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8 修正ペン

 パーティーのメンバーたちがそれぞれに自分の感情を整理しているころ、勇馬もベッドに転がってぼーっと天井を眺めていた。



(今のところダンジョンでする商売にさしたる障害はないよな。他の冒険者にはこれまでどおり、常識的な範囲であれば補助魔法を使っていいってことだし)



 自分にあるものは地球の神からもらったマジックペンだけだ。


 勇馬はマジックペンを顕現させるとここ最近確認していなかったメニュー画面でできることを再確認することにした。


「メニュー」

 


 ――マジックペン(レベル4・修正ペン)


『外傷部分をペン先で塗ると傷が修復される。ペン先から抽出された液を服用することで体内や全身の障害が回復する。修復・回復効果の程度はペンに込められた魔力の量によって変わる。キャップの色は白色』


 付随スキル(追加分)


  抽出液鑑定(ペン先から抽出された液体の中身を鑑定することができる)





「おっ、レベルが上がってる! またできることが増えるな」


 最近ダンジョン内で頑張ったからか、それとも冒険者として一応ダンジョンをクリアしていったからか。


 その理由はわからないが、レベルが上がっていた。



 勇馬はペンを戻すと1階へと降りた。


 しかし,流石に試すために誰かをわざと傷付けるわけにはいかない。


 たまたま台所へ顔を出すとアイリスが昼食の準備をしていた。包丁で野菜を切っている。


「いたっ!」


 アイリスがそう叫んで指を押さえた。どうやら包丁で指を切ってしまったらしい。


「大丈夫か?」


 勇馬がアイリスに駆け寄り指を見ると指の先を切ってしまっていて、血がにじんでいる。


 勇馬に一瞬『アイリスの指を咥える』という選択肢が浮かんだがそれを振り払った。


 勇馬は白色キャップのマジックペンを顕現させるとキャップを外し、程度はわからなかったが何となしにマジックペンに魔力を込めた。そしてアイリスの指にマジックペンのペン先を押し当てた。


 するとみるみるうちに傷は治り、すぐにどこを切ったのかがわからないまでになった。


「!?」


 その様子を勇馬と一緒に見ていたアイリスは驚きのあまり声を失った。


「よし、成功みたいだな」


 勇馬は満足そうに頷くと目を白黒させるアイリスの頭に右手を乗せて2度ほどぽんぽんとすると台所から出ていった。





 勇馬は昼食を食べ終わると街に買い物に出ることにした。


 メニューの説明内容から修正ペンから抽出した液は飲めば怪我や体内の障害が回復するポーションになるようだ。


 これは上手くやればいい商売になる。


 これまで付与師、補助魔法使いといった仕事をやってきたが、今度はヒーラーや薬師、錬金術師の目も出てくる。


 取り敢えずはポーションを入れる瓶を買いにいくことにした。


 今日の護衛はアイリスである。


「……主様あるじさま、先ほどのことなのですけど」


 パーティーハウスを出るとアイリスがおずおずと尋ねてきた。


「今から買いにいくものもその話と関係あるものなんだ。帰ってからまとめて話をしようと思うけどそれでいいか?」


 勇馬の言葉にアイリスは無言で頷いた。


 道具屋でポーション用の瓶をいくつか購入して勇馬はアイリスとともに自分の部屋へと戻った。

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