17 内覧
「こんにちは~」
週が明けて仕事が休みとなった日の午後。
勇馬はサラヴィの街の商業ギルドへと来ていた。
この世界では不動産屋というものはなく不動産の売買や賃貸は商業ギルドが取り扱っているのが一般的である。
「こんにちは。今日はどういったご用件でしょうか?」
受付の若い女性が営業スマイルで対応した。
「パーティーハウスをみせていただきたいのですが」
「承知しました。パーティーの人数はどのくらいでしょうか?」
「5人ですね」
「であれば標準のパーティーハウスで問題ありませんね」
この世界のパーティー編成は4~6人が標準とされている。
大規模なパーティーとなれば8~10人もしくはそれ以上というのもあるようであるがあまり人数が多すぎるとトラブルも起こりやすいということであまり多くはない。
「場所はどのあたりがご希望ですか?」
「そうですね。ダンジョンと付与魔法ギルドの間にあって周りに店もあるような場所がいいでしょうか」
「ご予算や内装・設備についてご希望はございますか?」
「予算についてはちょっと想像がつかないので特に上限は決めていませんね。勿論高すぎるところだと困りますが。設備についてはちゃんとしたお風呂があるところがいいですね」
受付の女性は勇馬から希望や条件について一つずつ確認していき、そうしていくつかの候補を出してきた。
「お話をお伺いして3つを候補とさせていただきました」
家賃の一番高いパーティーハウスはダンジョンや繁華街にも近いものの設備については若干古いところだった。
勇馬の目に留まったのはその半額程度の家賃で部屋数も他の物件に比べるとやや少ないしダンジョンからは少し離れている。
しかし、風呂や内装は新しいというのが売りの物件であった。
ちなみにあとのもう1つは両者の中間のようなものであり勇馬としては2つ目のパーティーハウスを候補として案内を受けることになった。
もっとも他のメンバーの意見も聞くつもりであったのでこの日は一旦帰り、現地を見るのはパーティーメンバー全員でということでこの日は話を終えた。
――2日後
「うわ~、とても広いです」
玄関を入って早々目に入ったロビーにケローネが感嘆の声を漏らした。
この日は先日候補となったパーティーハウスを商業ギルドの案内係とともに勇馬たち5人が訪れている。
3つの候補の中では広さという面では一番小さな物件であるとはいえこれまでの住環境と比べるとそう感想を抱くのも無理はない。
「1階は食堂を兼ねた広間とキッチン、風呂場などがあります。2階には個室が6部屋あります」
商業ギルドの案内役の女性がそう説明した。
「広間にはテーブルや椅子もあるんだね」
シェーラが備え付けの家具を目にしてそう口にした。
「パーティーハウスは入れ替わりが激しいですからある程度の家具は備え付けとなっていますわね」
2階の各部屋にもベッドや簡単な机と椅子は備え付けのものがあった。
勿論、気に入らなければ自分で好きな物に交換することもできる。
その場合備え付けの物よりもグレードの高い物とする場合には事前に断る必要はないがそうでない場合は家主との相談が必要となる。
「この物件に決めたいと思うけど反対の人はいる?」
勇馬の問いに4人は首を横に振った。
「私はいいと思います。元々主様の決定に反対するつもりはありませんでしたが、それを抜きにしても異論はありません」
アイリスがそう言うと他の3人もそれに同調する意思を示した。
「わかったよ。じゃあ、すみませんがこの物件に決めます。手続きをお願いしてもいいですか?」
勇馬が案内役の女性にそう伝えると女性は「かしこまりました」と笑顔で応じた。
勇馬たちは商業ギルドで必要な手続きして必要な支払いを済ませた。
今日の宿の支払いをしている関係で契約上入居は明日からということになった。




