のものも上手く作れないかな?)
ダンジョンからは下層であっても滅多にエリクサーを入手できるものではない。
そのためエリクサーを売るよりもそれ以外の汎用性の高いポーションを作ることができればそれを売ることができる。
そこで勇馬は『修正ペン』に込める魔力の量を減らしてポーションを作ることができなかを試してみることにした。
「魔力を込める時間を調整すれば初級、中級、上級のポーションも作れなくはないみたいだ」
目の前には色とりどりの液体の入った瓶が並ぶ。
エリクサーの入った白色の液体が入った瓶の他、赤、黄、青色の液体の入った瓶もある。
しかし、作り分けることはなかなかに難しい。
何気なく修正ペンから中身を取り出そうとすると基本がエリクサーになってしまうのだ。
このままではポーションを大量に作って薄利多売をすることはなかなかに難しそうだった。
「もっと簡単に、かつ大量にポーションを作ることはできないかな?」
勇馬は作ったばかりのエリクサーが入った瓶を手に持って眺めた。鑑定スキルで表示された『エリクサー』の文字に視線を送ると更に説明文が表示された。
『魔力を薄めることでよりランクの低いアイテムに変化させることできる』
『魔力を薄めるにはペンの蓋をした状態で近づける』
勇馬は指示された通りに『マジックペン』に蓋をするとそれを瓶の中のエリクサーに近づけた。すると白色の液体は膨張し始めだんだんと赤色の液体に変化した。膨張した液体はみるみる瓶から溢れ出した。
「うわっ、こぼれた! 勿体ない」
瓶の中に残った赤色の液体。
それは『上級ポーション』だった。




