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【完結】マジックペンで異世界探訪(たんぽう)~ペンは剣よりも強し  作者: 言納智大
第2部 第1章 ダンジョン都市サラヴィ編
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13 代官邸へ

 そして次の日の夕方。


 勇馬は1人で代官邸の門までやってきた。


「さすがにでっかいな」


 ラムダ公国の公都と並ぶ大都市の最高権力者の住まいである。


 門の傍には衛兵の詰所があり門の前では常に歩哨が警備をしている。



「あのっ、すみません」


「んっ、道に迷ったのか? ここは代官様のお屋敷だぞ」


 日本人特有の幼くみられるその顔立ちと勇馬特有の威厳のなさ、そしてお供も連れず服装もザ・平民な勇馬の姿に衛兵はまさか代官の客であるとは思いもしなかった。


「いえ、迷子じゃないです。これをいただいていますので」


 そう言って勇馬は衛兵に代官からの招待状を手渡した。


「こっ、これは代官様からの!」


 衛兵はそう言って表に裏にと招待状をねぶるように見回した。招待状が本物であることを一応確認するには念の入った確認である。


「これは失礼を致しました! 本日お越しのご予定のユーマ様でしたか。ご案内致しますので少々お待ち下さい」


 そう言って衛兵は詰所で待機していた他の衛兵に連絡すると案内役の別の衛兵が直ぐにやってきた。



 門から玄関までは一直線の道が続いている。


 衛兵に先導され道を歩きながら周りを見渡すと道の両側は芝生となっておりそれぞれに噴水が設置されている。噴水を囲むように花壇も整備されていて、季節の花が植えられている。


 しばらく歩いて屋敷の玄関に到着する。


 衛兵が玄関を開けると執事服を身に着けた白髪の男性が立っていた。


「ようこそお越し下さいました、ユーマ様でございますね?」


 そう言って執事の男はゆっくりと勇馬に頭を下げた。


「こちらこそ、本日はお招きいただきましてありがとうございます」


 慌てて勇馬も頭を下げた。


「こちらへどうぞ、あるじがお待ちです」



 赤い絨毯が敷かれた廊下を進み一つの部屋に案内された。


 部屋には1人の男が待っていた。


 歳のころは30代半ばくらいだろうか。整えられた茶色の髪をしており体系は中肉中背よりも若干ぽっちゃり寄りといったところだろうか。「最近ちょっと不摂生だったかな~」とか言っていそうな佇まいである。


「きみがユーマか、私がこのダンジョン都市の代官をしているクライスだ。今日はよく来てくれたね」


「いえ、代官様からのご招待、キョウエツシゴクに存じます」


 ぼろを出さないよう勇馬も細心の注意を払う。


 気を抜くとうっかり素が出てしまいそうになる。


 勇馬はクライスから椅子を勧められ腰を下ろした。


 するといつの間にか部屋に入ってきていた若いメイドが紅茶をテーブルに置いた。メイドは身を屈めてカップを給仕したがメイド服に包まれた豊かな胸が揺れ勇馬は思わず視線を向けてしまった。


「どうぞ。それにしてもきみは若いね。いくつだい?」


「いただきます。年齢は18歳です」


「そうか、もっと若そうに見えるね。しかし18歳としてもその歳で上級付与師とは大したものだ。黒髪に黒目という容姿からこの辺りの出身ではないのだろう?」


「そうですね。ここからずっと、ず~っと遠くにある国の出身です」


「であればきっといろいろな世界を見てきたのだろうな。きみは付与師としてどこか一か所に落ち着くという気はあるのかい?」


「今はいろいろなところを見てみたいというのがあります。勿論ここだという場所があればとは思いますが」


「そうかっ! ところでこの街はどうだい? この周りの国の中ではかなり発展していると思うが気に入ってくれたかな?」


「まだ来たばかりですのでそこは何とも……。ただ、活気のある街だとは思いました。これからしばらくは留まりたいと思いますのでいろいろと見て回りたいと思っています」


 勇馬の言葉にクライスは何度も頷いている。


「ところできみはこの街の特色が何かを知っているかな?」


「勿論ダンジョンですよね? ダンジョン産のアイテムは有名だと聞いています」


「そうだね。ダンジョン産のアイテムを求めて多くの者が集まっている。きみはこの街で開かれているオークションは知っているかな?」


「はい、ギルドマスターに伺いました。ダンジョン産のアイテムがオークションに掛けられているという話ですね」


「でも今やオークションで出品される物の中でダンジョン産のアイテムが占める割合はかなり減っているんだよ。とはいえ全体の3分の2はあるがね」


 オークションで出品されるものは全てがダンジョン産のアイテムだと思っていた勇馬は思わず言葉を詰まらせた。


「今やオークション自体がこの街の商品だね。この人の注目を集めるオークションに出品したいという商人はそれこそ星の数ほどいるよ。このオークションにはこの大陸中が注目するからね」


 クライスは「とはいえやはりメインはダンジョン産アイテムだからね」と付け加えた。


「ご主人様、お食事のご用意ができました」


 話が一区切りついたところで先ほどの胸の大きな若いメイドがクライスに声を掛けた。


「そうか。よし、じゃあ夕食を一緒に食べよう。別の部屋に用意させている」


 クライスはそう言って椅子から立ち上がる。


 クライスが部屋を出ていく後に勇馬も続いた。

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