8 宝箱
結論とすれば特に問題なく倒すことができた。
前衛にはシェーラとセフィリア、後衛にはアイリスとケローネである。
シェーラが剣でセフィリアはフライパンでゴブリンを攻撃する。アイリスとケローネは前衛2人の動きを見ながらタイミングを合わせて魔法を行使した。
「ふむ、やはりパーティーですと楽ですわね」
ゴブリンが残した魔石を拾いながらセフィリアがそう口にした。
「そういえばダンジョンの入口にはあれだけたくさんの冒険者がいたのに近くにはいませんけどどうしてでしょうか?」
「それは他の方たちは深い階層に行っているからでしょう。このダンジョンでは一度行ったことがある階層には転送石というアイテムを使って瞬時に移動することができますのよ。ただし、浅い階層から深い階層へと一方通行ですけれど」
自らの疑問が解消されて「へー」と感心するケローネ。
アイリスはクレアの授業を受けて知識として知っていたがシェーラは知らなかったようだ。
「転送石って高いんですか?」
「ダンジョンの外では何の役にも立ちませんしダンジョンの中でも入手できますのでそこまで高いものではありませんわね」
ケローネはそれを聞いてほっとした表情を浮かべる。レスティの防衛に参加したことによる褒賞とトーマスから勇馬の護衛依頼を受けたことによる依頼料で冒険者になって今が最も懐具合に余裕がある状態だ。
とはいえこれまでかつかつの生活をしていたこともあってか染み付いた節約思考は直ぐに失われるものではない。
「ということは1階層にはそんなに人がいないということなのかな?」
「わたくしたちの様な初めてダンジョンに入るパーティーやメンバーに駆け出しがいるパーティーくらいでしょうね」
パーティーに1人でもその階層を突破していない者がいればパーティー全体で転送石をつかって移動することはできない。
シェーラの疑問にセフィリアが答えながら通路を進んで行く。
ダンジョンの魔物の強さは階層を進むごとに強くなっていく。
大体5階層くらいまでがEランクの、15階層までがDランクのパーティーの適正レベルと言われている。
同じEランク冒険者の適正階層とはいえ1階層と5階層とでは出現する魔物の強さは異なる。
ダンジョンの魔物はダンジョンの外に出ることはないため魔物の討伐のメリットは魔石やドロップアイテムを入手できることに尽きる。そして魔石の質や大きさは基本的には魔物の強さに比例し、それが売却価格も比例する。魔物からときおり得られるドロップアイテムや宝箱の中身も階層が深いほど良い物であると言われていることもあり冒険者たちはとにかく深い階層を目指す。
「とはいえ、競合相手がいないとこういういいこともありますわよ」
ダンジョン経験者であるセフィリアが誘導して向かった先には4人も入れば狭く感じる小部屋があった。その小部屋の中央には青色の宝箱が鎮座していた。
「「宝箱!」」
「これが……」
初めて宝箱を見たセフィリア以外の3人が驚きの声を上げた。
「じゃあ、アイリスさん。宝箱を開けて下さいませ」
「……私でいいんですか?」
アイリスが他の2人の顔に目を向ける。
「ボクたちは護衛だから」
ケローネもシェーラの言葉に頷いた。
「わかりました。それでは開けます」
そう言ってアイリスは目の前の青色の宝箱に手を掛けた。
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