12 再びレスティへ
勇馬との話を終えてシェーラはケローネを自分の部屋へと連れて来た。
「ケローネはこれからのことどうしたい? このままユーマさんたちのパーティーに入れてもらう?」
ケローネはシェーラの言葉に唇をぎゅっと噛みしめて厳しい表情をする。
そしてしばらく時間を置いてゆっくりと口を開いた。
「……本音を言えばここにこのままいたいなって思うよ。でもわたしたちじゃあ実力が足りないと思う。迷惑を掛けるのは嫌だよ」
シェーラとケローネは一応勇馬の護衛というクエストを請け負っているが、本来であればDランク冒険者の彼女らが護衛クエストを受けることはできない。これはトーマスが勇馬たちと気心の知れた彼女らに指名依頼という形で頼んでいるからに他ならない。
その分彼女たちはやはりまだ実力が不足していることを自分なりに感じていた。
「そうだね。いろいろと足りてないよね、ボクたち……」
「このままみんなと一緒にいてもある程度は成長できると思う。でも、今のぬるま湯の様な環境じゃダメだと思う。一からやり直すくらいの覚悟じゃないと……」
先日のダンジョンでの失態はシェーラにもケローネにもその原因がある。
あのとき、もしも勇馬がいなければ2人の命すら危なかったかもしれない。ケローネに至っては普通であれば右腕を失ったまま冒険者を廃業しなければならなかっただろう。
そんな衝撃的な体験から2人は敢えて自分たちにとって厳しい道を進むことにした。
「わたしたちはレスティに戻ろうと思います」
翌日、ケローネは勇馬にそう伝えた。
本音ではこのパーティーに残りたいけれど自分たちには足りないものが多過ぎると思っていること、もっと実力をつけたいと思っていることを隠さずに伝えた。
その言葉に勇馬は反対できなかった。
流石に先日のこともありケローネがそう思うのも無理からぬことだ。
勇馬は今後のパーティー編成が全くの白紙となったことから今住んでいるパーティーハウスについては一旦契約を終了することにした。今の予定では1週間程度レスティに滞在してまたこのサラヴィに戻ってくるつもりではあるがパーティーの規模がわからないのではどこに住むかを決めることはできない。
それからは時間が経つのは早かった。
勇馬はパーティーハウスの契約終了の手続きをし、付与魔法ギルドやダンジョンで懇意にしていた冒険者たちにしばらく街から離れるということを伝えた。
付与魔法ギルドからは駆け込みでかなりの仕事を頼まれたので勇馬はさらっとこなして挨拶をして帰った。
代官のクライスにも一時的にラムダ公国から離れること、また戻って来る予定であることも伝えた。
サラヴィからレスティへは馬車で3日である。
その間、幸いにも魔物も盗賊も出ることなく静かな道程であった。
勇馬たちはこの間、シェーラとケローネと心ゆくまで話をして来たるべき別れを惜しんだ。




