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【完結】マジックペンで異世界探訪(たんぽう)~ペンは剣よりも強し  作者: 言納智大
第2部 第1章 ダンジョン都市サラヴィ編
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16 パーティーハウス

 勇馬が他国出身者の仕事を受けるようになってしばらくは付与魔法ギルドに冒険者が殺到したがそれも2週間のうちにほぼ鎮静化した。


 今後も継続的に他国出身者であっても付与を受けることができる見通しが立ったことから我先にという空気が霧散したのだ。


 勇馬は隔日での作業としたものの事前に告知があったことに加えて1日の受付数が大幅に増えたために混乱はなかった。


「いやいや、笑いが止まりませんな~」


 風呂上りに宿の自室ベッドに腰を下ろし左手にうちわをもって自分を扇ぎながら勇馬はそう言った。


 ダンジョン都市に来てからというもの大量の作業をこなして稼ぎに稼ぎまくった。


 一方、アイリスたちもダンジョンに潜って今は5階層から10階層のDランク推奨エリアを攻略中である。



 ――コンコンコン



 勇馬の部屋のドアがノックされ勇馬が入室を促すといつものシスター服ではなく室内着姿のセフィリアが「失礼します」と一礼して部屋へと入ってきた。


 頭からかぶっているシスター服のためにいつもは目にすることはないふわふわの桃色の髪が勇馬の目に新鮮に映った。


「セフィリア、どうしたの?」


「ユーマ様、もししばらくこの街にいらっしゃるご予定でしたらパーティーハウスをお借りになってはいかがでしょうか?」


「パーティーハウス?」


 パーティーハウスとは主に冒険者パーティー用の賃貸物件だ。


 冒険者1人1人が宿屋に泊るよりは一軒家をパーティーで借りて住んだ方が割安であったり便利だったりということで長期間その街に留まるパーティーが選ぶ住居である。


「しかし、ダンジョン都市ではあまり流行ってはいないと聞いていますが」


 セフィリアにアイリスが疑義を唱えた。


 アイリスの知識はクレア経由のものだ。


 確かにダンジョン都市ではパーティーハウスを借りる冒険者は少ない。


 その理由は多くのパーティーがダンジョンに潜る際には通常数日から長ければ1か月近くダンジョン内で野営するからである。


 ダンジョンの奥に潜る高ランクの冒険者ほどその傾向は強い。


 つまりダンジョンを出て宿に泊まる日数は1か月の間でもそこまで多くはなく、そのため都度宿屋に泊まる方がパーティーハウスを借りるよりも割安なのだ。


 それに加えてパーティーハウスを借りるのであれば家の維持管理は自分たちでしなければならない。


「他のパーティーではそうでしょうね。しかし、わたくしたちは基本日帰りで毎日宿に戻ってきています。そもそもユーマ様はダンジョンに潜られませんので毎日のこととなります。でしたらパーティーハウスを構えるのも一つかと思いまして」


 勇馬としても今泊まっているこの宿には多少不満があった。


 中ランクの宿という触れ込みで当初利用を始めたものの風呂は共同のもので、しかも小さいし設備も古いものだった。


 その一方で宿の需要と供給とのバランスからか宿泊料はメルミドの宿よりも割高である。


 そして来週からは勇馬はギルドへ行くのは隔日となるため今よりも宿にいる時間が長くなることは容易に想像することができた。


「そうだね。じゃあいい物件があれば検討しよう。時間があるときにちょっと見に行ってみるよ」


 ちょうど来週からは時間が空きそうだということで勇馬はパーティーハウスを見に行くことになった。

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