30 様式美
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セフィリアはゆっくりと話始めた。
「わたくしはエクレールがこの街の奴隷商館に来る事情を知っておりますわ。しかし、エクレールの知らないところでわたくしがユーマ様にお話することではないとも思っています。ただ、知っている方もそれなりにいるお話ですのでユーマ様がどうしてもおっしゃるのであれば「どうしても」
セフィリアの話を遮って勇馬は説明を求めた。
「…………」
「…………」
「……ユーマ様、そこは『だったら直接彼女に尋ねるさ。教えてくれないのなら教えてもらえるまで待つよ』と言うところですわよ」
「様式美もいいんだけどね。でもやっぱり気になるじゃないか」
「わかりましたわ。では戻ってからお話させていただきます」
セフィリアの言葉に勇馬は軽く頷いた。
一方、奴隷商館から出たエクレールは予めとっていた宿に向かう途中、さっきまで滞在していた奴隷商館でのやり取りを思い出していた。
――遡ること20分前
「申し訳ございません。今回も入手はできませんでした」
何度目ともなる店主からの聞き慣れた言葉にエクレールは表情を変えなかった。
(残念なはずなんだけどその裏でホッとしている自分がいる……ほんと浅ましいわね)
「現在ご指定いただいてますのは、エクレール様から預かっております2000万ゴルド、そしてうちからの1200万ゴルドで合わせて3200万ゴルドとなっております。次回以降での増額はいかがなさいますか?」
前回のオークション以降に稼いだ資金でオークション原資を上乗せすることは一応可能ではあった。
しかし店主からのその言葉にエクレールは直ちに回答することができなかった。
(本当に落としにいくのなら無理にでも増額しておくべきなのでしょうね)
そうは思いつつもその踏ん切りがつかないエクレールは自分自身の情けなさを呪わしく思った。
(ここまで来てまだ自分がかわいいだなんてね。とっくに自分の身を捧げる覚悟をしたつもりだったんだけどな……)
「それから、このお話をしておかなければなりません。エクレール様は現在18歳。本来であれば今の金額で通用するのは昨年まででした。今回はこれまでのお付き合いからこれまでと同じ評価とさせていただきましたが次からは無理です。うちから出せる金額は大幅に減ることになりますのでその辺りはご承知おき下さい」
「で、結局どのくらいになるの?」
「そうですね。仮定のお話で恐縮ですが今のエクレール様の状態がそのまま維持されるとしても1000万ゴルドの大台は割り込む金額になるかと」
「そう。1歳でそんなに違うのかしらね」
「申し訳ございません。やはり女性の価値は成人してから1~2年がピークでございます。エクレール様の場合は冒険者としての価値がありますからまだそのくらいで済んでおりますがそれがなければもっと大幅に金額は下がるでしょう」
「ほんと世の中は世知辛いわね……」
「…………」
ため息交じりのエクレールのつぶやきに店主は答えを返すことができなかった。




