表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】マジックペンで異世界探訪(たんぽう)~ペンは剣よりも強し  作者: 言納智大
第2部 第1章 ダンジョン都市サラヴィ編
135/226

29 オークションを終えて

 勇馬がしばらくセフィリアと雑談しているとオークション開始の時間となった。


 司会の男が壇上で注意事項を告知して順番通りにオークションが始まった。


「3番、110万」

「12番、115万」

「20番、120万」


 司会者が刻々と参加者から提示される価格を告げた。


「120万、120万ゴルド。他にはいらっしゃいませんか?」


 司会者が会場を見回す。


 声を出す者は誰もいない。


「20番さん、120万ゴルドで落札です!」



 ――バンバン



 司会者が木の槌(ガベル)で机の上にある台を叩いて正式に落札を宣言した。


「今競り落とされたのが力の指輪ですわね」


「身に付けると力が上昇するらしいね」


 パンフレットには『力の指輪』と記載され【力上昇(小)】という効果が説明されている。


 ダンジョンにおいてはこの様な身に付けることで身体能力が上昇するアイテムも入手することができる。

 この様なアイテムは魔法具マジックアイテムと呼ばれて珍重されている。



 その後もいくつかのアイテムが競り売りされていよいよ目玉となるエリクサーの順番となった。


 オークションが始まった途端、開始価格の2000万ゴルドは瞬く間に3000万ゴルドにまで跳ね上がった。


「3300」

「3500」

「3600」

「3800」


 入札単位の100万ゴルド単位で次々と吊り上っていく。



「さすがエリクサーだな。やっぱり欲しい人は欲しいんだな」


「それはそうですわ。エリクサーは神の滴。ポーションとは次元が違いますもの。あらゆる病を治し、後遺障や部位欠損ですらなかったことにしてしまう正に神の奇跡! このような至高のアイテムともなれば欲しい方は尽きることがないでしょう」


 実際オークションで値段を釣り上げるのは王族や上級貴族に値上がりを見越した大商人、成功を収めた事業家たちである。


 まさに白金貨と白金貨の殴り合いである。


「4500万ゴルドでの落札か。まあ、相場の範囲だな」


 今回の目玉商品であるエリクサーは4500万ゴルドで落札された。


 主にダンジョン産アイテムを扱った競売が終わると若干の休憩の後、第2部が始まる。


「第2部は何か変わったものが多いな」


 ダンジョン産アイテムは有用ではあるものの良くも悪くも想像の範疇の物である。


 しかし、各地の商人がより高い金額での売却を目指して出品する物は稀少性という面ではダンジョン産アイテムに引けをとらない。

 

 まさに一品物と呼ばれる物が次々に落札されていく。



(この世界出身ではない俺からすれば何が珍しくて何がそうではないのかよくわからないな)



 勇馬としては珍しさの尺度が違うため、出品物が提示されるたびにどよめく会場の空気にどこか疎外感を感じていた。


 そんな勇馬の気持ち一変させたのが奴隷のオークションである。



(これなら俺でも良し悪しが理解できるな)



 女性の奴隷であれば外見、年齢、胸の大きさなどの身体付きに処女かどうかという基本審査項目に有している能力を加味して金額が設定されている。


 品物である彼女たちもオークションに掛けられる際には檀上に上がらされている。


 身に着けているものは薄い貫頭着だったりビキニの様な下着だけだったりという装いであったので見るだけでも勇馬を楽しませるものであった。





 そうこうしている間にこの日のオークションが終わり、参加者は三々五々会場を後にしていく。


 時間はちょうど午後4時を過ぎた時間だ。


 勇馬もセフィリアとともに会場を出て行くと近くの喫茶店に入った。


「今日はなかなか楽しかったな。お金を貯めたらまた来たいな」


「そうですわね。ダンジョン産の役に立ちそうなアイテムも出されていましたし、異国の珍しい物もありましたし」


「それにしても本当に奴隷は『物』として取引されているんだな。高いものはやっぱり高いけど」


 オークションに出される奴隷の品質は最高クラスのものばかりだ。


 そのため値段も跳ね上がる。


 落札額は軒並み1000万越えとなっていたものの、それが『人』の値段だとすると高いのか安いのか勇馬としても判断することは難しい。


 喫茶店を出るとぶらりと街を歩くことにした2人はとりとめもない話をしながら大通りを歩いていた。


 そして勇馬がふと奴隷商館の入口に目をやると、そこには見知った顔の女性がちょうど建物から出てきたところだった。



「エクレールさん?」



 いつもの痴女っぽい魔法使いの格好ではない。


 普通どころかそこそこ裕福なお嬢様がお茶会に行く時のようなシンプルながらも仕立ての良いワンピースを身に着けている。


「いやいや他人の空似だな」


 勇馬は首を振って自分の見間違いと判断した。


 エクレールの服装はともかくエクレールが自分の拠点ではないこの街の奴隷商館に何の用があるというのか。勇馬の理解の範疇を超えていた。


「……いえ、ユーマ様。あれはエクレールで間違いありませんわ」


 そう勇馬に指摘したセフィリアは悲しそうな目でエクレールの姿を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ