27 オークション
「ユーマさん、代官様からの手紙を預かっています」
付与魔法ギルドに着くと受付でそう伝えられた。
勇馬は受付で手紙を受け取ると作業部屋に入って封を開けた。
「何だろう、これ?」
入っていたのは何かの招待券である。
また食事の誘いかと思ったが代官からの手紙も入っており目をとおすとそうではないことがわかった。
今回はこの街が主催しているオークションへの招待ということだった。
このオークションに参加するためには代官から参加を認められ、入場料を支払う必要がある。入場料の金額については参加できる資格に応じて違うらしい。
「お詫びの印で無料での招待か」
別に代官が悪いわけではないのだが、先日勇馬が暴漢に襲われたことを知ってその埋め合わせとして招待してくれたという話だった。
勇馬も人並みにはオークションに興味があるにはあった。
今回の招待では勇馬は入場料なしで入ることができる。
しかし、いくらかでも払わなければいけないということであれば行くことはなかっただろう。
所詮はその程度の関心でしかないわけなのだがせっかくの機会ということで勇馬はオークションに参加してみることにした。
「ここがオークション会場か」
ちょうど仕事を休みにしていた日が招待されたオークションの開催日だったことも都合がよかった。
到着したオークション会場はサラヴィの街の中心部にある立派な建物である。
異世界のオークションと聞くと闇の非合法取引というイメージで、地下で夜な夜な開かれているという偏ったイメージを持っていた勇馬はその落差に面食らう。
当然のことながらこの街公認どころかこの街が主催するオークションであるため合法も合法である。
時間もお昼を過ぎた時間で建物に入っていくのは身なりの良い身分の高そうな御仁や恰幅の良い商人といった者たちでだ。
オークションに参加するだけでも代官の認可が必要であり、それに加えて入場料も支払わなければならないということでそこらの平民では参加すること自体難しいのが現状である。
オークションにはそのような上流階級が参加することから各自1名は護衛として供の者を連れて行くことができる。
もっとも武器の持ち込みは禁止されているので護衛として同行する者は身体能力の高そうな体格の良い者が多い。
「ユーマ様、早く参りましょう」
今日の護衛はセフィリアである。
実は今日、誰が護衛をするかについては出発前に一悶着あった。
先日はアイリスが護衛をしたので他の3人の誰にするかという話になったが、シェーラは武器がない状態でどこまで戦えるかが未知数であり、ケローネは魔法が使えるとしても近接戦になった際にどこまで対応できるかに疑問が生じた。勿論獣人ということで同世代の人間に比べれば身体能力は上かもしれないがそれらは決め手とはならなかった。
最終的にはセフィリアの得物はフライパンなので会場にも持ちこめそうだというちょっとアレな理由で今日の護衛はセフィリアに決まったのだった。




